シリコンバレー銀行破綻が金融危機に発展する可能性はあるのか?
こんにちは。
戸松信博です。
シリコンバレーバンク(以下、SVB)など、
米銀の破綻が相次いで発生して市場が動揺しており、
中には今回の破綻が直ちに金融危機に発展するのではないかとの予想も出ています。
そうした予想を見て、
心配になっている方もいるかもしれませんので、
解説させて頂ければと思います。
まず、SVBの破綻が何故起こったかですが、
SVBは米国のスタートアップ企業が顧客の中心になっていて、
コロナバブルで大量の資金を調達したシリコンバレーの新興テック企業から預金を集めてきました。
預金残高は2020年からの3年間で3倍超に膨らむほど。
その急増した預金を米国債などの有価証券で運用していた訳ですが、
FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げによって金利が上昇したことで
債券価格は下落してしまい、含み損を抱えてしまいました。
また金利高の中で顧客である
スタートアップ企業の資金繰りが厳しくなったことも重なり
年初から預金の引き出しが増加。
結局、大幅な損失を出し、
3月8日に債券の売却と大規模資金調達を発表しました。
ところが、この発表がかえって同行の信用不安を拡大させ、
スタートアップ企業を中心に預金が流出するという大規模な取り付け騒ぎが起こってしまったわけです。
つまり、SVB破綻の主な原因は、顧客が一定の業界に集中していたことと、米国の急激な長期金利の上昇にあります。
SVBの前に清算を発表したシルバーゲート銀行やその後に続いたシグネチャー・バンクは暗号資産(仮想通貨)を中心に取り扱っていたので、
このケースでも一定の業界に集中していたことがわかります。
コロナ後の超緩和バブルの反動が、米国の一部銀行を襲ったということで、
同様にバブルに踊った金融機関がいくつか後に続く恐れはあるものの、今回の件が直ちに金融危機に発展するとは考えにくいと思います。
その理由ですが、まず、リーマン・ショックの際は、
サブプライムローンに関わる大きなレバレッジをかけたさまざまな金融商品がありましたが、今回はそうではありません。
また、すでに米財務省、FRB、米連邦預金保険公社(FDIC)は保護する預金の上限を撤廃して預金の全額保護に乗り出し、
FRBは預金流出の恐れがある銀行に緊急融資も表明(銀行や中小金融機関は、1年を上限に、国債やMBS等を担保に資金を借り入れることができる。
なお、担保価値は額面で評価される)しており、金融危機へと波及しないように次々と対策を打ち出しています。
ただ、今回の流れは逆業績相場の中の1つの出来事であって、今回の件が直ちに金融危機に発展するとは考えにくいものの、1年後などもっと時間をおいてから、最終的には今回よりも、もっと大きな危機が来るのではないかと予想しています。
市場では金利低下や利上げが今後無くなるのではないかとの予想も出ていますが、仮に利上げは止まったとしてもインフレが収まっている状況ではないので、利下げにはなかなか結びつけられないのでないかと考えます。つまり高金利、高インフレの状況はもう少し続きそうで、その影響は今後時間をおいてから出てくるのではないかと考えます。
戸松信博
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