【2024年7月22日】江守哲のコモディティコメント
こんにちは、江守哲です。
19日の金相場は2%近く下げた。ドル高が響いた。FRBによる9月利下げ観測が拡大し、週内には史上最高値を更新。これを受け、利益確定の売りも出た。ドル指数は他通貨に対して約0.2%上げた。米10年債利回りも上昇した。フェドウォッチによると、市場は現時点でFRBが9月に利下げを 決める確率を98%織り込んでいる。パウエルFRB議長は、最近発表された米インフレ指標を踏まえ、物価上昇のペースが持続的な形で目標の2%に戻りつつあるとの「確信が若干増した」と述べている。
金相場は大幅続落となった。地合いの悪化の可能性が指摘されているようだが、すでに売られすぎのゾーンに入っており、20日線の2369ドルを割り込む可能性は低いといえるだろう。過去最高値を更新した後だけに、利益確定売りが出やすいのは理解できるが、短期的な視点で取引しているのか、あるいは長期的な視点を持っているのかで、目先の金市場への対応は異なるだろう。いまこそ、長期的な視点が必要であることは言うまでもない。金は今後最も値上がりが期待できる資産であろう。
19日のロンドン金属取引所(LME)の銅相場は5日続落し、4月8日以来の安値に沈んだ。中国経済の弱さと景気刺激策の不足に対する懸念が広がった。週間でも5.8%安となり、2022年8月以来の大きさ。金属の最大消費国である中国で今週開かれた重要な政治会合は、4〜6月期のGDP成長率が予想を下回ったにもかかわらず、追加的な景気刺激策について詳細を示すことができなかった。市場は中国に大きな失望感を抱いており、投機筋は少し資金を引き揚げているとの指摘がある。
市場は銅相場の一段安を見込んでおり、10〜12月期の平均価格を1トン=9000ドルと予想している。上海先物取引所で最も取引量の多い銅の8月限は2.1%安の1トン=7万6580元(1万0537.32ドル)と、4月11日以来の安値水準となった。もっとも、市場では、中国からの買いが最近増えているとの指摘も聞かれる。銅相場が高いときに購入を遅らせていたことが背景にあるという。
産銅世界最大手チリ・コデルコのパチェコ会長は18日、2024年の同社の銅生産量は前年実績を上回るとの見通しを示した。24年下半期に生産量の回復が見込まれることが背景という。同社の銅生産量はここ数年減少しており、24年は現在も目標に届いていない。ただし、パチェコ氏は、24年下半期にコデルコにとって有利な要因がいくつかあると説明。保守点検作業の完了や新規事業の開始などを挙げた。
リチウム業界参入に向けた取り組みに関して、パチェコ氏はマリクンガ塩湖の新たな大規模事業における提携企業探しは順調だと話した。具体的な企業名は公表しなかったものの、鉱業分野の世界的大企業も含め、多数の企業が関心を示していると明らかにした。
銅相場は米大統領選の動向や米経済指標の内容に左右される見通しである。現職のバイデン大統領の選挙戦撤退が報じられており、ドル安を志向するトランプ前大統領の優勢ムードが強まれば、銅相場の上昇が期待される。しかし、中国の4〜6月期のGDPが弱かったことや、共産党第20期中央委員会第3回総会(3中総会)で新たな景気刺激策が打ち出されなかったことが嫌気されている。今週は4〜6月期のGDP(25日)や6月の個人消費支出(PCE)物価指数(26日)に注目が集まろう。
景気軟化を示す内容となれば、9月の利下げを織り込む動きが進み、金利やドルの低下を通じて銅相場が支援される可能性がある。中国関連では、住宅ローン金利の基準となる最優遇貸出金利(LPR)が22日に発表されるが、市場では据え置きが予想されている。27日発表の1〜6月の工業部門企業利益は、今後の相場の手掛かり材料となる可能性もある。いずれにしても、これまでの調整で下げすぎた相場が反転するのかを見極めることになる。銅相場は200日線の8962ドルが視野に入っている。
19日の原油相場は2ドル超下げ、6月中旬以来の安値を付けた。パレスチナ自治区ガザで交戦中のイスラエルとイスラム組織ハマスが停戦で合意する可能性に注目が集まった。ドル高も相場を 圧迫した。ブリンケン米国務長官は、イスラエルとハマスの停戦協議の合意が間近に迫っていると述べた。
イスラエルとハマスの紛争を背景に、世界の石油供給が脅かされる中、投資家は取引の際にリスクプレミアムを織り込むようになった。停戦が実現すれば、ハマスに連帯を表明したイエメンの親イラン武装組織フーシ派による紅海での商船攻撃が抑制される可能性が高い。
