BLOG

投資に役立つ
伝えたいことが毎日ある。

  1. HOME
  2. ブログ
  3. ブログ
  4. 白黒をつける

白黒をつける

こんばんは、矢口新です。

白と黒は対極にある。
完全な純白も完全な漆黒もあるかないか分からないが、
その間には無数に近い段階的なグレーがある。
白黒写真や白黒テレビはそうしたグレーだけで
画像・映像世界を造り上げていた。

するかしないか、行くか行かないか、
2つに1つを決める判断は「白黒をつける」ことに等しい。
ところが、世界は白黒だけでなく、
あらゆる色が無数に近い段階を持つ
「曖昧」なものだ。決められない。
決めたくないことがあっても、
その方がむしろ自然なのだ。

一方で、人間は「決めたがり」だ。
白黒、右左、上下などと、ラベルを貼って、
単純に理解しようとする。

例えば、北朝鮮の金正恩は、
私が現在最も興味深い政治家だと見なしている1人なのだが、
何枚も貼られた同氏のラベルから
目が離れない人たちには受け入れらない見方だろう。
私も同氏のやり方を支持しているわけではないが、
それなりに合理的な政治を行っており、
なによりも今は「流されない」でいる。

特に興味深く思えたのは、
一時米国のトランプを選んで中国を「裏切り」ながら、
習近平から以前よりも遥かに厚遇される地位を得たからだ。
小国でありながら、中国とほぼ対等に渡り合っている。
中国を恐れずにトランプになびいたことが、
大国にも「なめられない」ことに繋がったように思える。

今もトランプは金正恩に秋波を送っている。
大国から制裁や圧力を受け続けてきたことで、
「これ以上失うものはない」と居直ったことが
同氏を強くしたのだろうか?

9月14日にあった井上尚弥のタイトルマッチを見た。
同選手や中谷潤人の試合はウェブでだが、
ほぼ欠かさず観ている。
昔の軽量級の選手は技術があっても、
後半になるとスタミナ切れで
クリンチが多くつまらなかったが、
両選手はパワー、スタミナの点でほぼ完璧だ。
その上で、井上尚弥は技術、
スピードで中谷潤人をやや上回っているのではないか?

ボクシングのノックアウト勝ちは
「白黒をつける」ことに等しい。
井上尚弥もこれまではほとんどの試合で
ノックアウト勝ちしてきた。
今回は相手が元オリンピックのメダリストで、
技術もパワーもスタミナもあることから、
あえて判定勝ちでも勝ちに行くとしていた。

結果は判定での圧勝だった。
そして、白黒をつけるよりも、
グレーの方がダメージを
与えられるのかも知れないと思わせる勝ち方だった。

大相撲で「相撲をさせて貰えない」という表現は、
一瞬で勝負をつけられるという意味だ。
ボクシングでも早いラウンドでの
ノックアウト負けは、
当たり所が悪かっただけ、
あっと言う間に終わって、
ボクシングをさせて貰えなかったという
思いが残るのではないか? 
それはそれでダメージなのだが、
工夫すれば次こそはと奮起することができる。

9月14日の井上尚弥は、
相手に12ラウンド、十分にボクシングさせた。
それでいて内容でも判定でも相手を圧倒した。
これは力の差が大きいからできることであって、
たまたまではない。
つまり、相手に与えたダメージは
ノックアウトよりも大きかったのではないか?

中谷潤人の前回のタイトルマッチは
十分に井上尚弥との対戦を意識したものに見えた。
そして、技術とスピードでは勝る
世界チャンピオンの相手を粉砕した。
今回の井上尚弥のタイトルマッチも、
中谷潤人との対戦の意識したものだったのではないか? 
来年にもあると思われる両者の対決が楽しみだ。
白黒をつけるのがもったいない位だ。

相場は買いか売りかだ。
すべてのことに白黒をつけ、
買えるか売れるかを見極めていく。
そこで迷いが出るのは、時間が絡んでくるからだ。
短期、中期、長期で白黒が
逆転することは当たり前のように起きる。
むしろ、すべてが同じ方向を向くことの方が稀で、
また、それが正しいとは限らない。
そんな時は過熱を示唆しているからだ。

これまでも何度か書いたが、
私は学生時代に文学を専攻した。
文学の世界から、いきなり相場の世界に入ってきた。
いわば、概念の世界から、
極端な現実直視の世界へと移ってきた。
グレーしかない世界から、
白黒をつける世界にやってきた。

相場は、特に短期トレードはスポーツに近い。
技術、スピードの他にパワー、
スタミナなども必要だ。
14日のタイトルマッチで解説者が興味深いことを言っていた。
「頭を使うと脳が疲れるので、体力が消耗する。井上尚弥のスタミナは驚異的だ」。

白黒を判断することは体力を消耗させる。
緊張感を維持してグレーの状態を続けることは
もっと体力を消耗させる。
世界の動きを追いかけるにも、
相場をするにもスタミナが必要なのだ。

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


主要指標

最近の記事