【2024年11月18日】江守哲のコモディティコメント
こんにちは、江守哲です。
15日の金相場は、堅調な米小売売上高などを受け、米利下げペースの鈍化に警戒感が強まったことから売られた。10月の米小売売上高は前月比0.4%増と、市場予想の0.3%増を上回った。堅調な消費動向を受けて、FRBによる利下げペースが鈍るとの見方が改めて広がり、金の上値を抑えた。
パウエルFRB議長は前日、米景気について「きわめて好調で、世界の主要国の中でずばぬけて良い」と分析。今後の政策金利については「指標と経済見通し次第」と強調した一方で、利下げを急ぐ必要はないと明言した。これらが金相場の圧迫要因となった。ただし、2カ月ぶりの安値水準で推移していることから安値拾いの買いも入り、下値は限定的となった。為替市場では対主要通貨でドル高基調が一服。ドル建てで取引されるコモディティの割安感につながり、金相場を支えた。
金相場は下げたが、下げ止まりの動きも見え始めている。すでに十分に売られすぎになっているため、短期筋の売りが止まればこれ以上の下げは想定しづらい。また、トランプラリーの影響でドルが買われてきたが、これも一服すれば、金を売る理由はなくなるだろう。この日はかろうじて100日線の2547ドルを維持した。テクニカル面で下げ止まりの様相を見せれば、反発の可能性も出てきそうである。もっとも、金に対しては超長期的な視点が不可欠である。目先の動きはノイズである。
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15日のロンドン金属取引所(LME)のアルミ相場は急騰した。中国が輸出税還付を取りやめると発表したことを受け、海外への大量出荷が抑制されるのではないかという懸念が広がった。一時8.5%高の2730ドルまで上昇した。中国財政省はこの日、アルミおよび銅製品に対する輸出税還付を12月1日より停止すると発表。還付金がなくなれば、中国国内により多くの金属がとどまることとなり、国外の市場が逼迫する可能性があるという。
中国財政省は15日、来月1日から広範な品目や製品について、輸出税還付の削減や撤廃を実施すると発表した。一部石油製品と太陽光発電装置、電池、特定の非金属鉱物製品について、還付率を13%から9%に引き下げる。また、アルミ製品と銅製品、微生物由来の油脂などに対する還付を撤廃する。これを受け、中国産アルミ輸出が抑制されるとの懸念から、アルミ相場が急騰。中国の使用済み食用油も対象となるとみられ、米国の大豆油相場の高騰にもつながった。
JPモルガンによると、中国は毎年400万〜600万トンの半加工アルミを輸出しており、世界の供給量の約7%に相当する。
銅相場はトランプ氏が掲げる政策を背景としたドルの先高観が広がる中、米利下げ観測の後退も重なり、 上値の重い展開が続くとの見方がある。ただし、急速に進んだドルの高値警戒感から、調整が入るとの見方も出ており、ドル相場に左右される可能性が高い。トランプ氏が掲げる保護主義的な追加関税などが中国を含む貿易相手国に打撃を与えるとの見方が広がり、ドル高が進む中で銅相場の下落が続いた。その後はドル高一 服や中国の輸出税還付の取りやめ方針を受け、やや持ち直した。
一方、中国の長引く不動産市場の不況に歯止めをかける大規模な追加刺激策への期待は高まっており、当局の動向に注目が集まる。20日に中国人民銀行による最優遇貸出金利の発表がある。この結果にも要注目であろう。この日の銅相場は一時大きく値を上げたが、アルミの急伸の影響だろう。高値からかなり下げており、地合いの悪さを感じさせる。すでに十分に売られすぎになっているため、一段安の可能性は低いと考えられるが、引き続き警戒は必要であろう。
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15日の原油相場は、中国など世界の石油需要の先行きに懸念が広がり、4日ぶりに反落した。9月上旬以来、約2カ月ぶりの安値を付けた。週間では4.77%安。中国の10月の鉱工業生産は前年同月比5.3%増と、伸びが前月(5.4%増)から減速したほか、市場予想(5.6%増)を下回った。10月の同国石油精製量も4.6%減と低調な内容となった。これを受け、エネルギー消費大国である中国の需要減退への警戒感が高まり、原油は売りが優勢となった。
