【2024年9月9日】江守哲のコモディティコメント
こんにちは、江守哲です。
6日の金相場は、強弱まちまちの米雇用統計を眺めて売り買いが交錯した。8月の米雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比14万2000人増と、市場予想(16万人増)を下回った。また6月と7月の就業者数の伸びが、計8万6000人下方修正された一方、失業率は4.2%と前月から0.1%改善。まちまちな数字が並ぶ中、発表直後は米長期金利が低下し、金相場は一時2529ドルまで上昇した。
ただし、雇用統計を受けて、市場では9月のFOMCで確実視される利下げの幅を巡り見方が分かれ、相場は終盤にかけて狭いレンジ内での取引となった。 FRBのウォラー理事はこの日で、8月の雇用統計について「労働市場の鈍化持続が確認された」と発言。労働市場が一段と減速するリスクが意識される中、17・18日の次回FOMCでの利下げを決定することが重要としたほか、「連続的な利下げが適切な公算が大きい」と明言した。
一方、中国人民銀行が8月に金の購入を見送ったことが7日発表の公式データで分かった。購入見送りは4カ月連続。中国の8月末の金保有量は7280万トロイオンス。ドル建てでは7月末の1766億4000万ドルから1829億8000万ドルに増加した。金価格は今年21%上昇。人民銀行は購入を停止する前は18カ月連続で金を購入していた。人民銀行は昨年、単独で世界最大の金の買い手となった。購入停止を受けて、中国の投資家による金需要もここ数カ月低迷している。
金相場は高値圏を維持している。下値は20日線の2483ドルとなっている。リスクオフの動きでドル高になっており、これが金相場を抑える可能性がある点には留意しておく。もっとも、金買いの需要が徐々に広がっているように見える。投資家心理が悪化し、金を選好する動きもみられている。新興国の金買いが止まる気配もない。下げても実需の買いが入ってくることを考えると、下値不安はほとんどないともいえる。長期的な視点で投資を続けておくことが肝要であろう。
中国の発表では、金購入を見送っていることになっているが、これを真に受けてはいけない。買っていないことを示すことで価格を押し下げ、安くなったところで買おうとしている可能性もある。一方で、中国は世界最大の金生産国でもある。国内で算出された金を保有しておけば、実際に購入していないと公表しても保有はできる。中国はデータ操作など、何でもするだろう。金価格が下がっていないという事実に目を向け、4カ月連続での金購入見送りの報道に惑わされないことである。
6日のロンドン金属取引所(LME)の銅相場は下落した。米雇用統計やドル高が世界経済の成長に対する懸念に拍車をかけた。一時は9175.5ドルまで上昇した。8月の米雇用統計が市場予想を下回ったことが支えたが、今後の利下げの規模や速度に関する見通しが不透明なことからドルが反発。他通貨を保有する買い手にとってドル建て金属に割高感が生じ、銅の急騰は短時間で終了した。銅は週間で2.7%下落。中国で製造業活動が鈍化し、世界経済成長に対する懸念が高まった。
シティは「製造業PMI(購買担当者景況指数)は今後数カ月間、弱い水準にとどまると予想しており、金属価格の大幅な上昇は当面見込めない」と指摘した。
銅相場は反落した。中国景気の先行きへの懸念が根強く、非鉄相場の上値は限られている。市場では、中国の金属需要見通し を占う上で、今週発表の経済指標に注目している。消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)、 14日には鉱工業生産などが予定されている。新規銀行融資の統計発表も控える。これらの指標に市場は一喜一憂する可能性がある。銅相場は長期的なトレンドを示す288日線の8865ドルに近付いている。これをサポートできるかを見極めることになろう。
6日の原油相場は、エネルギー需要先行きに警戒感が広がる中で売られ、5日続落し、23年6月以来の安値を付けた。週間では7.99%安となった。前日までに4日続落した後を受け安値拾いの買いが入り、プラス圏で推移する場面もあった。しかし、OPECプラスが5日、サウジアラビアなど8カ国が取り組む自主的な生産量削減を2カ月延長することで合意したことも下値を支えた。
ただし、中国をはじめとした世界的な景気減速によるエネルギー需要鈍化に対する懸念が根強く、原油相場は次第に値を消す展開となった。米国株が下げ幅を拡大した局面で投資家のリスク回避姿勢が強まり、株式と並ぶリスク資産である原油にも売りが波及した。8月の米雇用統計では、景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数は前月比14万2000人増と、市場予想(16万人増)を下回った。
米石油サービス会社ベーカー・ヒューズが6日公表した同日までの1週間の国内石油の掘削リグ稼働数は483基と、前週比横ばいだった。 天然ガスは前週比1基減の94基と、2021年4月以来の低水準だった。
