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【2025年7月28日】江守哲のコモディティコメント

こんにちは、江守哲です。

25日の金相場は3日続落。米貿易交渉の進展に楽観的な見方が広がり、安全資産に対する需要が後退した。この週は日本との通商合意をきっかけに、米国と貿易相手国との交渉進展期待が拡大した。トランプ米大統領はこの日朝、記者団に対し、欧州連合(EU)との合意の可能性は「五分五分」としたほか、新たな関税率の発動期限とした8月1日までに大半のディール(取引)がまとまると自信を示した。

週末から来週にかけて、EUと中国との協議も予定される中、市場の楽観ムードに押される形で金は追随売りにじり安となった。また、トランプ氏は前日、FRB本部の改修工事現場を視察し、パウエル議長に改めて利下げを要求した。しかし、同氏を解任する「必要はない」と明言したことで、ドルが対主要通貨で上昇した。これも金の割高感につながった。

足元では、財価格上昇の兆しが表れる一方、雇用情勢の底堅さを示す統計が発表されており、FRBは翌週のFOMCで早期利下げに慎重な姿勢を維持するとみられている。

【貴金属のトレード戦略の考え方】
金相場は続落し、重要なサポートである20日線の3346ドル、50日線の3342ドルを割り込んでいる。このまま調整基調が続くかは不明だが、トランプ大統領がドル安を志向していることを明言したことは、米ドルの終わりをより明確化することになりそうである。まずは下値を固めるかを注視しておく。銀相場は大きく値を下げている。20日線の37.72ドルで下げ止まるかを見極めることになりそうである。プラチナ相場も続落だが、同様に20日線の1395ドルを維持できるかを注視しておく。

【非鉄市場の市況解説】
25日のロンドン金属取引所(LME)の銅相場は下落した。ドル高が進行したほか、米国による銅関税や他国との貿易協定の行方が翌週に明らかになる可能性を控え、現物買いの動きが一服した。COMEX銅先物は、24日に1ポンド=5.959ドルの史上最高値を更新した後、直近では0.9%安の5.752ドルで取引された。LME銅に比べ30%のプレミアムを付けた。

市場が8月1日の発動日と、関税が適用される銅製品一覧の確定を待っているため、プレミアムはトランプ米大統領が計画する50%の輸入関税を下回っている。

【非鉄金属のトレード戦略の考え方】
ロンドン金属取引所(LME)の銅相場は、8月1日に迫る米国による銅関税発動日を控え、現物需要が一服しており、上値の重い展開となるとみられている。米国は欧州連合(EU)と合意したが、中国との貿易交渉の結果次第では買い材料になるとみられている。今週は中国が産業の成長安定化策を打ち出したことや、日米貿易合意を背景にリスク選好度が高まり、銅価格は上昇した。しかし、米国の銅輸入関税が導入される8月1日が迫る中で上昇の勢いは鈍化し、調整局面に入った。

今週の注目指標では、30日に4〜6月期の米GDP速報値が発表される。31日には中国当局による7月の製造業購買担当者景況指数(PMI)や、6月の米個人消費支出(PCE)物価指数が発表される。8月1日には7月の米雇用統計が控えている。これらの材料も銅相場に影響を与える可能性がある。先週末の銅相場は続落し、基調が崩れ始めている。20日線の9792ドルを維持できるか、また50日線の9702ドルも意識されそうである。アルミ相場は反落しており、20日線の2607ドルを注視しておく。

【エネルギー市場の市況解説】
25日のNY原油相場は反落した。米欧の貿易協議進展への期待が広がる中、需給緩和懸念が圧迫要因となった。6月末以来、約3週間ぶりの安値水準をつけた。

6月の耐久財受注額は前月比9.3%減と、市場予想の10.8%減をやや上回った。しかし、設備投資の先行指標となる非国防資本財受注(航空機を除く)は0.7%減と、市場予想(0.2%増)に反する落ち込みとなった。中国財政省が同日発表した1〜6月期の歳入は前年同期比0.3%減となり、減少率は1〜5月と同水準だった。エネルギー消費大国である米中の低調な経済指標を受けて需給緩和懸念が広がる中、原油売りが先行した。

南米ベネズエラ産石油の供給を巡る思惑も依然として相場の重石となっている。複数のメディアは前日、トランプ米政権が米石油大手シェブロンによるベネズエラでの操業を再び許可する方向で検討していると報じた。この報道を受け、市場関係者の間からは、ベネズエラで石油生産が再開されれば、同国産石油の供給が日量20万バレル増加するとの観測も浮上している。

