AIバブルは崩壊しつつある?
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これまで世界の株式市場を牽引してきたAI関連銘柄が、
このところ一転して売りを先導するようになってきた。
象徴的なのは、
AI半導体を搭載したデータセンターをAI開発企業やクラウド大手に貸し出す「ネオクラウド」企業、
コアウィーブ株が大幅に売り込まれていることだ。
株価は1年前の4割以下、5月の高値からでも半値以下になっている。
とはいえ、AI向けの計算能力は未だ供給不足なので、
ゴールドマン・サックスなどは急落後のコアウィーブ株の投資判断を「買い」に引き上げた。
一方で、データセンターの建設が一巡する2030年までには、
ネオクラウド企業の8割超が存在できなくなると言われている。
5年以内のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率水準から見るコアウィーブの破綻確率は60%にも達した。
一方、CDSの保証料率が急騰しているのはコアウィーブだけではない。
アルファベット、アマゾン、メタ、エヌビディア、オラクル、スペースX、
ブロードコムのCDSスプレッドは、いずれも過去1年で急上昇した。
アルファベットの5年物CDSスプレッドは2026年7月に過去最高を記録した。
コアウィーブの急成長を支えてきたのは巨額の借金だ。
有利子負債は6月末時点で約356億ドル。
データセンターなどのリース債務を含めると約521億ドルに膨らむ。
債務総額は売上高の6倍を超える。
コアウィーブはエヌビディアやマイクロソフト、
オープンAIなどと巨額の循環投資を行っているので、破綻の影響は大きなものとなる。
米国のAI投資で見込まれる総額は、GDP比で過去最大だった鉄道網を大きく上回っている。
また、AI向けの計算能力は未だ供給不足なので、
関連企業による投資資金の奪い合いが始まっている。
AI関連企業の社債発行額は、
2026年初から10月半ばまでで既に約4200億ドル(155円で65兆円)と、
先進国の国家予算規模に膨れ上がった。
株式発行もAI関連の巨額IPOが相次ぐ。
当初は、オープンAI、アンソロピックの順だと思われていたが、
すべてにスピードを重視するイーロン・マスクのスペースXが6月に抜け駆け的に857億ドルを調達した。
スペースXはロケット打ち上げ、衛星通信の企業だが、AI投資のために巨額の資金を調達した。
しかし、その株価はIPOの初値を下回っている。
先にパイを食べられ、しかも、成功とは呼べないIPOだったために、
オープンAIは来年以降に、アンソロピックもこの11月にIPOを延期した。
他のAI関連企業のIPOも延期が相次ぎ、中には無期限で延期すると発表した企業も出てきた。
これは、どんな金額でも調達できてきた市場環境が変わりつつあることを示唆している。
つまり、「流動性」が枯渇しつつある可能性が出てきたのだ。
投資資金の奪い合いによる流動性枯渇の兆候は借入コストの急騰にも見られている。
過剰流動性はリーマンショック後とコロナ後に各国政府と中央銀行によって供給された。
おかげで、経済は回復、株価や他の資産価格も上昇したが、ハイパーインフレを誘発した。
というより、
通貨の過剰供給によるハイパーインフレが株価や他の資産価格をも押し上げたとするのがより正確だ。
しかし、過剰流動性のコストは、持たざる者の生活を追い詰めただけでなく、
累積財政赤字と公的債務の拡大だった。
その意味では、現在のフランスの高校生たちの暴動の根っこはここにあると言ってもいい。
その結果、世界各国の国債が売られている。
インフレと信用リスクの高まり、打つ手がなくなった経済政策の故だ。
2026年9月に行われた米5年国債入札利回りは5.033%と、
2007年以来初めて5%を突破した。
このことは、リスクフリー金利の上昇が、
AI企業を含むすべての企業の借入コストの上昇にも繋がっていることを意味する。
コアウィーブが2026年8月に実施した順次実行型期限付借入26億ドルのコストは、
当初提示された条件より100~125ベーシスポイント高くなり、
借入コストは約10.4%に押し上げられた。
順次実行型期限付とは償還期限時にローンを一括償還するのではなく、
キャッシュフローがなくても順次、着実に元本返済していかなければならないものだ。
このような借り手不利な条件は「非常に長い間、見られなかったもの」だと言われている。
また、AI以外の企業3社も社債発行を完了するために、
投資家により有利な条件を提示せざるを得なかったとされている。
9月後半には、
ソフトバンクグループが「記録上最大の企業ジャンク債発行」となる111億ドルの起債を完了した。
利回り8.625%の3.5年債と、利回り9.75%の7.5年債だ。
ブルームバーグは「これらの利回りは、
ソフトバンクのドル建て債として過去最高」だと報じている。
AI企業を取り巻く環境は、他の面でも悪化しつつあると言っていい。
例えば、エネルギー価格の上昇だ。
AIは膨大な電力を消費するので、エネルギー価格の上昇はそのまま収益を圧迫する。
また、AIの膨大な電力需要、水資源利用、半導体需要などは、
値上がりというコスト負担を消費者に強いているが、その見返りのほとんどは一部の企業と、
その経営者たちが独占していることで、政治的な反発が強まっている。
そこに加えて、頻発するAIエージェントの暴走や、AIを使った不正アクセス、情報漏洩だ。
この実害は懸念ではなく既に現実だが、
最大の懸念はアンソロピックのIPO目論見書でも触れられたという「人類の滅亡」だ。
リーマンショックやコロナショックは、膨大なコストがかかったとは言え、
政府当局によって一時的には救われたとも言える。
相場に例えれば、常軌を逸したナンピン買いにより、一時的には評価益に転じていた。
そこで、AIバブルが始まった。
AIバブルが崩壊しても、もはや政府当局に余裕はない。
いや、過剰流動性を供給した政府当局自体がAIバブルに巻き込まれている。
AIエージェントの暴走の前に、暴走していたのは人間の方なのだ。
AIバブルは崩壊しつつあるのかどうか? アンソロピックのIPOがその答えをくれるかも知れない。