6日の天然ガス相場は約1%高と続伸し、8週間ぶりの高値を付けた。液化天然ガス(LNG)輸出施設へのガス流入量増加 や、生産量の縮小が相場を下支えした。ただし、穏やかな天候を受けたガスの供給過剰が年 間を通じて上値を抑えている。週間では約7%上昇した。
原油相場は一段安となり、昨年12月の安値も下回り、年初来安値を更新した。これまでも「原油相場には上昇の要因が中東不安しかない」としてきたが、やはり弱い動きになっている。世界の石油需要が増えない状況の中、産油国が減産しなければ需給バランスは維持できる、原油価格の水準も維持できない。コスト面で耐えられない油田は開発や生産が止まり、生産調整が進む可能性もある。そうなれば、多少の戻りも期待できるが、基本的には軟調地合いが続くと考えるべきであろう。
6日のコーンは続落。米農務省の需給報告の発表を翌週に控えた動きや、ファンド筋のポジション解消が売りにつながった。米週間輸出成約高(8月23〜29日)を発表。2024〜25年度の米国産コーンの純成約高は182万2500トンと、市場予想(70万〜140万トン)を上回った。
大豆は6日ぶりに反落。米国産大豆の単収が高水準になるとの観測や今週に入ってからの大口のショートカ バーの動きを受けて、利益確定の売りが出たという。米週間輸出成約高(8月23〜29日)では、2024〜25年度の米国産大豆の純成約高は165万8700トンと、市場予想レンジ(80万〜200万トン)内だった。
コモディティー・ウェザー・グループによると、米中西部全域で少量の降雨になる見込みだが、大豆の単収が最大限に達するような十分な土壌水分の確保という面では、手遅れ なった可能性があるという。一方、7〜9月期に降雨量が増えるとの見方から、24〜25年度のブラジル大豆生産高は、前年度比14%増になる可能 性があるという。
小麦は続落。今週これまでの値上がりを受け、ファンド筋の利益確定売りが優勢となった。週間では2.8%上昇した。米週間輸出成約高で、24〜25年度産小麦は34万トンとなった。市場予想は30万〜60万トンだった。
ロシアのトムスク州知事は、同国が天候による収穫への被害を理由に、同州の農業部門に非常事態宣言を発出したと明らかにした。2024〜25年度(24年7月〜25年6月)のウクライナ穀物輸出は今月6日時点で750万トンと、前年同期の490万トンを上回った。このうち小麦は400万トン。
NYココアは反落。週間では8%下落した。市場では、天候の改善で相場は軟化するものの、 それでも歴史的な高値水準にとどまるとの見方が示された。
NY綿花は続落。株式や原油、穀物市場の弱い地合いに圧迫された。収穫を前に弱気な姿勢が広がっている。
NYコーヒーは3日ぶりに反落。世界的な輸出増やブラジルからの出荷が良好なことが材料視された。米国に拠点を置くブローカーは「8月の速報値で、ブラジル産アラビカ種が約250万袋、ロブスタ種が80万袋と同国産コーヒーの流通は依然良いペースにある」とした。「降雨が予報に現れ始めていることが相場を一段と圧迫しており、さらなる下落の引き金になる恐れがある」との見方も示した。
NY砂糖は下落。週間では2.4%下落した。インド政府関係者によると、同国は2年連続で砂糖の輸出を禁止する方針。生産量が減少するとの見通しを考慮した。一方、ブラジルでの降雨予報は、来年の収穫が増加する可能性があることから、 弱材料とみられている。
今週のコーン・大豆相場は、9月の米農産物需給報告の発表を控える中、様子見ムードが強まる可能性がある。天候要因などを背景に相場は上昇基調をたどっていたが、一段の上値を追うことは難しいとの指摘もある。主産地の乾燥気味の天候が生育に悪影響を与えるとの見通しから、コーン・大豆相場は値を上げた。米国内のコーンと大豆の約25%が乾燥した天候のストレスを受けているという。これらから、買いが優勢となってきた。
米農務省が12日公表する需給報告では、コーンの単収が引き下げられるとの観測が浮上している。コーンベルト東側の大半の地域で8月の降水量が例年の6〜7割の水準にとどまったことが背景にあるという。見通しの引き下げは通常、相場の支援材料となるものの、仮に下方修正されたとしても大豊作の状況に変わりはなく、相場が大きく動かない可能性もある。
大豆については、中国がカナダ産菜種の関税を引き上げるとの見方や、米国内の底堅い需要が相場を支えてきた。ただし、需給報告で単収が上方修正されるとの観測が浮上する中、一段の需要拡大が進まなければ、相場の上昇基調はいったん収まる可能性もある。
コーンは50日線の388セントを割り込んだ。目先の高値を付けた可能性もある。すでに十分に買われすぎになっており、下げ余地が大きい点には要注意であろう。20日線の378セントで下げ止まるかを見極める。大豆は結果的に50日線の1031セント超えに失敗した。買われすぎであり、目先は20日線の993セントを目指す可能性がある。小麦も下げた。高値を更新できずに下げており、目先の天井を付けた可能性がある。すでに買われすぎでもあり、50日線の542セントまで下げる可能性がある。
なお、投資判断はご自身の責任で行ってください。
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