【2024年11月11日】江守哲のコモディティコメント
こんにちは、江守哲です。
8日の金相場は下落。ドル高に押され、週間では5カ月超ぶりの大幅安 となった。市場では、トランプ次期米大統領の政策が今後与え得る影響を見越して、多くのリスク資産 が恩恵を受け始めており、貴金属相場から引き揚げた資産をリスク資産に振り向ける動きがあったとの指摘が聞かれた。FRBは7日、0.25%の追加利下げを決めたが、追加利下げには慎重な姿勢を示した。パウエルFRB議長は、大統領選の結果は金融政策に「短期的な影響は及ぼさない」と語った。
金相場は反落し、20日線の2701ドルを割り込んだ。ただし、いまは売られすぎの戻りを試す場面であり、特に気にする動きではない。50日線の2643ドルを割り込んだ場合にはかなりの注意が必要になるだろうが、そこまで下げれば買いも入ってきそうである。これまでの繰り返しになるが、金はこれまでの文脈で考えてはいけない状況になっている。このことに気づいている投資家がどの程度いるかは不明だが、とにかく気付かれないようにゆっくりと上がって行ってほしいところである。
8日のロンドン金属取引所(LME)の銅相場は下落した。金属消費大国の中国が景気てこ入れに向けて発表した財政支援策の規模を巡り失望感が広がった。トランプ次期米大統領が中国に追加関税の発動をちらつかせ、金属需要が落ち込む可能性も懸念される。中国はどのような貿易制限が導入されるか様子をみており、万一の際に刺激策を打ち出す準備をしているのではないかとの見方がある。
今週のロンドン金属取引所(LME)の銅相場は、トランプ次期米大統領が公約する高関税や減税政策に伴うインフレ圧力への懸念が広がる中、ドルの先高観から上値が重くなるとの見方がある。米中両国が発表する物価統計も銅需要の見通しを左右するとみられる。先週は米大統領選や中国の追加刺激策を巡る思惑に左右された。銅相場は中国の追加刺激策への期待が高まり、上昇して始まったが、米大統領選でのトランプ前大統領勝利を受け急落した。
その後は反発したものの、8日に中国政府が発表した追加刺激策の規模に失望感が出て、再び軟調な展開となった。トランプ氏の関税が中国や世界経済の成長を鈍化させるとの懸念が市場にはあるようである。しかし、それはあくまで目先の話である。この日の銅相場は大きく下落し、20日線・50日線を割り込んで、100日線もわずかながら割り込んだ。これで200日線の9389ドルを割り込めば、地合いは大きく悪化する可能性がある。まずは週初の動きを注視したい。
8日の原油相場は2%超安と反落。ハリケーンによる米メキシコ湾沿岸地域での供給停止長期化を巡る懸念が和らいだ。 中国の景気刺激策に対する失望感も重石となった。ハリケーン「ラファエル」の接近に備え、米メキシコ湾沿岸での石油生産は8日までに23%超が停止された。ただし、最新の予報でハリケーンが石油生産に与えるリスクが後退した。市場では、ハリケーンによる供給停止の脅威は和らいでいるとの見方が示された。
米国立ハリケーンセンターによると、ハリケーンは8日に5段階で下から2番目の「カテゴリー2」に勢力を弱めたという。
米エネルギーサービス会社ベーカー・ヒューズの週間(8日までの週)によると、国内石油・天然ガス掘削リグ稼働数は前週から横ばいの585基だった。3週連続で横ばいとなった。前年同期の水準を31基(5%)下回っている。石油リグは1基減の479基、ガスリグは1基増の102基だった。
米製油各社は、今年10〜12月期の製油所稼働率を90%以上にする見通し。石油製品の在庫が低水準となる中、ガソリンとディーゼル油の需要が回復している。製油会社の幹部や専門家が語った。米国では、夏のドライブシーズンが過ぎた後、10〜12月の稼働率は落ち込む傾向にある。ただし、例年よりも燃料在庫が少ないため、マージンが低くても稼働率は上昇するとアナリストは分析している。
米製油大手各社は、年内の稼働率について、昨年の水準を若干上回る90〜94%にする計画。マラソン・ペトロリアムは、操業する国内の製油所13カ所の稼働率を90%にする。バレロ・エナジーは最大94%の稼働率を見込む。このほか、CVRエナジーも稼働率を引き上げる方針。
