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人は見たいようにしか見ない

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こんにちは、矢口新です。

拙著「生き残りのディーリング」には
以下のような項目がある。

03.見ているものが違う

蜂には紫外線が見えるそうです。
彼らは花の蜜を嗅ぎ当てるのではなく、
見つけるといいます。
花の外から蜜の色が見えるというのです。
蜂に見えている世界は私たちが
見ている世界と違うでしょう。
ヒトの可視光線、
可聴音域を超える生物には、
同じ世界が違って見え、聞こえるのです。

可聴音域といえば、
若い人たちには聞こえるが年配の人には
聞こえなくなっている高音域を
扱った人払い用の騒音製造器や、
着信音が若者だけに聞こえる携帯電話が
外国で製品化されています。
また、年齢とともに視力が減退するのは、
だれもが経験するところです。

「聞こえるものが減り、見えるものが減る」
――それはものごとから細部が消え、
全体像が把握しやすくなることでもあります。
すなわち、ヒトでも若いヒトと年配のヒトとは、
多少なりとも同じ世界が違って見え、
聞こえるのです。

私たちは自分の目で見たものを
「そのものの真実の姿」だと思いがちです。
しかし対象物は、液体である水が固体(氷)や
気体(水蒸気)にもなるように、
そのときどきの条件や私たちの識別能力によって、
さまざまに姿を変えているのです。

同じモノを同時に見るときでさえ、
その人の視力などの能力や立場、
潜在意識、固定観念、先入観、嗜好などによって
見えるものが違ってきます。
人はそれぞれに見ているもの、
見えているものが違うのです。

対象物には私たちが考えるような
「たったひとつの真実の姿」などはありません。
あなたや私の目にどう映っているかだけなのです。

とはいえ、市場に参加する人たちには
共通の目的があります。
誰もが安く買って、高く売りたいと考えているのです。
輸入企業のドル買いや、
輸出企業のドル売りのように片為替、
差し引きネットの部分は買いか売りかの
どちらか一方しかしない人たちでさえ、
より安く買いたい、より高く売りたいと考えています。
逆があるとすれば、それは利益をあえて減らす行為、
特別な目的のためだと言えます。

だれもが同じ目的で集まっている市場です。
ところが、割高、割安の感覚は人によって違います。

「昨日よりは高くても、今日の安値ならよい」
「今日の高値でも、昨日よりは安いから、
あるいは明日はもっと高くなるだろうからよい」
「ある価格以下なら利益が確保できるので、
待つことのリスクを取るよりも
今日の価格レンジ内ならいくらでもよい」
「情報サービスや注文執行、
受け渡し業務の充実などにより、
価格そのものは他よりも多少高いのは承知の上でも、
付加サービスに満足して購入する」――。
見ているものが違うと、
はっきりと高安が分かる価格においてすら、
人によって高く感じたり、
安く感じたりするわけです。

ましてや固定レートと変動レートとの
金利交換スワップや、
元利金が回収できない可能性を問うクレジットリスク、
転売するときの効率的な市場を保証する
流動性リスクの価格への織り込み方、
オプションの価格などは、
客観的な目安を使っていながらも
主観によって大きな幅があります。
だからこそ、買いたい人ばかりだと思われる市場にも
必ず売る人がおり、売り一色と呼ばれるような
市場にも買い手はいるのです。

私たちが客観的と考えているもの、
そんなものは「幻影」です。
私たちは客観視というものの想像はできても、
客観視はできないのです。
蓼食う虫も好き好き、
求めるものや好みが違うと、
おのずから与える評価も違ってきます。
人はまた、自分が見たいようにしか見ないものなのです。
「相場は奥が深い」と言われるゆえんでしょう。

市場は異なった考え方の人々が、
同じ目的で集まって機能していると言えます。

(以上、拙著より)

上記は一般論だが、
ここでは「人はまた、自分が見たいようにしか見ない」
ことの実例を挙げたいと思う。

報道によれば、バルト三国は、
「ロシアのプーチン大統領は、『ロシア帝国』の復活を
本気で目指している。
ウクライナを支配するだけでは満足せず、
NATOにも攻撃を仕掛ける危険がある」との
見方をしているようだ。
第三次世界大戦の恐れがあると言う。

戦争における侵略と防衛の線引きは難しいが、
下記に挙げる事実から「見ると」、
ロシア帝国復活懸念は、
日本の軍国主義復活懸念に似た、
近隣国が自国の軍備増強を正当化する
意図的なものである可能性が高い。

また、仮にNATOへの攻撃があるとすれば、
そこまで追い詰められた結果ではないのか?
何故なら、ウクライナ相手にすら手こずり、
高まる国内の不満を抑え込んでいるプーチン政権に、
米英仏独を含むNATO32カ国を相手にする力などないからだ。

このことは、ロシアへの懸念を殊更強調して、
軍備を急拡大しているNATO諸国の方が、
第三次世界大戦の可能性を高めていると見ることもできる。

バルト三国はロシアに支配されてきた歴史があるので、
この機会にロシアを弱体化させておきたい
思惑があるかもしれない。
しかし、戦争に繋がってしまうと、
ウクライナのように自国の被害も免れない。
いや、NATO相手では、
ロシアはこれまでとは比べ物にならないほど
過激化する可能性が高いのだ。

