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米ドルの流動性

From矢口新

ドルは世界で一番信頼されている通貨だ。

それは、各国の貿易通貨、準備通貨や
投資家のポートフォリオに占める割合をみれば一目瞭然だと言える。

闇経済の人たちからの信頼も厚そうだ。

しかし、相場にたずさわるものが何人か集まると、
そのなかには必ず、ドル不信任派がいる。

垂れ流し状態の経常赤字と財政赤字、貧富の差の拡大、
マイノリティ問題、治安問題、教育問題、肥大化した奨学金ローン、
都市部での住宅問題、国際政治でのリーダーシップの発揮の仕方・・・・・・。

コロナ危機後の投資バブルを問題視する人もいる。

一方、これまでドルの信認派が米国の強さとして挙げていたのは、
より自由に開放された消費市場、労働市場、金融市場、教育などだった。

すなわち「来る者は拒まず」という懐の深さ、
優秀な人材や「やる気」のある者に与えられるチャンスの大きさなど、
米国が持つ、際だったダイナミズムだった。

トランプ政権とコロナ危機で内向きの政治が続いているが、
米国は、米国民であることを運命として受け入れている人たちの国ではなく、
自ら選び取った人たちの国であると言えるのだ。

とはいえ、ドルが世界中で保有されている理由の第一は、
「世界中で保有されているから」だ。

これはふざけているのではない。
流動性のことを言っている。
ドルが最も便利で安全だと、世界が見なしているのだ。

大手の投資家にとって、
その資金の大きな部分を投資できる通貨は限られている。

米ドル、ユーロ、円に、英ポンドが加わるくらいで、
後の通貨はぐっと劣る。

何が劣るのだろうか? 
流動性なのだ。

「買ってはみたものの売れない」では投資物件としては危険で、失格だ。
大量の売り物でも簡単にさばける流動性が必要なのだ。

流動性は、
資本市場の大きさと開放度の積に相当程度比例すると言える。

その意味でドルの流動性は、
今のところ他の追随を許さない。

ユーロは域内通貨という排他性によって、
世界通貨としての役割を担うには大きな矛盾をはらんでいる。

ユーロが意味する開放度とは域内での開放度であって、
世界中のどの国にも均等に開かれているわけではないのだ。

個人にとっても同様だ。
ドルは世界中で使える。

観光地はもちろん、冷戦下の旧東側諸国でさえ、
ドルは闇で立派に通用していた。

おまけに多くの商品がドル建てで取引されるので、
ドルの購買力は安定している。

しかし、仮にドルがほかの通貨と自由に交換できなくなれば、
ドルの魅力はなくなると言える。

実は、私たちはドルを信じているというよりも、
自由な通貨交換のシステムを信じているのだ。

ドルはそうした流動性の象徴なのだ。

  • コメント ( 2 )

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  1. 株野都怜生

    今回も矢口先生の見識から納得できる可能性が見えてきた。と、勝手に思っている。

    通過の信頼性は、FREEDOM、つまり、開かれた自由な社会に繋がる。
    嘗て、わたくしが、師と仰いだ米国人から、優しさ=強さと言ったことの薫陶を受けた。

    米国は、移民の国である。
    人種の坩堝、でありダイバーシティの国でもある。
    その国のドルが基軸通貨で世界を支えている。
    ドルがデジタル化、つまり”優しさ=強さ”としてのデジタルドルが当たり前の世界がやって来るかだ。
    矢口先生も”優しさ=強さ”の人と感じ、尊敬をしている。
    相場の見識、実績については、超一流の人である。
    このブログを見ている方には、矢口先生の講義と人柄に接することをお勧めしたい。

         FROM 株野都怜生

  2. 株野都怜生

    ワードを間違えました。申し訳ありません。

    誤 通過
    正 通貨

    に訂正させて頂きます。

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