中国の10月の原油輸入は前年同月比9%減の4470万トン(日量1053万バレル)だった。6カ月連続で減少した。国有の大連製油所の稼働停止や民間製油所の需要減少が響いた。前月は1107万バレル、前年同月は1153万バレルだった。国有石油大手、中国石油天然ガス(ペトロチャイナ)は、大連製油所(処理能力日量9万バレル)の稼働を10月に停止した。同製油所を2025年半ばごろに閉鎖し、別の場所で小規模の製油所に置き換える計画の一環。
国営化学大手、中国中化集団(シノケム)も山東省の3製油所を無期限で停止している。3カ所の生産量を合わせると中国全体の3%を占める。1~10月の原油の累計輸入量は前年同期比3.4%減の4億5700万トンだった。
スイスの石油商社ビトルの幹部は7日、中国が今後の世界の石油需要で引き続き重要な役割を果たすとの見方を示した。中国では運輸部門の燃料消費はピークに達しているものの、国が石油化学製品に注力していることが背景にあるという。今後数年間は石化製品の生産能力は拡大し続けるだろうと予想した。
幹部は「これが中国と世界の石油需要を押し上げると確信している。石化分野では脱炭素があまり求められていないためだ」と指摘。「航空燃料と石化製品の原料となる液化石油ガス(LPG)やナフサが今後5年間の世界石油需要の成長を促す」と話した。中国の石化大手、恒力集団の傘下企業幹部は、中国とインドの燃料需要の伸びが2025年の世界の原油価格の方向性を決めると語った。その上で、「供給はここ数年、非常に好調で、今後もその状態が続く」と述べた。
8日のNY天然ガス相場は約1%安と続落。11月下旬まで穏やかな天候が続くとの予報を背景に、暖房需要が低迷し、今後数週間は例年よりも在庫が増えると見込まれたことが圧迫した。
原油相場は一転して大きく値を下げた。買われすぎ感もあり、結果的に売りが優勢になっている。20日線の70.50ドルや50日線の70.69ドルを割り込んでおり、地合いは悪化した。買われすぎの調整余地も大きいため、まずはどこまで調整するかを見極めることになりそうである。中東情勢の悪化だけでは上がらないことは、繰り返し指摘してきたことである。この点をよく理解したうえで、冷静に見ていく必要がある。また、ドル相場の影響も受けやすい点にも注意しておく。
8日のコーンは6日続伸。一時6月末以来、約4カ 月超ぶりの高値を付けた。8日発表の11月の米需給報告で、コーンの生産高見通しが予想以上に下方修正されたことに反応した。 需給報告によると、2024〜25年度の生産高見通しは151億4300万ブッシェ ル、単収予想平均が1エーカー当たり183.1ブッシェルだった。前月は生産高見通し が152億0300万ブッシェル、単収予想平均は183.8ブッシェルだった。
一方、相次ぐ輸出成約が支援要因となった。米農務省は日報で、24〜25年度渡しの 米国産20万0480トンの輸出を確認した。仕向け地は不明。世界有数のコーン生産国であるアルゼンチンでの乾燥天候は、同国産の作物にストレスを与えると予想されている。
大豆は、この日発表の米需給報告で生産高見通しが市場予想を上回る下方修正となったことが押し上げ要因となり、5日続伸した。一時 10月初旬以来、1カ月ぶりの高値を付けた後、やや上値を削った。米農務省が発表した需給報告では、2024〜25年度の生産高見通しが44億610 0万ブッシェル、単収予想平均が1エーカー当たり51.7ブッシェルとなった。前月の需給報告では、生産高は45億8200万ブッシェル、単収は53.1ブッシェルが予想されていた。
また、需給報告では、24〜25年度の米国産の期末在庫見通しが4億7000万ブッシェルと、前月見通しの5億5000万ブッシェルから下方修正された。ただし、下方修正後も依然として5年ぶりの高水準に相当する。
小麦は反発。コーンの上昇につれ高となった。週間では0.8%上昇した。米農務省は世界の小麦期末在庫予想を、アナリスト予想の2億5679万トンを上回る、2億5757万トンに引き上げた。 西欧の豪雨による種まきの遅れで、昨年の不作が繰り返される可能性があるとの懸念が浮上した。
米農務省は8日発表した11月の農産物需給報告で、2024〜25年度の米国産コーンの期末在庫を19億3800万ブッシェルと、前月の19億9900万ブッシェルから下方修正した。市場予想(19億4600万ブッシェル)を下回った。
