【2024年7月8日】江守哲のコモディティコメント
こんにちは、江守哲です。
金相場は1カ月超ぶり高値水準に上昇した。労働市場の軟化を示す 米雇用統計を受け、FRBによる9月の利下げ観測が拡大したことで買われた。金相場は急伸したが、これで地合いが変わったのかを見極める必要がある。すでに十分に買われすぎになっており、ここから持続的な上昇になるかを見極めたい。結局は米金利の低下が材料になっており、これがなければ上昇していたかどうかはわからない。また、この高値水準で新興国が買ってくるかにも注目しておく必要がある。
米金利が下げなくとも、ドルが相対的に下落した場合に金相場が上げていけるかにも注目する必要がある。11日の米CPIの結果はかなり重要なポイントになるだろう。
ロンドン金属取引所(LME)の銅相場は上昇し、一時3週間超ぶりの高値を付けた。米国の利下げ観測が、経済成長への依存度が高い金属相場を支え、週間では7週間ぶりの上昇となる見通し。一時は6月12日以来の高値となる1万ドルを付け、50日移動平均線に当たる9993ドルの上値抵抗線を試した。3カ月物は今週に入って3.6%上昇している。
6月の米雇用統計では、就業者数の伸びは小幅に縮小したが、失業率は約2年半ぶりの高水準となり、賃金上昇も鈍化。労働市場の需給は緩んでおり、FRBはなお年内に利下げを始めるとみられている。
銅は5月20日に投機的な買いで11104.5ドルの史上最高値を付けて以降、10%下落している。この下げにより、最大消費国である中国の需要が一部回復し、輸入銅のディスカウントは5月のトン当たり20ドルから2ドルに縮小した。しかし、在庫の増加が銅の一段高の可能性を抑え込んでいる。上海先物取引所が所管する倉庫の在庫は、今週に入って0.7%増加。LMEの統計によると、LME指定倉庫の在庫も昨年10月以来の高水準となった。
ロンドン金属取引所(LME)は4日、第2四半期の先物・オプションの1日平均出来高が10年ぶりの高水準を記録し、前年同期比27%増の73万0385ロットだったと発表した。急増の理由は明らかにしていない。第2四半期は銅の出来高が27%増、ニッケルは77%急増した。投機筋やファンドの買いで、銅の出来高は5月に過去最高を記録した。ニッケルの出来高は、価格急騰でLMEが取引を一時停止した2022年3月以来低迷していたが、今年に入り回復している。
今週の銅相場は、米インフレ指標や パウエルFRB議長の議会証言などに注目が集まるだろう。こうした材料を手掛かりに米早期利下げ観測が強まれば、金利低下やドル安が進み、非鉄金属相場を押し上げる可能性がある。銅相場はテクニカルファンドによる買いや、弱い米経済指標を受けたドル安などが追い風となり、総じて堅調に推移した。ただし、銅の最大消費国である中国の需要低迷を反映した在庫の積み上がりなどが上値を抑えた。
今週は、中国関連では10日に6月のCPIと卸売物価指数(PPI)、12日に6月の 貿易統計がそれぞれ発表される。これらを材料に動きが出るか、注視したい。そのうえで、銅相場が50日線の1万ドルちょうどの水準を超えていけば、地合いは大きく好転することになるだろう。もっとも、すでに買われすぎになっており、テクニカル面では上昇余地に乏しい。また、在庫の増加傾向は続いており、ファンダメンタルズ面は弱いことを常に意識しておく必要がある。
先週末の原油相場は下落した。パレスチナ自治区ガザで交戦中のイスラエルとイスラム組織ハマスが停戦で合意する可能性が高まっていることが、夏の旺盛な燃料需要やメキシコ湾のハリケーンによる供給混乱の可能性を、相場の材料として上回った。
パレスチナ自治区ガザでイスラエルと交戦するイスラム組織ハマスは3日、停戦案を巡る新たな提案を仲介役に伝達したと発表。イスラエル側は「内容を精査する」と表明した。米政府高官は4日、オンラインの記者会見で「突破口が開かれた」と述べ、停滞していた交渉が再び軌道に乗りそうだとの見方を示した。これを受けて、停戦交渉の行方に期待が広がり、これまで高まっていた地政学的リスクへの警戒感が後退、原油が売られた。
また、相場が前日に2カ月半ぶり高値まで上昇したことで、利益確定の売りも出やすかった。イスラエル首相府は5日、対外情報機関モサドのバルネア長官がガザでの停戦と人質解 放に向けた仲介役、カタールのムハンマド首相との初協議を終え、ドーハから帰国したと発表。交渉は今週に再開される予定。首相府は声明で、両者間には依然として溝が残ると述べた。
