【2024年8月21日】江守哲のコモディティコメント
こんにちは、江守哲です。
20日の金相場は、ドル安基調や米利下げ観測を背景に続伸し、過去最高値を更新した。為替市場では、米長期金利の低下を受けてドルが対ユーロで一段と下落。ドル建てで取引される金の割安感が意識され、買いが後押しされた。FRBが9月のFOMCで利下げに 踏み切ることがほぼ確実視されており、利子の付かない資産である金の買い地合いを引き続き支援している。
市場では今後の金融政策の手掛かりを得ようと、21日公表のFO MC議事要旨(7月30・31日開催分)や、23日の年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエルFRB議長の講演内容を見極めたいとの思惑が強まっている。市場関係者の間からは、地政学的な不確実要因や投資熱の高まりに加え、金上場投資信 託(ETF)への資金流入などが金相場の上昇基調に拍車を掛けると予測する声も聞かれた。
金相場は再び高値を更新した。数ある資産の中で、現時点で過去最高値を更新している銘柄は金ぐらいしかない。金相場がすでにこれまでとは違う展開になっていることは言うまでもないだろう。この動きが将来の通貨崩壊を意味しているとすれば、きわめて重要な歴史的転換点を迎えているともいえる。値動き自体も下値が切り上がる展開にあり、見事な上昇パターンのチャート形状である。すごいことになってきたと言わざるを得ない。銀相場もこの動きについていくのか注目している。
20日のロンドン金属取引所(LME)のアルミ相場は上昇した。主要生産国である中国でのアルミナ不足とドル安がファンド筋の買いを誘い、5週間ぶりの高値を付けた。一時2506ドルまで上昇し、先月11日以来の高値を付けた。中国のアルミナ先物は20日、ほぼ3カ月ぶりの高値を記録。需要の高まりと限られた供給がアルミの主要原料であるアルミナの上昇を支えた。また、上海先物 取引所の指定倉庫のアルミナ在庫が過去3週間で30%減少したことも響いた。銅相場は下落した。
銅相場は反落した。伸びきれなかったのは、まだファンダメンタルズ面が強くないからなのだろう。すでに買われすぎの水準にあることも、上値を抑えた可能性がある。一方でアルミ相場は急伸し、一時100日線の2492ドルを超える場面もあった。急伸相場はまだ続いているといえる。また亜鉛も一時100日線と50日線を超えたが、引けでは下回っている。鉛は上昇しており、まだ上昇余地がある。日々の値動きを見ると不安定だが、いずれ明確な方向性が出てくるだろう。
20日の原油相場は、中国のエネルギー需要減退懸念が根強く、3日続落した。中東歴訪中のブリンケン米国務長官は19日、イスラエルのネタニヤフ首相と会談。米国が先に提示したパレスチナ自治区ガザ停戦への「橋渡し案」への支持が得られたことを明らかにした。ただし、イスラム組織ハマスは米国案に懐疑的とされ、週内にエジプトで再開予定の交渉がまとまるかどうかは依然として不透明な情勢。こうした中、買いが優勢となる場面があったものの、取引時間の大半を軟調に推移した。
需要面については、中国経済に回復の兆しがみられないことが投資家心理を圧迫。7月の同国経済指標は、鉱工業生産の伸びが3カ月連続で鈍化したほか、住宅不況や投資縮小 が続いていることを示したが、中国人民銀行はこの日、追加の景気支援策を 見送った。一方、米国内の原油在庫は7月以降、減少傾向にある。16日までの週に原油在庫は270万バレル減、 ガソリンなど石油製品も取り崩しが見込まれている。
中国の7月のロシアからの原油輸入は746万トン(日量176万バレル)と、前年同月比7.4%減少した。国内の燃料需要低迷で原油輸入が全般的に減少した。7月は日量190万バレル、6月は同205万バレルだった。精製マージンの低下と燃料需要の低迷により国営および独立系製油所の操業が抑制されたため、総輸入量は2022年9月以来の低水準となった。2位のサウジアラビアからの輸入は641万トン(日量151万バレル)で、前年比13%増加した。