ただし、相場は65ドル割れ目前で下げ止まり、その後は売り買いが交錯した。8月1日の米関税措置の猶予期限を控え、米国と欧州連合(EU)との関税協議が進展するとの期待が投資家心理を支援した。EUのフォンデアライエン欧州委員長は25日、Xへの投稿で、貿易問題を巡り、トランプ大統領と27日に英スコットランドで会談することで合意したと明らかにした。

石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどで構成するOPECプラスは、28日に開催する閣僚級会合で、有志8カ国による増産方針を継続することを確認する見通しだ。OPECプラスの関係者が明らかにした。OPECプラスは既に合意している現行の協調減産の枠組みを2026年末まで継続する予定だ。しかし、協調減産とは別に自主減産を実施しているサウジアラビアやロシアなどの8カ国は、段階的に減産を縮小している。

関係者4人は、週明けの会合でこの方針が変更される可能性は低いと語った。OPECとサウジアラビア政府からのコメントは得られていない。

ロシア西部の港からの8月の石油輸出量は、日量約177万バレルと、7月時点で予定していた日量193万バレルを下回る見通しとなった。これは、製油所の稼働増が見込まれることが背景にある。プリモルスク、ノボロシースク、ウスチルガの各港から8月に出荷されるロシア産ウラル原油、シベリアン・ライト、カザフスタン産KEBCOを含む石油は、7月に比べ約8%少なくなる見込み。

ロシアで稼働停止中の原油処理能力は、8月は約374万トンと、7月の約400万トンから減る見込みである。これらのデータは暫定的なもので、月末以降に更新される予定。

欧州連合(EU)は先週、ウクライナ戦争を巡る第18弾となる対ロ制裁に合意し、ロシア産原油の価格上限見直しも盛り込んだ。しかし、価格上限の執行主体が不明確な中、ロシアは今のところ前回の価格上限を上回って大半の原油を販売できている。

NY天然ガス相場は堅調に推移した。翌週の記録的な猛暑予報により、エアコン需要に対応するため大量のガスが必要になるとの見方が強まった。しかし、記録的水準のガス生産量や液化天然ガス(LNG)輸出プラントへの供給の遅れから、上値追いの動きは限られた。先週は8%上昇したものの、この週は約13%下落している。

気象学者は米国北部48州の気温を予報しており、各州は少なくとも平年よりも暑い状態が続くと見ている。一方、生産量は記録的水準となっており、ガス会社が通常より多くのガスを在庫に貯蔵できている。アナリスト筋は、ガス貯蔵量はこの時期としては通常の水準を約6%上回っており、今後も増加を続けると予想している。

欧州連合(EU)欧州議会は、ロシア産天然ガスの輸入禁止を1年前倒しし、2027年1月にすることを検討している。欧州委員会が先月示した案では、輸入を2026年1月から段階的に縮小し、2028年1月までに全面的に禁じる内容だった。しかし、欧州議会の主要議員は、全面的な禁輸の期限を2027年1月1日に前倒しする修正案をまとめた。

禁輸案は最終的に欧州議会とEU加盟国の特定多数決で可決する必要がある。このため、依然ロシアからガスを輸入しているハンガリーとスロバキアが単独で禁輸案を阻止することはできない。

【エネルギーのトレード戦略の考え方】
原油相場は反落した。この日も20日線の66.72ドルで打たれており、上値が重いといえる。かろうじて100日線の65.08ドルではサポートされており、節目の65ドルが意識されているといえそうである。65ドルを割り込めば、大きく値を下げそうだが、まずはここを踏みとどまれるかを見極める。材料はいくつか出ているが、まずは値動きを注視しておく。天然ガス相場は下げ渋っている。何とか踏みとどまっており、ここで下げ渋れば反発に転じる可能性がある。3.128ドルがポイントになろう。

【農産物市場の市況解説】
25日のシカゴコーンは反落した。米国産地での豊作見通しや中西部の作柄に適した気象予報が相場を圧迫した。12月限は、週間で約2.05%下落した。活発な輸出需要が相場を支えた。米農務省は25日、2025〜26年度渡しの米国産トウモロコシが韓国向けに14万トン、メキシコ向けに10万2870トンの民間輸出があったことを確認した。8月の中西部の夜間の気温が平年よりも穏やかになるという予報を受け圧迫された。これは作物にとって重要な登熟期間に好影響をもたらす可能性がある。