一方、対ユーロでドル売りが優勢。ドル建てで取引されるコモディティの割安感につながり、原油相場はプラス圏で推移する場面もあった。6月の米雇用統計では、非農業部門の就業者数は前月比20万6000人増と、市場予想の19万人増を上回った一方で、失業率は4.1%に悪化した。
米石油サービス会社ベーカー・ヒューズが5日公表した同日までの1週間の国内石油の掘削リグ稼働数は、前週から変わらずの479基だった。2021年12月以来の低水準が続いた。 天然ガスは前週比4基増の101基。
サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコは4日、主要油種アラブ・ライト原油について、8月のアジア向け公式販売価格(OSP)を引き下げた。8月のアジア向けOSPは、オマーン・ドバイ産原油の平均価格に1バレル=1.80ドルを上乗せした水準に設定。7月は2.40ドルの上乗せで、8月は0.60ドルの引き下げとなる。
エネルギー情報分析会社ボルテクサなどによると、中国政府は国有石油会社に同国の緊急原油備蓄を800万トン(約6000万バレル)ほど積み増すよう要請した。積み増しが完了すれば、中国では近年最大級の備蓄増強となり、約2カ月ぶりの高値近辺で推移している国際石油価格を下支えする要因となる。備蓄期間は今年7月から来年3月まで。ロイターの推計では、送料は同国の精製処理量4日分に相当し、日量約22万バレルとなる。中国は現在、日量約1100万バレルの原油を輸入している。
関係筋の話では、石油備蓄は国有石油会社の中国石油天然気集団(CNPC)、中国石油化工集団(シノペック)、中国海洋石油集団(CNOOC)、中国中化集団(シノケム)、振華石油の5社が請け負っている。
5日のNY天然ガス相場は4%超安と続落し、7週間ぶりの安値となった。今後2週間の需要が増えるとの予想が買い材料となるはずだ ったが、生産増と貯蔵中の潤沢なガス供給に打ち消された格好。週間では10.8%安と、2月中旬以来の下落幅となった。過去3週間半の価格下落の大部分は、米国のガス生産大手が増産を発表したことが影響したとの指摘がある。これが生産量全体の増加に寄与し、天候要因よりも影響力を示したとの見方がある。
原油相場は一時高値を更新したものの、そこからは下げている。上値トライに失敗したとの見方が強まれば、このまま失速する可能性もある。ファンダメンタルズ面は決して強いとは言えず、中東情勢の不透明感だけがいまの相場の下支え要因ともいえる。繰り返すように、OPECプラスの減産には限界があり、供給を絞ることで相場水準を維持させるにはかなり無理がある。このまま高値圏を維持できないようだと、急落する可能性もある。為替相場などの周辺材料にも目を配っておきたい。
今週の穀物相場は、単収を左右するコーンベルトの天気に注目が集まろう。米国で秋に収穫されるコーンは順調に作付けられたため、現段階で豊作を妨げる重大な問題は浮上していない。12日に公表される米需給報告を控え、週半ば以降は模様眺めムードが強まる可能性もある。
6月1日時点の米農務省の四半期在庫報告によると、コーンは市場予想を上回る規模が確認された。また、2024〜25年度の米コーンの作付面積については、6月28日発表の作付面積報告で、3月公表の作付け意向面積報告のみならず、市場予想の上限をも上回る広さが明らかになった。米クロップ・プログレスによると、6月30日時点で作柄の「優+良」の割合 は67%と、前年同時期(51%)を大幅に上回る水準となっている。7月の重要な受粉期が本格化しつつある中、今のところ2年連続の豊作を予感させる条件が整っており、主産地が高温・ 雨不足に見舞われなければ、相場は上値が重い状況が続きそうである。
8月の米需給報告では例年、初の実地調査に基づくコーンの単収が示される。これを前に、7月の需給報告で24〜25年度の単収が修正される公算は小さい。同報告の内容については「相場の大きな上昇につながる結果を見込んでいない。中立的な内容にとどまる」との予想もある。いずれにしても、米需給報告などの内容をみながら、市場の反応に対処するのが賢明であろう。
コーンは急反発しており、この地合いが続くかを見極めることになる。ただし、あくまで売られすぎの買い戻しにすぎない可能性もあるだけに、慎重に見ていく。大豆は急伸しており、戻り歩調に入っているように見える。ファンダメンタルズ面での支援材料はないものの、値戻りは大きい。まずはどこまで戻せるかを見極める。20日線の1139セントを超えられるかを見極めたい。小麦は気迷いムードである。2日連続で上昇すれば、反発基調に転じる可能性が高まりそうである。
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