一方、アゼルバイジャンで開催中の国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)で国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は15日、「世界の石油需要が弱まりつつ」とし、「中国経済の成長鈍化や世界規模での電気自動車(EV)の普及が主因だ」と指摘した。世界的な石油需要懸念のほか、パウエルFRB議長が前日に「利下げを急ぐ必要はない」と発言したことを背景に、FRBによる利下げペースが想定よりも緩やかになるとの見方も引き続き相場を圧迫した。
米石油サービス会社ベーカー・ヒューズが15日公表した同日までの1週間の国内の石油掘削リグ稼働数は1基減の478基と、今年7月19日以来の低水準だった。天然ガスも1基減の101基。
国際エネルギー機関(IEA)は14日に公表した月報で、OPEC加盟国とロシアなど非加盟の産油国で構成する「OPECプラス」の減産が継続しても、2025年は世界的に石油の供給過剰が予想されるとの見通しを示した。米国などOPECプラス非加盟国の増産が需要を上回ることが背景。世界生産量の1%以上に相当する日量100万バレル超の供給過剰となる見込みで、OPECプラスの増産開始計画にとっては不利な状況となる。
今年、世界需要は予想より軟調に推移しているが、その主な原因は中国である。中国は長年、石油消費の伸びをけん引してきたが、経済的課題や電気自動車(EV)への移行を背景に同国の石油需要成長見通しは鈍化している。IEAは「中国の減速が需要を下押ししている」と指摘した。
また、IEAは25年の世界石油需要の伸びについて、ほぼ変わらずの日量99万バレルと見込んだ。OPECプラスに加盟していない米国とカナダ、ガイアナ、アルゼンチンなどの国々は供給を日量150万バレル増やすと予想。需要の伸びを上回る見通しとなった。OPECプラスは今月、原油相場の下落を受けて増産開始を再び延期した。ただし、IEAは「OPECプラスが減産を継続しても、来年の世界供給量は需要を100万バレル超上回る」との見方を示した。
ロシアのトゥアプセ、イルスキー、ノボシャフチンスクの3製油所がこの数カ月、稼働停止や生産削減を迫られ、閉鎖の危機にある。輸出規制による多額の赤字や原油価格上昇、高い借り入れコストが背景となっている。製油所関係者5人が明らかにした。ロシアの製油業界は、ウクライナのドローン攻撃や西側諸国の対ロ制裁で苦境に陥っている。 製油所の危機によって燃料輸出が減少し、製油会社の収益は減少。物価高やエネルギー市場が不安定な中、国の歳入も減少している。
ナイジェリア国営石油会社NNPCは14日、石油生産を日量180万バレルに拡大したと発表した。年内に日量200万バレルに増産する可能性もあるという。OPECの最新の報告書によると、ナイジェリアの10月の生産は日量130万バレルと推計されている。NNPCは、治安当局や政府、協力企業との提携促進が増産につながったと説明した。
ナイジェリアは、原油の盗難や治安の悪さなどで増産が阻まれていた。NNPCは6月、原油の盗難を防ぐために協力企業、政府、民間警備員の取り組みなどを調整する対策室を設置。違法業者の逮捕などの成果につながった。
15日のNY天然ガス相場は約1%高と反発。液化天然ガス(LNG)輸出施設へのガス流入量が10カ月ぶりの高水準に増加し たことや、欧州のガス価格が直近で11カ月ぶりの高値に急騰したことに支えられた。
原油相場は急落した。結局のところ、買い材料がないということであろう。すでに売られすぎになっているため、一定の反発の可能性もあったが、それでも戻せないところに原油市場の根本的な弱さが感じられる。こうなると、原油相場は根本的に上がらないことを前提に見ていくことが不可欠である。世界の石油需要の伸びの鈍化とOPECプラス以外の産油国の増産見通しは、世界の石油需給が緩和の方向に進むことを意味する。ドル安ぐらいしか反転の材料がないのが実態であろう。
