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個人が投資をする目的とは

From 矢口新

2020年3月からのコロナ対策をきっかけに、
日米共に新規に株式投資を始める人々が急増した。

市場に新規参入者が急増すると、
少なくとも一時的にはこれまでの手法が通用しなくなるようなことが起きる。

実例を挙げれば、1980年代半ばの日本勢が米債券市場で引き起こした「混乱」がある。
私なども直接に関わった。

世界最大の債券市場である米国債の市場は、
実体経済や株式、他市場の債券などと相対比較される洗練された市場だった。

そこに「ザ・セイホ」をはじめとする日本勢が新規に本格参入した。

買われて割高となった債券は、
他市場や同種債券とのバランス上売られるのがそれまでの通例だった。

ところが、外債ポートフォリオの積み上げ期だった日本勢はどこまでも買い続けたのだ。

ある時の米国債の入札では、
プライマリーディーラーを合わせた日本勢の買い予約が発行残高を上回るような事態となり、
米当局が介入したことさえあった。

コロナ対策による日本株市場の混乱は、
20年後半にかけて治まったような感がある。

しかし、より大量の資金が供給された米市場の混乱は、
21年に入ってむしろ加速しているようだ。

彼らは仕手戦のような、力づくの売買を繰り広げている。

私は、個人が相場にたずさわることの究極の目的は、
自分の可能性を広げることにあると思っている。

知識が増え、経験が増え、資金力が増える。
それが可能性の拡大につながるのだ。

これが、儲けることだけを目的にしてしまうと、
ルールをないがしろにしたり、ルールの範囲ならば何をしてもいいという考え方におちいったりする。

そうなると、資金力は増えても信用されない人となり、
かえって自分の可能性をせばめてしまうのだ。

お金は人を幸せにするが、不幸せにもする。

例えば、5万円のディナーを食べるとき、
月収が20万円の人と、日収が20万円の人のどちらが、より大きな幸福感を味わえるだろうか? 

5万円のディナーは、1回の食事としては最高級のものに属する。

それでも日収の4分の1でしかなく、
日常のありきたりの幸福感しか味わえないとすれば、
お金はその人の幸せを多少なりとも奪ってしまったとも言えるのだ。

高級外車を色違えで何台そろえても、
あるいは数多くの相手とデートしても、
お金があるためにしばしば目移りしたりして、
「かけがえのない」幸せから遠ざかることにもなるのだ。

お金で幸せになりたいのなら、
幸せになる方法で、お金を増やさなければならない。

相場でお金を儲けるにも、幸福感の味わえるやり方を見つける必要がある。

それには今の新規参入者たちが行っているような一発勝負ではなく、
長く続けられるやり方を見つけることだ。

すぐに大金に結びつくことがなくても、自信や満足感につながる方法だ。
そのほうが幸せになれるのだ。

相場に真正面から向き合い、日々研鑚していると、
知識が増え、経験が増え、それなりに資金力が増えていく。

運が良ければ大儲けもできるだろう。

また、相場はある意味戦いの場なので、
真正面から向き合っていると、自分の周りに「戦友」とも呼べる、頼りになる仲間ができてくる。

これらすべてが、自分の可能性を大きく広げることになるのだ。

  • コメント ( 1 )

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  1. ひめおやじ

    初めてコメントします。
    とても感銘しました。

    個人が相場にたずさわることの究極の目的は、自分の可能性を広げることにある
    この言葉 ハッとさせられました。

    儲けることだけを目的にするとルールを破ったり、ルールの範囲内なら何をしてもいいということになるというのもその通りと非常に腑に落ちました。

    市場への向き合い方、人生の目的を今一度確認、意識していきたいと感じました。

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