【2025年9月16日】江守哲のコモディティコメント
こんにちは、江守哲です。
【貴金属市場の市況解説】
15日の金相場は続伸した。市場は今週のFOMCで0.25%の利下げがほぼ確実と見ている。
利下げは金利を生まない金にとって追い風となり、買いが先行した。
9月のNY州製造業景況指数はマイナス8.7と市場予想を下回り、米経済の減速を示唆した。
これを受け、米10年債利回りが低下し、ドルが軟化したことも、ドル建てで取引される金塊の買いを促した。
トランプ米大統領はパウエルFRB議長に対し、大幅な利下げを行うよう要求するなど、FRBへの政治的圧力が続いている。
市場参加者は、FOMC会合後のパウエルFRB議長の会見内容や、最新の経済・金利見通し「ドット・プロット」に注目している。
フェドウォッチによると、市場は今週の会合で0.25%の利下げが行われる確率を96%、0.5%の利下げを4%と織り込んでいる。
また、米上院は同日、トランプ氏が空席だった理事に指名したミラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長の承認に関する採決を行う予定である。
【貴金属のトレード戦略の考え方】
金相場は過去最高値を更新した。ここにきて、レンジの上抜けの動きがみられている。このまま上昇が続けば、節目の3700ドルを超え、一段高になる可能性が高まりそうである。一方で、いまの上昇がFOMCでの利下げ期待が背景であれば、パウエルFRB議長の発言次第では失望売りで大きく値を下げる可能性もある。すでに短期的には買われすぎになっている点には注意が必要であろう。銀相場も直近高値を更新しているが、同様にFOMC後の手仕舞い売りの圧力には注意しておきたい。
【非鉄市場の市況解説】
15日のロンドン金属取引所(LME)の銅相場は上昇した。
ドル安と、米中間の中国系短編動画投稿アプリ「TikTok」を巡る合意を受けて、投機筋が中国の軟調な経済指標を無視して買いを入れた結果、約1年3カ月ぶりの高値を付けた。
米中両国はTikTokに関する枠組みで合意し、貿易合意も間近との期待が投資家の間で広がった。
今週予定されているFOMCでの利下げ観測からドル指数が下落したことも、ドル建てで取引される銅にとって追い風となった。
こうした買い材料が優勢となり、8月の中国鉱工業生産と小売売上高の伸びが昨年以来の低水準となった経済指標は目立たなかった。
この日の銅相場は一時1万0192.50ドルと、2024年6月4日以来の高値をつけた。上海先物取引所の銅先物も0.4%高の1トン=8万1000元で取引を終えた。
【非鉄金属のトレード戦略の考え方】
銅相場は急伸した。これまで膠着していた水準を上抜け、ダブルトップ懸念が払しょくされた格好である。
また、今年3月の高値も超えており、このまま上昇すると大相場に発展する可能性がある。
そうなると、過去最高値の11104ドルを超える動きに発展する可能性もある。
アルミ相場も高値圏を維持するなど堅調である。非鉄相場全体に堅調さが戻ってきている。
FOMC次第では急落となる可能性もあるが、まずはどこまで上昇できるかを見極めたい。
利益確定も進めていくとよいだろう。
【エネルギー市場の市況解説】
15日のNY原油相場は続伸した。
ロシア当局によると、ウクライナは13日から14日にかけてロシアの石油施設に対し大規模なドローン攻撃を実施した。
これにより、ロシア産石油の供給混乱への警戒感が高まり、原油は週明けも買いが先行した。
さらに、トランプ米大統領は13日、北大西洋条約機構(NATO)加盟国にロシア産原油の購入停止を要求し、ロシアから原油を購入する中国に制裁を課すことを提案した。
米国による新たな対ロシア制裁導入の可能性が高まっていることも、原油相場を支えた。
しかし、16・17日にFOMCを控えて買い控えムードが広がり、相場の上値は重かった。
【エネルギーのトレード戦略の考え方】
原油相場は続伸したものの、20日線の63.44ドルを超えていない。まずはこれを超えるような動きになるかを見極めたい。
特段の材料がなく、米国のインドへの圧力なども続いている。ロシア産原油の行方も気になるところである。
また、OPECプラスの増産余地にも注目しておく必要があろう。
サウジ以外は意外に余剰生産余力がないもようであり、これが潜在的な下支え要因になっている可能性もあろう。
天然ガス相場は反落した。50日線の3.059ドルを超えるかを見極めることになろう。
【農産物市場の市況解説】
15日のシカゴコーンは3日ぶりに反落した。
米国のコーンの記録的な収穫高見通しが再び注目されたことが下落の要因だった。
前週末に米農務省が発表した需給報告では、単収見通しが予想通り下方修正された一方で、収穫面積が上方修正されたため、生産高が168億ブッシェルに引き上げられた。
市場参加者は週明けもこの生産高見通しを消化する動きを見せた。
米国での収穫開始時期となり、季節的要因も相場を圧迫した。
米農務省が15日に発表した堅調な週間輸出検証高(5〜11日)は相場を支えた。
米コーンの輸出量は151万1691トンと、予想レンジを上回った。
シカゴの大豆は3日ぶりに反落した。
収穫時期の季節的な圧迫と、世界最大の大豆購入国である中国からの需要懸念が、相場を2週間ぶりの高値から下落させた要因。
15日に米中両政府が閣僚級貿易協議を終えたが、農産物に関する言及はなかった。
米中貿易摩擦が激化する中、中国は2025〜26年度の米国産大豆の購入を避け、南米産に切り替えている。
ただし、堅調な圧砕高が相場を支えた。
全米油実加工業者協会(NOPA)のデータによると、8月の米大豆圧砕高は1億8981万ブッシェルと、予想レンジを上回った。
また、米農務省が発表した週間輸出検証高(5〜11日)では、米国産大豆が80万4352トンと、予想レンジを上回ったことも相場を下支えした。
シカゴ小麦は続伸した。
輸出関税引き上げ: 最大の輸出国であるロシアが小麦の輸出関税を17日から約3倍に引き上げると発表したことが、相場を押し上げた。
これまで小麦を空売りしていた投資家が、損失回避のために買い戻す動きも価格上昇を支えた。
一方で、大手農業コンサルタントによると、先週のロシア産小麦の輸出価格は、ルーブル安を受けて下落した。
【農産物市場のトレード戦略の考え方】
コーンは反落した。これにより100日線の427セントを割り込んでいる。買われすぎの調整が入るようだと、20日線の415セントや50日線の413セントを維持できるかを意識する必要があろう。大豆も反落した。引けでは20日線の1040セントは維持しているが、上昇が続かないようだと調整が入る可能性があろう。小麦は続伸し、徐々に上向き加減になっている。まずは20日線の525セントを明確に超え、さらに50日線の540セントを試す動きになるかを引き続き見極めたいところである。
取引については、十分にリスクを考慮の上、検討してください。
なお、投資判断はご自身の責任で行ってください。

この記事へのコメントはありません。