(矢口新)巨額IPO
===========
📢 SNSのお知らせ
===========
矢口先生のInstagram/TikTokがスタートしました!
投資のお悩みに対するアドバイスなど、実践に役立つ情報を発信しています。
是非チェックしてください✨
▼Instagram
https://www.instagram.com/yaguchi_method/
▼TikTok
https://www.tiktok.com/@yaguchi_method/
こんばんは、矢口新です。
テスラの創業者イーロン・マスクの別会社スペースXが、
6月11日にナスダックに上場、
翌12日に取引を開始した。
IPOは3月に急浮上、5月20日にSECに目論見書を提出していた。
米証券界の慣例ではロードショー(投資家向けの説明会)で
需要を調査し、仮条件を設定するが、
6月3日、ロードショーの前にIPOでの価格を
1株135ドルに、発行済み株式数130億8000万株に対し、
IPOでの売出し株数を約5億5555万株に設定と異例づくめとなった。
6月11日にIPOで過去最大となる750億ドルを調達。
これまでの最大はサウジアラムコの256億ドルだった。
IPOでの1株135ドル、
750億ドル調達への応募は数倍だった。
個人投資家に異例の高水準である30%割当てたことを含め、
絶大なる個人投資家からの人気が異例づくめの慣例破りを可能にした。
大手ファンド、ブラックロックからのオーダーだけで50億ドルを超えた。
日本国内でも21億8500万ドルを調達したとされた。
12日取引開始時の初値は高く寄り付いて150ドル(+11%)、
終値は160.95ドル(+19%)。
発行済み株式数は130億8000万株なので、
IPO価格での時価総額は1兆7658億ドルだが、
それがIPO売出し株4.2%だけの取引の値上がりで
時価総額が2.1兆ドルとなり、
いきなり世界トップ6の企業に躍り出た。
また、大株主のイーロン・マスクは世界初の1兆ドル長者となった。
同社の稼ぎ頭は接続事業のスターリンク部門で、
売り上げの約61%を占める。
スターリンクはウクライナ戦争での役割が注目され、
米国防省が売上シェアの20%以上を占める。
とはいえ、同部門の営業利益は年間約44億ドルで、
2.1兆ドル企業としては見劣りする。
のみならず、同社主要3部門(宇宙・接続・AI)
合計の2025年12月期の売上高は約187億ドルで、
約49億ドルの赤字だった。
赤字なのでPERは出せないが、
初日終値でのPSR(株価売上比率)は112倍となる。
S&P500企業の平均PSRは3倍台。
ハイテク企業が多いナスダック企業でも5倍台なので、
とんでもない高倍率に買われていることになる。
ちなみに、売上高1億ドル超のIPO企業で、
PSRが40倍を超える場合、初日終値で株を取得し、
その後3年間保有すると、平均リターンはマイナス44.8%となるとのことだ。
同社の武器は知名度だ。
6月3日~8日にロイターなどが行った調査では、
航空宇宙、国防産業のライバル企業との比較で、
知名度順に、ボーイング、ロッキードマーチン、
ブルーオリジン、ノースロップグラマンなどより知名度が高かった。
知名度に加え、宇宙事業を推進する
イーロン・マスクへの期待度が高い。
ロケット打ち上げの実績は2025年1年間で300回以上、
3年間で2倍以上に増えている。
その実績を背景に、宇宙空間でのデータセンターの建設、
月基地の建設、火星への100万人移住などを実現させると言う。
ガバナンスでは、イーロン・マスクは85.1%の議決権を有し、
本人が同意しない限りCEOを解任されない。
また、特定の法的措置を起こすのに必要な最低保有株式数の引き上げや、
株主提案の制限など、将来の集団訴訟を困難にし、
CEOの独走を防ぐ機能もすべてなくした。
つまり、IPOは事実上のイーロン・マスクへの信任投票ともなっていた。
一方で、出資関連者たちは優遇されている。
創業者や初期からの出資者など
既存の株主の売買を上場後一定期間禁止するロックアップは
通常最低でも6カ月とされるが、このIPOでは2カ月とされた。
上場後の早期にマスク以外の既存株主(マスク個人自身には
1年のロックアップがかかっている)が高値でキャッシュアウトできるようになっている。
また、普通株式の最大5%を
一部の従業員および経営陣の親族・友人のための特別枠として割り当てた。
これらの株式は通常のロックアップ期間(売却制限)の対象外となり、
保有者が上場初日から即座に売却して換金できる。
スペースXに強気のアーク・インベストメントのキャシー・ウッドは、
企業価値は2030年には2.5兆ドルになると予測した。
取引初日に既に2.1兆ドルに達している。
また、オッペンハイマーは木曜日に目標株価を190ドルと発表、
ポリマーケットの賭けでは時価総額が金曜日の取引終了時に
2.2兆ドルを超える確率を45%と見ていた。
一方、弱気のモーニングスターは推定企業価値を7800億ドルとしていた。
近いうちに、ナスダックは100株指数に
時価総額6位の同社を加える見通しだ。
そうなれば、インデックス連動型の投資信託などが
一斉にスペースX株を購入する。
その規模は1.25兆ドル規模にも及ぶと言われている。
アンソロピックとオープンAIの2社も上場すれば、
合わせて少なくとも3兆ドルを超える規模の資金が
株式の買い付けで吸収される可能性がある。
その資金を得るために、指数から外された銘柄や、
これまで投資してきた銘柄が売られることになる。
これは業績のよい企業の株を売り、
利益を出せない会社の株を買うことにもなりかねないのだ。
個人投資家に人気の同社だが、
火星への移住はまだ先のことだろうから、
消費者が応援できるのは接続かAIだ。
接続のスターリンクは稼ぎ頭だが、
上記のようにこの時価総額を支えるような規模ではない。
つまり、スペースXはAIで稼ぐしかないのだ。
そこで、スペースXはIPOでの調達資金をAI投資に充てる。
グーグル、アマゾン、メタ、マイクロソフトらの
巨額AI投資に本格参入することになる。
技術で先行しているアンソロピックとオープンAIも
年内に巨額投資に参入する見通しだ。
問題は、これら7社が覇権争いをしていることだ。
それらが競争でオーダーを出すことで、
AIチップの設計会社、製造会社、製造装置会社、
メモリー製造会社、データセンターなどのインフラ企業などが、
こぞって製造能力の強化に動いている。
とはいえ、世界の半導体需要はたった7社から来る訳ではない。
何倍にも値上がりした半導体などを入手できないところは、
業務を縮小するか、代替部品や製品の開発に向かうことになる。
そうなれば、AIチップ市場のすそ野は縮小する。
一方で、7社の覇権争いが終了すれば、
AI投資からのオーダーは急減する可能性が高い。
つまり、いずれにせよ、時間の問題で膨れ上がった市場は縮小する。
スペースXの勢いはいつまで続くだろうか?
アンソロピックとオープンAIのIPOまで続けば、
資金も半導体もどんどん覇権争いで吸収されていく。
そう考えると、世界経済の傷が拡がり過ぎる前に、
AIバブルは破裂した方が、世界にとって結果的に良いと言えなくもない。

この記事へのコメントはありません。