【2024年11月1日】江守哲のコモディティコメント
こんにちは、江守哲です。
31日の金相場は、月末を迎えて利益確定の売りなどが台頭し、6日ぶりに反落した。月間では3.38%高。投開票が11月5日に迫った米大統領選の行方への不透明感や中東情勢を巡る警戒感を背景に、金相場は前日に過去最高値を更新。この日は月末要因からポジション調整の売りが出たほか、前日まで連日で最高値を更新した反動から利益確定の売りも出やすかった。
9月の米個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比2.1%上昇と、伸びは3年7カ月ぶりの低水準となり、インフレ圧力の鈍化傾向が改めて示された。FRBが11月6・7日のFOMCで少なくとも0.25%の利下げに動くとの観測が広がる中、市場では11月1日に発表される米雇用統計 の内容が注目されている。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は30日付の四半期報告で、今年7〜9月期の世界金需要(OTC=相対取引を除く)は1176.5トンと、前年同期の水準を維持したと明らかにした。宝飾品の消費が落ち込んだが、金への投資が拡大した。来週の米大統領選投開票を巡る不透明感や低金利、地政学リスクなどを背景に、金の現物価格は年初来で34%高と、1979年以来の高上昇率に向かっている。
7〜9月期の金の宝飾品消費は、主要な輸入市場であるインドの需要が伸びたものの、全体では前年同期比12%減。また、世界各国の中央銀行の金購入は2022〜23年は堅調だったが、今年7〜9月期は49%減少した。
さて、金相場は久しぶりに大きく調整した。株価が下げたことで、投資家が株式の売却と同時に利益が出ている金を売っている可能性がある。とはいえ、金に対する根本的な見方は変わらない。いまの金市場を近視眼的に見ていると完全に間違うだろう。いまは歴史的な転換点にあり、その中で金は最も重要な資産になっていることを理解しておく必要がある。米金利の上昇の理由が米財政悪化であることを考えれば、米ドルの価値の低下が今後も金相場を押し上げることになりそうである。
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31日のロンドン金属取引所(LME)の銅相場は下落した。金属消費大国の中国で製造業指数は上昇したが、追加の景気刺激策に対する不透明感が相殺した。投資家は、来週の米大統領選の結果に気をもんでいる。中国国家統計局によると、同国の10月の製造業活動は6カ月ぶりに拡大。景気刺激策が低迷する経済の回復に寄与していることが示された。中国の大半の輸出志向型中小企業を対象とする財新の製造業購買担当者景況指数(PMI)は1日に発表される。
9月下旬、米国の利下げと一連の中国景気刺激策の発表を受け、銅価格は1トン当たり1万ドル超に急騰。ただし、景気刺激策の規模と詳細の説明が不足したことで市場参加者を失望させ、価格は落ち込んだ。
さて、銅相場は引き続き膠着状態である。この日もかろうじて50日線の9511ドルを維持するなど、下値は堅いように見える。しかし、上昇する材料がなく、市場参加者も対応に苦慮しているように見える。こうなると、市場の関心は中国政府の経済政策に向かざるを得ない。その内容が市場の期待を下回る内容になれば、非鉄相場全体に失望売りが出る可能性は十分にある。材料が見当たらないだけに、ドルの動きや株式市場など外部要因の変動には注意が必要であろう。
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31日の原油相場は、イランが数日中にイスラエルを攻撃するための準備をしているとの報をきっかけに買いが集まり、続伸した。米ネットメディア「アクシオス」は31日、イスラエルの情報当局が、イランはおそらく米大統領選前となる今後数日以内にも、イラク領からイスラエルを攻撃する準備を進めていると示唆したと報道。中東の地政学的緊張が高まり、買いが優勢となった。
米エネルギー情報局(EIA)が前日公表した週報によると、25日までの週の米原油在庫は市場予想に反する取り崩しとなった。また、米メディアは、OPEC加盟国とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」が12月に実施予定だった自主減産の縮小を延期する可能性があると報道。需給引き締まり観測が台頭したことも、相場を支援した。
一方、11月5日投開票の米大統領選まで1週間を切る中、市場関係者らは新政権が打ち出すエネルギー政策に関心を寄せている。ただし、選挙戦は終盤まで接戦が伝えられており、見通しの不透明感も強地合いを支えた。
31日のNY天然ガス相場は続落。在庫が例 年を上回る水準になるとの見通しや、11月中旬まで穏やかな天候が続くとの予報が嫌気 され、5%近く下げた。月間では約7%下落した。 穏やかな天候を受けて暖房需要は例年同時期より抑えられる公算が大きく、電力会社は少なくとも今後数週間は、通常よりも多くのガスを貯蔵する余裕ができるとみられる。米エネルギー情報局(EIA)によると、25日までの1週間で、米天然ガス在庫は前 州比780億立方フィート増加した。
さて、原油相場は中東情勢の不透明感で再び買われているようである。しかし、何度も繰り返すように、それが本質的な材料ではないことは明らかである。そのような材料に振り回されるのは意味がない。原油生産・供給に障害が発生する事態になれば別だが、そうでなければ懸念しても仕方がない。しかし、市場参加者がそこまで賢明かは別問題である。市場は動くのであれば、それを無視して対処することは危険である。材料も重要だが、最終的にはトレンド重視して対処すべきであろう。
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31日のコーンは、米国産コーンの国際市場での堅調な需要が確認されたものの、収穫期に伴う農家の売り圧力に押され、続落した。米農務省が31日発表した週間輸出成約高(18〜24日)によると、米コーンの今年度の純成約高は234万1700トンと、予想レンジ(1 80万〜350万トン)内だった。
米中西部での最近の降雨により、農家はほぼ休みなしに進めていた収穫作業を一時中断。 農家にとっては、抱えていた収穫済みの作物を売却する好機となった。秋季の乾燥天候を背景に、過去最大に近い水準の米コーンの収穫が急ピッチで進展している。米農務省が公表した統計では、27日時点でのコーンの収穫進捗率は81%だった。
大豆は国際市場における米国産大豆の強い需要や大豆油高を背景に続伸した。米農務省が31日発表した週間輸出成約高(18〜24日)によると、米国産大豆の今年度の純成約高は227万3300トンと、予想レンジ(160万〜280万トン)内だった。 一方、世界最大の大豆供給国ブラジルの産地で天候が回復したことが、相場の上値を抑えた。
小麦は3日ぶりに反落。干ばつ被害が出ている米プレーンズでの 降雨が相場の圧迫材料になった。米週間干ばつモニターによれば、干ばつの影響を受けている米国産冬小麦の割合は62%と、前週(58%)から上昇した。米農務省が発表した24日までの週間輸出成約高は41万1400トン。市場予想(30万〜60万トン)の範囲内だった。市場はアルジェリアの国営穀物機関による国際入札の結果に注目。結果を通じ、ロシアが小麦輸出に最低価格を導入した影響が一層明らかになる可能性がある。
さて、コーンは下げたものの、50日線の411セント水準で下げ止まっている。すでに売られすぎになっており、この水準を維持できれば反発に転じる可能性は十分にあろう。大豆は続伸している。底打ちの兆しがみられる。すでに売られすぎになっており、そこからの反発の動きになれば上昇余地が大きいだけに、20日線と50日線が位置する1007セントまで上昇する可能性が出てこよう。小麦は反落した。方向感がないだけに、次の動きを見極めることになりそうである。
なお、投資判断はご自身の責任で行ってください。
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