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15日のコーンは5日ぶりに反発。トランプ次期米政権がバイオ燃料産業に非友好的な姿勢を示せば、国内需要の減退を招くとの見方から、相場は前日まで4日続落。この日は反動でテクニカルな買いが入った。週間では1.62%下落した。米週間輸出成約高(1〜7日)によると、米国産コーンの今年度の純成約高は131万5100トンと、予想レンジ(125万〜260万トン)内だった。
大豆は5日ぶり反発。中国が使用済みの食料油の輸出に適用している優遇策を一部削減すると表明したことで、 米国への輸入が抑制されるとの見方が台頭した。週間では3.1%安。 中国財政省は15日、12月1日付で「化学的に調整された動物や植物などの油脂」を 含む商品に対する輸出税の払戻額を縮小したり中止したりすることを検討していると発表した。
アナリストによると、中国からの輸入使用済み食料油の利用が広がり、米国のバイオ燃 料需要の足かせとなってきた。中国からの使用済み食料油の輸出ペースが鈍化すれば、バ イオ燃料の需要を押し上げる公算が大きい。大豆などを原料とするバイオ燃料に反対姿勢のリー・ゼルディン氏がトランプ次期米政権の環境保護局(EPA)長官に指名されたことで、輸出入の需要に及ぼす影響への警戒 感が広がり、大豆相場は今週に入り軟調に推移していた。
小麦は5日ぶりに反発。今週はドルの上昇が続き、小麦は数カ月ぶり安値水準に下げていたが、この日はテクニカル主導で値を戻した。週間では6.30%下落した。小麦はドルの急伸を受けて8月下旬以来の安値水準に下げた。トランプ前米大統領の大統領選勝利、米インフレ指標、パウエルFRB議長の発言で米利下げペース鈍化の見方が強まり、ドルを押し上げた。 ドルが高いと米国の輸出品は他通貨保有者から見て割高になり、国際競争力が低下する。
NYココアは反落。ただし、西アフリカにおける作 物に不都合な天候が相場を支えた。BMIは「ガーナとナイジェリアの一部地域で平均を下回る降水量と平均を上回る気温を記録するなど、西アフリカの天候不順が最近の強気な値動きを下支えた」 と説明した。
NY綿花は続落。ドル高に圧迫された。このほか、米農務省が発表した週間輸出成約高がさえない内容だったことや、金融・商品市場全般の弱い地合いも嫌気された。
NYコーヒーは続伸。ブラジルの来年の作物は今年の乾燥した天候を受けて収穫高のポ テンシャルが幾分低下した。最近の降雨にもかかわらず土壌の水分量は依然として低い。
大豆は作付けが進む南米の天候が引き続き材料視される中、来年1月に発足するトランプ新政権の人事の動向にも注目が集まる。加えて、トランプ氏の経済政策によりインフレが再燃するとの観測からドル指数は上昇しており、引き続き米穀物相場の重石になりやすい。11日には、トランプ氏が次期政権の環境保護局(EPA)長官にゼルディン元下院議員を起用すると発表した。ゼルディン氏は自動車用バイオ燃料の推進に否定的な立場で、その原料となるコーンなどに下落圧力がかかった。
また、トランプ政権1期目で通商代表部(USTR)を率いたライトハイザー氏が通商関連の重要ポストに就くと取り沙汰されている。実現すれば中国との貿易摩擦が激化し、穀物輸出に悪影響を及ぼすとの見方から相場を押し下げる可能性がある。中国は米大豆の最大の輸出市場だが、1期目には米中貿易戦争が勃発。中国は米国産の代わりにブラジル産の輸入を大幅に拡大する結果をもたらした。
再び貿易紛争が起きれば、ブラジルなどが再び漁夫の利を得る結果を招きかねないと指摘するアナリストは多い。また、中国との対立が激化すれば、トランプ氏らがメキシコに対して米農産物の輸入を拡大するよう圧力をかけるとの見方もある。一方で南米の天候が引き続き注視されるが、ブラジルとアルゼンチンでは乾燥天候懸念から一転、十分な雨量に恵まれ、大豆の作付けが急ピッチで進んでいる。来春には大豊作が見込まれるとの指摘もある。
15日の相場では、コーンは反発した。20日線の417セント、50日線の416セントを維持しており、このまま反発基調に転じる可能性もある。大豆も値を戻している。すでに売られすぎになっているため、20日線の1001セントを回復すると、大きく値を戻す可能性もある。小麦も反発した。すでに売られすぎになっており、まずはどこまで戻せるかを見極めることになろう。
なお、投資判断はご自身の責任で行ってください。
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