【2024年8月5日】江守哲のコモディティコメント
おはようございます、江守哲です。
2日の金相場は小幅下落。この日発表された7月の米雇用統計が予想を下回る低調な内容だったことで米利下げ観測が拡大し、一時は1%超上げたものの、その後は利益確定売りが広がった。中東情勢の緊張やFRBによる利下げ観測拡大を背景に、安全資産とされる金の需要が高まり、今週は週間で1.8%上昇した。
7月の米雇用統計は、非農業部門就業者数の伸びが市場予想を下回り、失業率は4.3%に悪化した。これを受け、米10年債利回りは2023年12月以来の低水準に低下し、ドル指数は今年3月以来の低水準に下落した。これらを受けて、金利を生まない資産である金の投資妙味が強まる可能性がある。さらに、中東情勢の悪化や世界的な株安を背景に投資家らのリスク回避姿勢も根強く、安全資産としての金を引き続き買う市場参加者も多いとみられている。
金相場はわずかに下げたものの、高値圏は維持している。目先は買われすぎになっていることもあり、調整する可能性もある。ただし、ドル安基調がより鮮明になれば、金相場の下値は限られるだろう。また、市場全体がリスクオフになっていることも金買いを促す可能性がある。いずれにしても、ドル安基調は金相場の最大の押し上げ要因になる。これは特に長期的なテーマであり、金相場が今後大きく上げていくうえでの最大の材料になる。この点を正しく理解することが肝要である。
2日のロンドン金属取引所(LME)の銅相場は上昇した。米利下げ観測の強まり や中国の現物需要がやや堅調に推移していることが支援材料となった。2日発表の米雇用統計は市場予想を下回り、FRBが9月に0.5%の大幅利下げによって緩和政策に踏み切るとの見方を強めた。最大の金属消費国である中国の足元の製造業指標は低調だが、同国で現物を買う動きが再開した形跡がある。中国の銅輸入需要を反映する銅プレミアムは今週、3カ月超ぶりの高水準となった。
銅相場は5月に付けた1万1000ドル超の史上最高値から18%も下げたため、川下の消費者は割安感に注目しているという。一方で、弱いマクロ指標を踏まると、それほど強い需要ではないとの見方もある。上海先物取引所の引き渡 し可能な銅在庫は2日に2%減ったが、在庫水準は依然として過去4年間のピークに近い状態にある。市場参加者は、季節的に消費が旺盛になる9月から中国の 需要が回復すると見込んでいる。
中国当局は2日、アルミ生産に使用するエネルギーに占める再生可能エネルギーの比率について、目標水準を設定したと発表した。 声明によると、国内最大のアルミ生産地である山東省は21%、内モンゴル自治区は29%、雲南省は70%に設定された。
銅相場は米利下げ観測の強まりを受けたドル安が支援材料となる可能性がある。足元で軟調な米経済指標が相次いでおり、 新たに景気の弱さを示す手掛かりが出れば、ドルを売る動きが加速する可能性がある。また、中国の追加景気刺激策への期待に加え、FRBの利下げ観測などもあり、下値は限られる可能性がある。しかし、中国の需要低迷は引き続き相場の重石となっており、上海先物取引所の銅在庫は約4年ぶりの高水準にとどまっている。目先は慎重に見ていくしかないだろう。
(4.72%)安。7月の米雇用統計における雇用情勢の鈍化を受け、景気減速への懸念が再燃。原油の売り圧力に拍車が掛かり、一時72ドル台に下落した。
中国の景気回復の遅れや世界的な景気先行きに対する懸念も引き続き、エネルギー消費減退の警戒感による売りを後押しした。中国国家統計局や中国メディア財新とS&Pグローバルが週内に発表した7月の製造業購買担当者景況指数(PMI)がいずれも前月から悪化したことが尾を引いた。
一方、中東地域の地政学リスクを背景とした過度な供給懸念は後退。パレスチナのイスラム組織ハマスの最高指導者ハニヤ氏が、訪問先のイランでイスラエルの関与が濃厚な攻撃で殺害された事件を巡り、イランは報復の意向を宣言した。イランとイスラエルの対立激化が、産油国が集中する中東地域の軍事的緊張を一段と高めるとの懸念が広がったが、いまのところ供給混乱は生じていない。
米石油サービス会社ベーカー・ヒューズが2日公表した同日までの1週間の国内石油の掘削リグ稼働数は、前週と変わらず482基だった。天然ガスは3基減の98基。
OPECの原油生産に関する調査によると、7月は日量2670万バレルと、前月に比べ10万バレル増加した。サウジアラビアの産油量回復に加え、その他産油国の小幅増産が響き、OPECプラスの自主減産努力が帳消しとなった。7月のサウジの産油量は前月比7万バレル増と加盟国の中で最も増加し、900万バレルだった。輸出が前月から回復した。一方、ナイジェリアは前月比3万バレル減と加盟国の中で最も落ち込み、152万バレルにとどまった。
協調減産から除外されているリビアとイランはいずれも前月比2万バレル増加。イランはここ数年、米国の制裁下にあるものの、産油量は日量322万バレルと、2018年以来の高水準となった。イラクは2万バレル増の同417万バレルだった。 OPECプラスの協調減産に参加している9カ国の産油量は、目標を約24万3000バレル上回った。超過分の大半はイラクによるものとみられる。