ここに、ウィキペディアなどを参照し、
ロシア帝国からの歴史を振り返っておこう。

ロシア帝国は、1721年から1917年まで存在した帝国だ。

20世紀初め時点のロシア帝国の規模は
世界の陸地の6分の1に当たる
約2280万平方キロメートルに及び、
当時の大英帝国の規模に匹敵した。

現代のロシア連邦のほぼ全領土に加えて、
ウクライナ、ベラルーシ、モルドバ、アルメニア、
アゼルバイジャン、ジョージア、カザフスタン、
キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、
ウズベキスタン、バルト三国(リトアニア、エストニア、ラトビア)、
フィンランド、ポーランドなどを含んでいた。

このうちロシア、ウクライナ、
ベラルーシ(白ロシアの意味)は同民族(スラブ民族)、
同言語(スラブ語:3方言の違いは関東弁、
関西弁の違いほどもない)、
同宗教(ロシア正教:2018年にウクライナ正教が分離)で、
共にキエフ大公国(ウクライナのキエフ、2022年以降はキーウ)を
歴史的な起源とする。

1917年、ロシア革命によりソビエト連邦が成立、
ポーランド、フィンランド、バルト三国が独立した。

1940年、ソ連はバルト三国が反ソ協定を結んでいると主張、
大軍を送り込んで占領、親ソ派の政権が作られソ連への加入を申請、
ソ連の構成共和国として編入した。

第二次世界大戦では、
米ソ英仏などは連合国として、
日独伊の枢軸国と戦った。

戦後に、米ソが対立。1949年に
12カ国で結成された軍事同盟NATOに対抗し、
1955年にワルシャワ条約機構(8カ国)が結成された。

1991年、ワルシャワ条約機構が解体。
ソ連崩壊。バルト三国やウクライナなどが独立した。

ソ連崩壊に先立ってのワルシャワ条約機構の
「無血解体」は、NATOが東欧に拡大しないとの
約束があったから容認されたとされている。

その後、ロシア連邦内のチェチェン紛争などを経て、

1999年、チェコ、ハンガリー、
ポーランド(いずれも旧ワルシャワ条約機構構成国)がNATOに加盟。

2004年、スロバキア、ブルガリア、
ルーマニア、エストニア、ラトビア、
リトアニア(いずれも旧ワルシャワ条約機構構成国、
あるいは旧ソ連構成国)、
スロベニア(旧ユーゴスラビア構成国)が
NATOに加盟。

その後、
南オセチア戦争(旧ソ連ジョージアとロシア連邦間の戦争)を経て、

2009年、アルバニア(旧ワルシャワ条約機構構成国)、
クロアチア(旧ユーゴスラビア構成国)がNATOに加盟。

2014年、親米勢力による武装クーデターで、
ウクライナに親米政権。

即時にクリミア自治共和国がウクライナからの独立を宣言。
クリミアは約6割がロシア人、ウクライナ人は2割強。
1954年にロシアからウクライナに連邦内移管。
ロシア最大の海軍基地が存在。
ロシアがクリミア併合を発表、
ロシア住民が多数を占める東部諸州と共に、
ウクライナの親米政権と内戦に。

2017年、モンテネグロ(旧ユーゴスラビア構成国)が、
2020年には、北マケドニア(旧ユーゴスラビア構成国)がNATOに加盟。

その後、ウクライナは正教会分離に続き、
NATO加盟申請を憲法で明文化。
ドローン大量生産などで、
対ロシアへの軍備増強を進める。

2022年2月24日、
ロシア正規軍がウクライナに侵攻。
米国主導のロシア制裁開始。
これにより、ロシアと西欧、
日本とのエネルギー協力関係が崩壊。
西欧と日本の対米依存が深化。

2023年、フィンランドが、
2024年には、スウェーデンがNATOに加盟。

どうだろか、ソ連崩壊後は一貫して
ロシアの影響力低下の歴史だ。
こうしたNATO拡大の歴史的な経緯に、
仮にプーチン政権による
ロシア帝国復活への野望が高まっていたとしても、
現実的なものではない。
ここにきてNATOへの攻撃があるとすれば、
これ以上のNATO拡大からの「防衛戦」の様相の方が強くはないだろうか?

何故なら、ロシア連邦は
22の共和国から構成されており、
それぞれ独自の憲法、議会を持ち、
少数民族が独自の言語も持っているからだ。

ソ連崩壊後、旧ワルシャワ条約機構構成国や
旧ソ連構成国が次々とNATOに加盟した。
加えて、共通の民族、言語、宗教、
歴史的背景を持つウクライナですら、
加盟申請(加盟はNATOの方が認めていない)している
現実を捉えれば、ロシア連邦構成国の中に
離反する国が出てきても不思議ではない。
NATO諸国がそうした工作を進めている可能性も低くはない。

つまり、ロシアから見れば、
ロシアを仮想敵国とするNATO諸国は、
ロシア連邦解体を目論んでいると見えるのだ。
これは、ウクライナ侵攻を
プーチンの暴走だとする見方を否定する。
ロシアはプーチン以降も大きくは
変わらない可能性が高い。
解体されたくないのなら、戦い続けるしかないのだ。

ロシア脅威論もプーチン狂人論も、
プロパガンダでないとすれば、
西側諸国が見たいように見ているだけだ。
本質はNATOとロシアのせめぎ合いなのだ。
ロシア制裁もウクライナ戦争も、すべて同じ文脈だ。
日本は日米安全保障条約によりNATOに加担している。
情報もそれに応じてコントロールされている。
ここに是非などない。それが政治だ。

我々一般国民としては、
そうした政治家や経済利益の追及に
手段を選ばない人たちによって、
お互い同士が憎悪を抱いたり、
戦争に巻き込まれることがないよう願うだけではないのか。

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