【2025年9月1日】江守哲のコモディティコメント
こんにちは、江守哲です。
29日の金相場は約1%上昇し、月間の上昇率は4.7%で、4月以来の大きさに拡大した。この日は一時7月17日以来の高値を付けた。7月の米個人消費支出(PCE)物価指数を受けて、FRBが来月利下げを行うとの観測が強まった。7月のPCE物価指数は前月比と前年同月比の伸び率がいずれも市場予想と同水準だったが、コア指数は関税措置の影響で伸びが加速した。FRBは年内に1〜2回利下げすると見込まれており、こうした状況は金や銀などのコモディティ相場の支援材料になると見られている。
金相場は一段高になり、直近高値の3451ドル目前まで上げてきた。これを超えると、いよいよ過去最高値の3500ドルが視野に入ることになる。すでに相場としての過熱感も出てきているが。これをこなしたうえで高値を更新していくだろう。今後は上下動しながら、徐々に下値を切り上げていく可能性が高いと考えている。銀相場は急伸し、直近高値を超えてきた。これで節目の40ドルを超える動きになれば、大相場に発展しそうである。その可能性は十分にあるといえる。
29日のロンドン金属取引所(LME)の銅相場は上昇し、5週間ぶりの高値をつけた。米国の利下げ観測と9月の需要増加への期待が相場を押し上げ、月間では3%の上昇。この日は一時7月25日以来の高値である9918ドルを記録した。ドルは8月に2%下落した。他通貨を保有する投資家にとって、ドル建てで取引される金属に割安感が生じた。一方、世界最大の金属消費国である中国では、人民元が対ドルで5月以来最大の月間上昇率を記録した。
上海先物取引所の指定倉庫の銅在庫は今週2.4%減少し、中国への銅輸入需要を反映するプレミアムは1トン当たり55ドルで安定。これは6月5日以来約3カ月ぶりの高水準で、中国の銅需要が回復していることを示唆している。
今週の銅相場は、米国の経済指標発表が相次ぐ中、ドルの動きに左右されやすい。FRBの利下げ観測からドルが重い動きとなるため、銅は下支えされる見込みである。先週前半、銅相場は弱い中国経済指標を受けて軟調に推移した。しかし、FRBの来月会合での利下げ観測を背景にドル安が進み、9700ドル付近に近づくと上昇に転じた。最近のレンジ取引の上限である9900ドルを超え、7月下旬以来5週間ぶりの高値水準を記録した。
今週は夏休み明けに伴う需要回復が予想され、これまでのレンジ取引は終了する見込み。需要回復への期待から今週末から値を上げており、相場は底堅く推移するとみられている。5日発表の米雇用統計は、今後発表される経済指標の中で最も注目される。低調な結果となれば、利下げ幅拡大の観測が浮上し、金属市場を押し上げる要因となる可能性がある。 2日にはISM製造業購買担当者景況指数(PMI)、4日にISMサービス業PMIやADP全米雇用報告が発表され、これらに注目しておく。
銅相場は続伸し、節目の9900ドルを超えてきた。この水準を維持し、一段高になれば、直近高値の9965ドル、さらに節目の1万ドルを試すことになろう。大相場に発展するのかどうか、きわめて重要な局面にあるといえる。アルミも同様に堅調に推移している。ただし、200日線の2817ドルを超えていない。これを超えるかどうかは、今週の最大のポイントになろう。超えてくれば、直近高値の2854ドル、さらに直近高値の2880ドルを試す動きになろう。今週の動きはきわめて重要である。
29日のNY原油相場は3日ぶりに反落した。米国の石油需要減少とOPECプラスによるこの秋の増産観測がある。市場はOPECプラスの会合に注目。市場シェア回復に向けて増産を加速している状況が供給見通しを引き上げ、原油相場を圧迫している。また、米国の夏のドライブシーズンが9月1日のレーバーデーで終了することから、燃料需要のピーク期が終わることへの警戒感も広がった。
投資家は、ロシア産原油の調達停止を求めるトランプ米政権へのインドの対応にも注目している。米国は27日にインドからの輸入品に適用する関税率を50%に引き上げたが、複数のトレーダーによると、インドは現時点で米国の要求を受け入れておらず、9月のロシアの対インド原油輸出は増加すると見込まれている。
イラン国営メディアによると、同国のパクネジャド石油相は29日、核合意違反による制裁復活(スナップバック)によって石油輸出が規制される可能性があるとの見解を示した。ただし、イランは制裁回避の方法を学んできたとも述べた。
イギリス、フランス、ドイツの3カ国は28日、核開発問題を巡り、イランへの国連制裁を復活させる手続きを開始した。パクネジャド氏は、長年の石油輸出規制により「制裁回避に必要な知識を得た」と発言。さらに、「スナップバックによって新たな措置が必要になる可能性は当然あるが、われわれはこれらの規制に束縛されない」と強調した。
