民主主義とポピュリズム(大衆迎合主義)
こんばんは、矢口新です。
先日、ロシアのプーチン大統領が北朝鮮を訪れ、
同国と相互安全保障協定を結んだと報道された。
ロイターの報道によれば、
もし一方が侵略されたならば、
他方は即座に軍事援助を行うというものだ。
参照:New North Korea-Russia pact calls for immediate military aid if invaded
https://www.reuters.com/world/north-korea-russia-pact-give-all-available-military-help-if-other-is-invaded-2024-06-20/
こうした安全保障条約、あるいは協定は、
第二次世界大戦時の独ソ不可侵条約や日ソ不可侵条約がそうであったように、
必ずしも相手国を完全に縛るものではない。
外交は複雑で、裏には裏があり、
また状況の変化に応じて解釈も柔軟になっていく。
どの国も他国と心中まではしたくないからだ。
同様に、今回のロシアと北朝鮮の相互安全保障協定に、
仮にどんな強い絆を約束する文面があったとしても、
実際に一方が侵略されたならば、他方は即座に軍事援助を行うとは限らない。
その時の事情が許さなければ、
他方は傍観するしかないからだ。
とはいえ、この協定が意味しているところは、
ロシアと北朝鮮の「意志」を明確にしたことだ。
そして、それが日本にとって重要なのは、北方領土問題も拉致問題も、
平和的な外交努力では解決しないことが決定づけられたことだ。
少なくとも今後、10年間は。
ロシアと北朝鮮の同協定の約1週間前、
日本と北方領土問題や拉致問題を抱える両国にとって、
重大な外交上、軍事上の出来事があった。
日本がロシアと交戦中のウクライナと、
10年間の安全保障協定を結んだのだ。
参照:Ukraine, Japan sign 10-year term security agreement
https://www.reuters.com/world/ukraine-japan-sign-10-year-term-security-agreement-2024-06-13/
これまでも日本はウクライナに約80億ドルを含む支援を行ってきたが、今回は正式文書で10年間の安全保障協定に岸田首相とゼレンスキー大統領が署名した。
これはウクライナと運命を共にする意思表示をしたことになる。そのウクライナはロシアと交戦中の当事国なので、はっきりとロシアを敵国と名指ししたことになる。
日本がロシアを「正式に敵視」した答えが、ロシアと北朝鮮の同じような協定だ。これは、日本は自ら北方領土問題と拉致問題の「平和的な」解決を放棄したことを意味する。少なくとも、「平和的な」解決を放棄したのは日本の方だという口実を両国に与えたことになる。
日本に「強圧的な」解決をする気がないとすれば、ウクライナを支援するために、日本は北方領土と拉致された人々を放棄したことになる。日本がこれまで行ってきた何十年もの努力や費用が、たった1つの署名で失われてしまったのだ。
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