米大豆の期末在庫は4億7000万ブッシェルと、前月の5億5000万ブッシェルから下方修正した。市場予想(5億3200万ブッシェル)を下回った。一方、米小麦の期末在庫を8億1500万ブッシェルと、前月の8億1200万ブッシェルから上方修正した。市場予想(8億1300万ブッシェル)を上回った。
コーンの単収予想は1エーカー当たり183.1ブッシェルと、前月の183.8ブッシェルから下方修正した。市場予想(183.7ブッシェル)を下回った。大豆の単収予想は1エーカー当たり51.7ブッシェルと、前月の53.1ブッシェルから下方修正した。市場予想(52.8ブッシェル)を下回った。
▽コーン
〔23〜24年度〕
供給側は作付面積、収穫面積、生産高をすべて据え置いた。需要側はエタノール副産物を700万ブッシェル上方修正。国内消費を据え置いた。一方、飼料その他を700万ブッシェル下方修正。これらにより、期末在庫を据え置いた。
〔24〜25年度〕
供給側は生産高を6000万ブッシェル下方修正、単修を0.7ブッシェル下方修正、一方、期初在庫を据え置いた。需要側は飼料その他、エタノール副産物、輸出高をそれぞれ据え置いた。これらにより、期末在庫を6100万ブッシェル引き下げた。
▽大豆
〔23〜24年度〕
供給側は作付面積、収穫面積、生産高をすべて据え置いた。需要側は圧砕高、輸出高をそれぞれ据え置いた。これらにより、期末在庫を据え置いた。
〔24〜25年度〕
供給側は単収を1.4ブッシェル下方修正、生産高を1億2100万ブッシェル下方修正、一方、気所在庫を据え置いた。需要側は輸出高を2500万ブッシェル下方修正。一方、圧砕高を1500万ブッシェル下方修正。これらにより、期末在庫を8000万ブッシェル引き下げた。
▽小麦
〔23〜24年度〕
供給側は作付面積、生産高をそれぞれ据え置いた。需要側は国内消費、輸出高をそれぞれ据え置いた。これらにより、期末在庫を据え置いた。
〔24〜25年度〕
供給側は作付面積、収穫面積、生産高をすべて据え置いた。需要側は国内消費を200万ブッシェル上方修正。一方、輸出高を据え置いた。これらにより、期末在庫を300万ブッシェル引き上げた。
米農務省は8日発表した11月の農産物需給報告で、2024〜25年度の世界全体のコーンの期末在庫を3億0414万トンと、前月報告の3億0652万トンから下方修正した。市場予想(3億0570万トン)を下回った。中国を除いた期末在庫は9787万トン(前月9718万トン)。
世界全体の生産高は12億1940万トンと、前月の12億1719万トンから引き上げた。ウクライナは2620万トン、アルゼンチンは5100万トン、ブラジルは1億2700万トンとそれぞれ前月と変わらず。一方、米国は3億8464万トンと前月(3億8618万トン)から下方修正した。中国の輸入高は1600万トンと前月(1900万トン)から引き下げた。
23〜24年度の世界のコーン期末在庫予測は3億1422万トンと、前月(3億1265万トン)から上方修正。 世界生産高は12億2911万トンで、前月(12億2592万トン)から引き上げた。ウクライナは3250万トン、アルゼンチンは5000万トン、ブラジルは1億2200万トンとそれぞれ前月と変わらず。米国も3億8967万トンと前月の水準に据え置いた。
2024〜25年度の世界全体の大豆の期末在庫は1億3174万トンと、前月報告の1億3465万トンから下方修正した。市場予想(1億3406万トン)を下回った。中国を除いた期末在庫は8573万トン(前月8864万トン)。
世界全体の生産高は4億2540万トンと、前月の4億2892万トンから引き下げた。米国は1億2142万トンと前月(1億2470万トン)から下方修正。中国は2070万トン、ブラジルは1億6900万トン、アルゼンチンは5100万トンでいずれも前月から変わらず。中国の輸入高も1億0900万トンに据え置いた。
23〜24年度の世界の大豆期末在庫予測は1億1242万トンと、前月(1億1237万トン)から上方修正した。 世界生産高は3億9473万トンと、前月(3億9471万トン)から引き揚げた。アルゼンチンは4821万トンと、前月(4810万トン)から上方修正。中国は2084万トンと変わらず。米国は1億1327万トン、ブラジルは1億5300万トンにそれぞれ据え置いた。