NY天然ガス相場は続伸した。レーバーデーの連休を控えて薄商いとなる中、冷房用の電力を賄う発電需要が増加するとの見込みが相場を押し上げた。一時8月8日以来3週ぶりの高値を付けた。週間では11.5%上昇したが、月間では7月と8月の暑さが予想ほど厳しくなかったため、3.1%下落した。
原油相場は反落した。依然として上値が重いといえる。20日線の63.74ドルはわずかに超えているが、100日線の64.44ドルは超えていない。この狭いレンジのどちらに抜けるかを見極めることになろう。下値は62ドルで堅そうだが、上に向かう材料に乏しい状況は変わっていない。次の材料が何かを見極めたい。天然ガス相場は続伸し、反発基調が続いている。この基調が継続するのかをまずは見極めたい。そのうえで、50日線の3.148ドルを超えるかを今週は見極めることになろう。
29日のシカゴコーン相場は活発な輸出に加え、タールスポットや南方さび病などの病害をめぐる懸念やテクニカルな買いに支えられた。また、市場参加者は、月末やレーバーデー(労働者の日)に伴う連休を控えてポジション調整目的の買いを入れた。
ブラジルのエタノール生産大手インパサと穀物大手のアマッジは28日、合弁会社を設立し、マトグロソ州に少なくとも3つのコーン由来のエタノール工場を建設することで合意した。米農務省が28日に発表した週間輸出成約高(15〜21日)では、米コーンの来年度の純成約高が208万9700トンと、2週連続で200万トンを超えた。
シカゴ大豆相場は続伸した。不安定な商いの中、テクニカルな買いが入り、相場は上昇した。一方で、中国からの需要不足が価格を圧迫した。米中貿易戦争が続く中、中国が米大豆の購入を再開するとの期待が高まり、先週には一時2カ月ぶりの高値を付けたが、これまでのところ購入は確認されていない。
市場は数日中に行われるとされる米中通商交渉を注視している。米政府報道官は25日、中国商務省の李成鋼国際貿易交渉代表が訪米すると明らかにしている。市場参加者は、月末と週明けのレーバーデーの連休を控えてポジションを調整した。
シカゴ小麦は続伸。月末でかつ翌週月曜日がレーバーデーで米市場が休場となるのを前に、投資家によるポジション調整の動きが見られた。
NYコーヒーは反発した。前日には一時、3カ月半ぶりの高値となる391.30セントを付けていた。週間では2%高、過去4週間では34%上昇した。米国がブラジルに50%の関税を課したことによる国際貿易の混乱が、引き続き市場を支えた。市場参加者はロイター調査に対し、ブラジルやベトナムでの生産改善の見通しが確認されれば、年末には価格が下落する可能性があるとしている。
NY砂糖は下落。ブラジルの業界団体ユニカ(UNICA)が同国中南部の8月前半の生産量が前年同期比15.96%増の362万トンに達したと発表したことが主因。また、国際砂糖機関(ISO)も同日、2024〜25年度は世界的な生産量増加により、供給不足が急激に減少するとの見通しを示した。
先週のシカゴ市場のコーン相場は、底入れするかどうかを見極める展開となった。米国産が記録的な豊作予想であったことから価格は低迷が続いていたが、病害や一部生産地の乾燥による収穫量減少の懸念が、相場を下支えする要因となった。今週、トウモロコシの中心限月は約1カ月ぶりの高値に上昇した。大豆先物も前週末に6月下旬以来の高値を付けた後、やや下回る水準で推移した。米国産の豊作観測が弱材料となったが、米中通商交渉の進展への期待が価格を支えた。
中国政府は28日、対米協議の実務責任者が近く訪米すると明らかにした。米国産大豆の購入が協議内容に含まれるとの報道により、市場で中国による輸入再開への期待が高まった。しかし、中国は近年ブラジルからの大豆輸入を増やしており、29日にはアルゼンチンやウルグアイからの調達も拡大していると報じられた。このため、米国産大豆の輸入再開が実現するかは不透明な状況である。
米農業調査会社プロファーマーが8月に行った調査では、中西部のネブラスカ州からオハイオ州にかけて、コーンに南方さび病やタールスポットといった病害が発生していることが判明した。病害と乾燥の影響を受け、同社は2025〜26年度の米国産コーンの生産高や単収について、米農務省の8月需給報告より低い予想を示した。しかし、それでも収穫量は昨年度を上回り、過去最高に達すると見られている。また、一部の米穀物トレーダーは、プロファーマーの予想は低すぎると指摘している。
このような状況の中で、先週末のコーン相場は急伸している。この基調が続くかを見極めることになろう。50日線の415セントを明確に超えており、このまま上昇すれば、100日線の431セントがターゲットになろう。大豆は続伸した。下値を維持したため、直近高値の1061セントを超えると大きく値をあげそうである。小麦は続伸し、20日線を超えたことで水準を切り上げる可能性が出てきている。536セントを超えると、大きく値を上げそうである。

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