米エネルギーサービス会社ベーカー・ヒューズの週間データ(19日までの週)によると、国内石油・天然ガス掘削リグ稼働数は前週比2基増の586基となった。6月下旬以来の高水準。増加はこの3週間で2回目。ただし、前年同期を依然として83基(12%)下回っている。石油リグ数は1基減の477基で、2021年12月以来の低水準。ガスリグ数は3基増の103基と、5月中旬以来の高水準だった。
原油相場は大きく値を下げている。急落といえる下げであり、地合いは再び悪化している。20日線の81.97ドル、さらに100日線の80.79ドルを割り込んでおり、これで50日線の79.72ドルも割り込むと地合いのさらなる悪化は不可避となろう。その下にある288日線の78.98ドルも割り込むようだと、相場は完全に崩れることになる。目立った材料もなく、米ガソリン需要期にも需要は盛り上がっておらず、需給面での下支えも見られない。このような状況で反発に向かうのはかなり厳しいといえる。
19日のコーンは続落。約4年ぶりの安値圏での値動きからは若干上向いたものの、米中西部が作物の生育に適した天候に恵まれていることが上値を抑えたという。気象予報によると、米国産コーンの重要な生産段階を通じて、ほぼ理想的な天候に恵まれるとみられている。米宇宙技術会社マクサーは気象日報で、「現在の好ましい天候条件の下、コーンベルト全域でコーンの受粉期が今週と来週にピークを迎えるため、今季のコーンの単収が大幅に減少する可能性は低下している」と指摘した。
国際穀物理事会(IGC)は、2024〜25年度の世界のコーン生産予想を200万トン引き上げ、12億2500万トンとした。アナリストらによると、世界的なシステム障害は、銀行、航空、他の業種に混乱が及んだが、穀物市場にはいまのところ、影響はないという。
大豆は反落。米穀倉地帯中央部での作物の生育に適した天候が背景にあるという。世界最大の大豆輸入国である中国は、供給過剰状態に直面。動物の飼料向け大豆の需要は依然として抑えられている一方で、買い付けは過去最大規模に上っており、在庫が積み上がっている。アナリストらは、米中西部は作物の生育に適した天候に恵まれており、豊作観測が高まっているとしている。
小麦は反発。ショートカバーが支援したほか、複数の世界的な小麦生産地域での天候懸念が相場を下支えした。4カ月ぶりの安値に下落して4年ぶりの安値に近づいた後、ショートポジションをカバーしたとの指摘がある。アナリストによると、米プレーンズ北部の春小麦地帯での暑く乾燥した天候が懸念された。米農務省によると、16日時点で米国の春小麦作付面積の約12%が干ばつ地域に入っており、前週の7%から増加した。
19日のNYココアは反落。北米の第2四半期のカカオ圧砕量が2.2%の増加を示した後、相場は3%以上の上昇から下落に転じた。ブローカーとアナリストは圧砕が横ばいか、または低下する可能性があると予想していた。ヨーロッパの同四半期のカカオ圧砕量は4.1%増加したが、アジアの圧砕量は1.4%減少した。 ディーラーは、ガーナとコートジボワールでのスウォーレンシュート病による問題が依然として相場の重要な支援要因であるとしている。
NY綿花は続落。ドル高のほか、原油や穀物、金融市場全般の軟調な地合いが嫌気された。
NYコーヒーは続落。ディーラーは、最近の上昇を考えると下落は予想外ではないが、相場はブラジル の収穫量が予想を下回っていることに支えられているとしている。
NY砂糖は続落。一時は6月3日以来の安値の18.55セントを付けた。ディーラーは、アジアでの作柄見通しの改善が市場の警戒感につながったとしている。一部のアナリストは今週、インドとタイの高い生産量を見込み、世界生産予測を引き上げた。 しかし、需要は依然として堅調で、最大輸出国であるブラジルの上半期の出荷量は50%増えた。
今週の農産物市場は、米中西部のコーンベルトと大豆生産地の天気に注目が集まる見込み。天候はおおむね良好で、コーンと大豆のいずれも大豊作になるとの見通しが強まっている。秋にかけて上値の重い展開が予想される。7月の米農産物需給報告では、米国産コーン、大豆ともに期末在庫が下方修正され、市場予想も下回った。これは強材料だったが、週を通じて天候要因が重石となり、いずれも下落傾向が続いた。
米国産のコーン、大豆の需要が高まらないことも価格を下押ししている。大豆に関しては、中国はブラジル産を引き続き積極的に購入しているもようであり、これも上値を抑えやすい。一方、小麦は週末にかけて、米国やカナダ、ロシアなどの生産地で暑さや乾燥に対する懸念が高まり、上昇した。ただし、需給報告で期末在庫が米国産、世界ともに上方修正されたことで、価格が圧迫されやすい地合いが続くとみられている。
なお、投資判断はご自身の責任で行ってください。
この記事へのコメントはありません。