制裁対象となっているイランとベネズエラ産原油の主要中継地点であるマレーシアが3位で、輸入量は61%増の621万トン(日量146万バレル)に急増した。米国からの輸入は53%増の104万トン(日量24万バレル)だった。1~7月はサウジからの輸入が4679万トン(日量160万バレル)と、前年同期比10%減少した。一方、ロシアからの輸入は6258万トン(日量214万)で、前年比3%増加した。マレーシアからの輸入は21%増の3568万トンとなった。
原油相場は下げている。売られすぎになっていることもあり、下げ幅は小さいといえるが、ファンダメンタルズ面をみると強気にはなりづらい状況は変わっていない。本日発表の米石油在庫統計で強気な結果が出てくれば地合いの好転も想定されるが、最近はその内容を市場がミスリードしているケースが散見される。繰り返すように、世界的な石油需給は緩んでいる。OPECプラスの減産継続も怪しくなってきている。石油需給がさらに緩む可能性の方が高いことは理解しておくべきだろう。
20日のコーンは反落。プロファーマー主催の米中西部でのクロップツアーで強めの結果が示され始めたことが圧迫要因となった。ただし、中西部の一部地域での乾燥した天候が下値を支えた。クロップツアーに参加したスカウトらは19日、サウスダコタ州、オハイオ州の産地では単収が予想平均を上回るとの見方を示した。ツアーは20日にインディアナ州とネブラスカ州に向かう。米国産コーンが生育期の最終段階に差し掛かる中、市場は米産地の乾燥天候がもたらす影響を注視している。
米農務省によると、18日時点の米コーンの作柄は「優+良」の割合が67%と、前週から横ばいとなり、市場予想と一致した。 アルゼンチンのブエノスアイレス穀物取引所は20日、2024〜25年度の同国のコーン収穫面積が前年度比17%減の630万ヘクタールになるとの見通しを示した。
大豆は横ばい。ドルの下落や輸出需要の増加を背景に下値が支えられた。市場は米中西部で行われているプロファーマー主催のクロップツアーの分析結果を注視している。中国の7月の米国からの大豆輸入量は前年同月比で3倍となった。米農務省は20日、民間業者が2024〜25年度(新穀)渡しの米大豆13万2000トンを中国向けに、23万9492トンをメキシコ向けに売却したことを確認した。
米農務省が発表した18日時点の米大豆作柄は、「優+良」の割合が68%で、8月半ばとしては過去最高水準だった前週と変わらずだった。
小麦は反発。ドルが下落し、国際市場での米国産小麦の競争力が高まった。ただし、米農務省が発表した週間作柄報告が強い内容で、相場を圧迫した。18日時点で96%の冬小麦が収穫を終えた。春小麦は31%だった。週間作柄報告では、春小麦の「優+良」が73%と評価された。ドルはこの日、1月以来の安値水準に下落した。市場は21日に予定される米雇用統計の年次改定や、週内に開かれるジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演に注目している。
NYココアは3日続伸。10月から始まる予定のメインクロップを控え、市場では 西アフリカの天候に引き続き関心が集まっている。コートジボワールの大半の主要産地では先週、例年を上回る雨が降り生育が進んだ。ただし、気温の低下を懸念する声が一部で上がっている。
NYコーヒーは上昇。ブラジルで乾燥した天気が続けば、樹木に負荷をかけ、2025〜26年度産の開花に悪影響を及ぼしかねないとの懸念に支えられた。
NY砂糖は下落。2022年10月以来の安値水準を付けた。中国の需要低迷懸念や最近の軟調な石油相場が下押し圧力になっている。ブラジルで収穫作業が加速する中、乾燥した天候は同国での生産量を増加させる一方、収穫の終盤にはリスクになるとの見方を示した。
コーンはようやく反発した。ここから値を戻せるか、じっくりと見極めたい。クロップツアーの結果に市場は敏感に反応しそうである。大豆も同様である。ようやく底打ちの可能性が出てきた。ここから戻すための材料が出てくれば、売られすぎであることから、意外に容易に値を戻すかもしれない。小麦は方向感のない動きが続いている。売られすぎのゾーンにはいりつつあるが、値を戻すには材料不足であろう。まずは20日線の535セントを超えられるかを見極めたいところである。
なお、投資判断はご自身の責任で行ってください。
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