2024〜25年度の世界全体の小麦の期末在庫は2億5757万トンと、前月報告の2億5772万トンから下方修正された。市場予想(2億5679万トン)は上回った。中国を除いた期末在庫は1億2357万トン(前月1億2321万トン)。
世界全体の生産高は7億9473万トンと、前月の7億9408万トンから上方修正。カナダは3500万トン、豪州は3200万トン、ウクライナは2290万トンと、いずれも前月から変わらず。一方、ロシアは8150万トンと、前月の8200万トンから引き下げた。また、中国の輸入高を1150万トンと前月の1200万トンから下方修正した。
23〜24年度については、世界の期末在庫予測を2億6625万トンと、前月(2億6618万t)から上方修正。世界生産高も7億9042万トンと、前月(7億9038万トン)から引き上げた。内訳を見ると、EUを1億3494万トンと、前月(1億3487万トン)から上方修正。このほか、中国は1億3659万トン、ロシアは9150万トン、ウクライナは2300万トンとし、いずれも前月水準に据え置いた。
NYココアは反落。ディーラー筋は、来年1月末までのコートジボワールの港へのカカオ豆着荷量が、昨年の予想水準を下回る恐れがあると述べた。着荷量はこれまでのところ昨シーズンのペースを上回っているが、継続する降雨や洪水、病害で12月は減少する可能性がある。
NY綿花は小幅反落。一時1%超下落した。ドル高に加え、米農務省の月間需給報告で米国の輸出が減少し、2024〜25年度期末在庫が増加するとの見通しが示されたことが圧迫要因となった。
NYコーヒーは反落。市場は引き続き、ロブスタ種の最大産地ベトナムでの収穫高を注視している。台風がコーヒーベルトを直撃し、収穫を遅らせる可能性があるとの懸念があった。台風は8日にフィリピン北部を襲い、激しい雨風が家屋や送電線に被害を与えた。
NY砂糖は反落。ディーラー筋は、数日以内にブラジルの業界団体ユニカ(UNICA)が同国中南部における9月後半の砂糖生産高を発表する見通しとした。S&Pグローバル・コモディティー・インサイツの統計によると、ブラジル中南部での生産高は前年の同じ時期に比べ28.3%減の169万トンになるとみられる。
今週のコーン・大豆相場は、上昇基調が続くとみられている。米農務省が8日発表した11月の農産物需給報告で生産高や在庫量を引き下げたことが相場の強材料になると見込まれている。需給報告では、2024〜25年度の生産高について、米国産コーンは3億8464万トン(前月は3億8618万トン)、米国産大豆は1億2142万トン(同1億2470万とン)とそれぞれ引き下げられた。
世界全体の期末在庫に関しても、コーンが3億0414万トン(同3億0652万トン)、大豆が1億3174万トン(同1億3465万トン)に下方修正。いずれも市場予想を上回った。一方、米国産の輸出需要が強く、需給の引き締まりが一定程度進んでいることがうかがえる。米週間輸出成約高(10月25日〜31日)によると、米国産コーンの今年度の純成約高は約280万トンと、市場予想(170万〜250万トン)を上回った。輸出が堅調との見方が今週の相場を支えた。
一方、5日投開票の米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が当選確実となったことを受けて、米中貿易戦争の懸念がくすぶる。トランプ氏は60%の対中追加関税の導入を目指しており、実現した場合、中国が米国製品に報復関税をかける可能性がある。穀物輸出の先行き不透明感が相場の上値を抑える展開も想定される。これらの材料を基に、今後の相場展開をじっくりと見ていく必要がある。
コーンは急伸している。直近高値をわずかに上回る場面も見られた。すでに十分に買われすぎになっており、まずは相場の持続性を確認する必要があろう。大豆も上昇を試す展開にある。この日も50日線の1009セントは維持したが、100日線の1025セントは一時超えたものの維持できなかった。すでに買われすぎになっているだけに、このまま基調を維持できるかを冷静に見ていきたい。小麦は引き続き膠着状態にある。20日線と50日線が位置する579セントを超えれば地合いが変わるだろう。
なお、投資判断はご自身の責任で行ってください。
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