トレーダーらはまた、トランプ政権による8月1日の関税発動期限を前にポジション調整を進めていたが、米国が複数の主要輸出先と協議を進めているため、取引モデルに大きな変更を加えることに慎重だった。

中国当局は、同国の一部の地域で高温と干ばつが今後も続き、秋作物の生産に悪影響を及ぼす可能性があると指摘した。一方、ロシアは、輸出拡大を目的に計算方式を調整することで、大麦およびコーンの輸出関税を実質的に引き下げた。

米中西部では、コーンの基準入札は25日にかけておおむね弱もち合いだった。一部の圧砕工場では弱含みを示したと、現地調査で明らかになった。

シカゴ大豆は反落した。貿易の不透明感や輸出需要への懸念が反落した要因となった。米中西部の穀倉地帯で好天が続く中、豊作見通しが大豆先物を圧迫した。トレーダーらは、トランプ政権による8月1日の関税発動期限を前にポジション調整を進めていたが、米国が複数の主要輸出先と協議を進めているため、取引モデルに大きな変更を加えることに慎重だった。

欧州連合(EU)当局者や外交官らによると、EUと米国は今週末27日、貿易に関する枠組みで合意に達する可能性があり、欧州産業界にとって数カ月にわたる不透明感が解消されるという。

欧州委員会は、米国との交渉が決裂した場合に備え、2種類の報復関税案を用意している。それらは一つにまとめられたうえでEU加盟国の承認を得る予定だ。米国の鉄鋼とアルミニウムに対する報復措置の一環として、25%の関税を賦課する対象リストに米国産大豆が含まれている。しかし、これは12月1日まで発動されない見通し。

米農務省は25日、メキシコ向けに2025〜26年度渡しの米大豆14万2500トンの民間輸出があったことを確認した。米中西部では、大豆の基準入札は25日にかけておおむね弱もち合いだった。一部の圧砕工場では弱含みを示したと、現地調査で明らかになった。

シカゴ小麦は反落。週間でも下落した。北半球での収穫進展に伴う潤沢な供給が、米国産小麦の好調な輸出を打ち消したためだ。週間では1.46%安を記録した。中西部ノースダコタ州のクロップツアーに参加した調査員は、硬質赤色春小麦のイールド(単収)見通しが1エーカー当たり平均49.0ブッシェルになり、過去最高だった前年の54.5ブッシェルを下回ると予測した。

NYココアは反発。米大手チョコレートメーカーのハーシーと食品大手モンデリーズ・インターナショナルの決算が、カカオ豆の需要に関してさらなる手掛かりをもたらす見込み。

NYコーヒーは4日ぶりに反落。コンサルティング会社サフラス・アンド・メルカドによると、ブラジルの2025〜26年度産コーヒー豆の収穫進捗率は、23日時点で作付面積の84%に到達した。これは前週末比で7ポイントの増加となる。降雨が少なく、収穫作業が順調に進んだことが相場を押し下げた要因と見られる。

【農産物市場のトレード戦略の考え方】
シカゴ市場のコーン・大豆相場は、上値の重い展開が見込まれている。降雨によって高温に伴う作物のストレスが軽減し、生育環境が上向くとの見方が背景にある。トランプ米政権が導入した高関税政策を巡る米中協議にも注目が集まっている。ここ最近の気温上昇懸念が後退し、コーンの豊作観測が浮上し、足元の相場を圧迫している。米農務省が21日発表した作柄報告(20日時点)によると、米国産コーンの「優」と「良」の割合は計74%となり、9年ぶりの高水準となった。

足元の降雨に関し、米農務省は25日付のリポートで「コーンベルト中心では激しい雨と雷雨により、コーンと大豆にとって好ましい水分量が保たれている」と分析している。加えて、ブラジルのコーン生産量が拡大するとの見通しも相場の重石となっている。米農務省の作柄報告では、米国産大豆の「優」と「良」の割合は68%と前週(70%)から低下し、市場予想も下回った。

高関税政策に絡み、米国が日本に課す相互関税について15%に引き下げることで日米両政府は合意済みである。米国と欧州連合(EU)の通商交渉も妥結した。28・29両日に開催される米中関税協議の着地点が見えない中、積極的に大豆を買う動きは想定しにくい状況だが、進展すれば大きく上昇する可能性もあるだけに、報道には要注意である。一方、小麦については世界的に潤沢な供給見通しが相場の弱材料になっているといえる。直近安値を更新した場合には要注意であろう。

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