2日の天然ガス相場はほぼ横ばい。 液化天然ガス(LNG)輸出プラントへのガス流入量の増加や今後数日間は記録的な猛暑になるとの予報に支えられたが、生産量の増加に加え、需要低下につながる可能性のある 米フロリダ州近くでの嵐や過剰在庫に圧迫された。
原油相場は大幅安である。戻りを試すきっかけが見当たらない。ドル安基調もあまり材料になっていないようである。こうなると、目先は底値を確認する展開にならざるを得ない。まずは5月安値の72.48ドルを維持できるかを見極めることになろう。いずれにしても、中東情勢の悪化以外に目立った買い材料がない。OPECプラスの枠組みにも限界が生じている。産油国は徐々に生産量を増やしており、生産枠が形骸化し始めている点も気がかりである。少なくとも値ごろで買ってはいけない。
コーンは4日ぶりに反発。週間では約1.65%下落した。この日は米景気減速の兆しを受けて、市場参加者は大量のショートの買い戻しを急いだ。この日は激しい値動きとなった。米コーンベルトの一部地域では、雨がちで気温が低下するとの天候予報を背景に、供給見通しが改善しているとの見方を示した。一方で、ある気象予報機関が米中西部の一部の降雨予報を更新したため、一部地域が時宜にかなった降水量に恵まれるかどうか疑問が持ち上がっているという。
大豆は反発。週間では2.03%近く下落 した。前日は2020年9月以来の安値水準を付けていた。 世界的に潤沢な供給や作物の生育に適した米国の天候が依然として大豆相場の重石となっている。米農務省は、2024〜25年度(新穀)の米国産大豆20万2000トンが中国向け に売却されたことを確認した。中国向けの売却はこれで2日連続。
小麦は3日続伸。欧州と中国の悪天候が生産に与える影響が材料視されたほか、米景気減速の兆候を踏まえ市場参加者からショートカバーが入った。アルゼンチンの小麦産地で雨が降ると予測されていることが相場を幾分圧迫した。ただし、暑い日が続いた今週前半に収穫が進展していたフランスで、暴風雨が収穫を一時休止させる可能性があるとの報道がこの日の相場を支えた。
農業調査機関フランスアグリメールは2日、仏農家は7月29日時点で67%の軟質小麦を収穫したと発表。前週は41%だった。一方、降雨に伴い農作業が中断した影響で、例年のペースを大きく下回っている。
NYココアは3日続落。週間では6.4%安だった。西アフリカにおける2024〜25年度のメインクロップの見通 し改善が引き続き弱材料になっているもよう。
NY綿花は反発。米雇用統計が予想を下回る低調な内容だったことを受けたドル安に支えら れた。
NYコーヒーは3日ぶりに反発。ブラジルからの供給増に圧迫されており、ベトナムからの 出荷減を相殺しているもよう。ブラジル・レアルの軟化がコーヒー豆の販売を拡大させているとの指摘もある。2日のレアル相場は、財政懸念を背景に3年半ぶりの安値を付けた。コンサルティング会社サフラス・アンド・メルカドによると、ブラジルの202 4〜25年度産コーヒー豆収穫量は想定の87%に達した。
NY砂糖は3日続落。週間では1.7%下落した。市場はインドでの通常より強いモンスーンの降雨が生産量を増やし、在庫増につながる可能性を引き続き注視している。一方で、インドは製糖業者から圧力を受けているものの、輸出を容認する兆候はまだ見られないと指摘した。
今週のコーン・大豆相場は、好天を背景に上値の重い展開が続く見通し。作柄が良好なことも相まって大豆の売りが膨らみ、7月末には一時約4年ぶりの安値水準を付けた。コーンも安値で 推移した。8月は大豆の生育状況を左右する重要な時期とされる。今月中旬には主産地である中西部が低温で降水量が多くなるとの指摘もある。土壌水分量も生育に適した状態が保たれていることや、米国産大豆の需要が中国で減退している ことも相場の弱材料となりやすい。
米農務省が7月29日に発表した週間クロップ・プログレス報告によると、同28日時点で作柄の「優+良」の割合は、大豆が67%、コーンが68%と、いずれも前年同期と比べて10ポイント以上高い。良好な作柄も相場の圧迫要因となった。コーンについても好天に伴う豊作見通しから需給の緩みが意識され、1日には20年11月以来の安値水準を付けた。相場浮上の決め手となる材料は見当たらない状況にある。
一方、穀物はドル建てで取引されているため、米景気の減速懸念に絡んだドル高の是正は輸出にプラスとなる。小麦は、フランスでの天候悪化に伴う収穫高の低迷が相場の支援 材料となる展開が続く見込みである。いずれにしても、コーン・大豆・小麦はこれまでの売られ過ぎの反動で、まずはどこまで戻せるかを確認することになろう。
なお、投資判断はご自身の責任で行ってください。
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