【2024年12月2日】江守哲のコモディティコメント
こんにちは、江守哲です。
29日の金相場は、米金利とドル指数の低下を背景に買いが優勢となった。月末を前に為替市場ではポジション調整のドル売りが進行し、米10年債利回りは4.2%台を割り込んだ。これを受け、ドル建てコモディティに割安感が生じたほか、利子を生まない資産の金の投資妙味が増したとして、資金を振り向ける動きが継続した。ただし、この日は米感謝祭休場明けで動意に乏しかった。
11月の金相場は、5日の米大統領選でトランプ前大統領が勝利し、財政拡張策を通じた金利高止まりへの警戒から、金相場は大幅下落した。中旬以降はウクライナ情勢の緊迫化に伴い、安全資産としての需要から見直し買いが入ったものの、下旬に中国、カナダ、メキシコへの関税引き上げ方針が発表されると再び 売り込まれるなど、全般に荒い値動きとなった。
金相場は徐々に下値を切り上げている。ただし、20日線の2667ドルと50日線の2669ドルが重石になっている。これを超えるかどうかで次の動きが決まるだろう。超えると再び上昇基調が強まりそうだが、まずは月初の動きを見極めたい。12月のゴールドは上昇しやすい傾向があるが、これもドルや米金利の動き次第であろう。とはいえ、我々がみているのは、そのような短期的な話ではない。根本的なドルの価値の低下を背景とした金相場の歴史的な上昇はまだまだこれからである。
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29日のロンドン金属取引所(LME)の銅相場は小幅に上昇した。金属消費大国である中国の需要増加の兆候が支えたものの、米国の追加関税の可能性を巡る不透明感が上値を抑えた。足元ではファンダメンタルズは堅調なものの、関税の行方がわからないため、市場は慎重になっているとの指摘がある。トランプ次期米大統領は関税を課すと警告しており、特に中国の経済成長と金属消費に打撃となるとみられる。
中国は財政刺激策として資金の一部を投入する前に、関税がどれほどの悪影響を及ぼすかを見極めるまで様子見の姿勢のようにみえる。ただし、中国では明るい兆しも幾分出ている。上海先物取引所の銅在庫は6月初旬から3分の2減少し、10万8775トンと、今年2月5日以来の低水準となった。 また、市場では、今後発表される経済指標で中国の景気刺激策が浸透し始めていることが示されるとの期待感も広がっている。
海外アルミ生産各社は、2025年1〜3月期の出荷分について、日本の買い手に対し、トン当たり230〜260ドルの割増金(プレミアム)を提示している。関係者3人が29日、語った。24年10〜12月期より31〜49%割高となる。日本はアジアの主要な金属輸入国。日本の買い手が、ロンドン金属取引所(LME)の現物価格に対して上乗せして支払うプレミアムは、アジア地域の指標となっている。24年10〜12月期のプレミアムは、7〜9月期比1.7%高のトン当たり175ドルだった。
中国がアルミ半製品の輸出税還付を廃止すると発表し、アジア地域での供給懸念が広がったことをプレミアム引き上げの理由に挙げた企業もある。日本の商社関係者は「強気な提示、とりわけ260ドルという価格設定には驚いている」と語った。 別の関係者は、「国内需要は低迷しており、国内の現物価格は180〜190ドル近辺にある中、提示価格は高すぎる」と述べた。
ロンドン金属取引所(LME)は28日、来年の手数料を平均で4.7%引き上げると発表した。平均13%だった今年の値上げは下回る。具体的には、取引や決済にかかる手数料を0〜6.5%引き上げる。LMEは声明で「物価高の反映に加え、市場強化に向けた投資を支えるために複数の手数料を引き上げる」と説明した。
ただし、現物市場を支えるため、立ち会い取引の手数料は引き上げないという。 また、LMEは電池用金属の取引で競合の取引所に後れを取っていることから、リチウムとコバルトの先物取引の手数料免除は延長する。
銅相場は、12月の米利下げ観測の高まりを背景にドルが軟化する中、底堅く推移する可能性がある。市場では中国の需要増加に対する期待感が広がっており、景気指標が好調であれば買い意欲が強まるとみられる。先週はトランプ次期米大統領が中国に対する追加関税を警告し、銅相場は下落した。ただし、中国政府が景気刺激策を打ち出すとの見方が出るなどして買いが優勢となり、持ち直した。
中国当局が30日に発表する11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が銅需要の先行きを見極める上で注目される。この結果が今後の相場動向を左右する可能性がある。また、11月の財新・中国製造業PMIとISM米製造業景況指数が12月2日に発表される。6日にはFRBの金融政策の行方を占う11月の米雇用統計が控える。これらの材料が、銅相場のみならず、金融市場全体に影響を与えるだけに、注目せざるを得ない。
銅相場はきわめて狭いレンジでの推移が続いている。さすがにこのような動きは続かないだろう。テクニカル面では上昇余地があるだけに、まずはその可能性を見ておく。上昇するには、まずは288日線の9101ドルを明確に上抜くことが肝要である。そのような動きになるかは上記の材料次第であろう。ドル安になれば買いが入る可能性があるが、まずが経済指標の結果と市場の反応を見極めたい。年末に急伸するのかは不明だが、指標次第では興味深い値動きが見られそうである。
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29日の原油相場は、イスラエルとレバノンの停戦合意の実効性に対する懐疑的な見方を背景に買いが先行したものの、その後は利食い売りに押されて4日続落した。イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの停戦が27日に発効したが、イスラエル軍は28日、レバノン南部にあるヒズボラの関連施設を同日に空爆したと明らかにした。両者は互いの停戦違反を主張していることから、停戦合意の履行について不透明感が拡大した。週間でWTI原油は4.5%下落した。
その後は買いが優勢となり、一時69.70ドル付近まで上昇した。ただし、70ドルを前に買いが息切れすると、利益確定の売りが出たもようでマイナス圏に沈んだ。米エネルギー情報局(EIA)は29日、9月の国内の原油生産が前月比日量15万7000バレル減の同1320万バレルになったと報告した。減少幅は今年1月以来の大きさとなった。
ロイターは関係筋の話として、OPEC加盟国とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」は、来年1月に開始を予定していた減産幅の縮小について、1〜3月期中は延期することを協議していると報じた。12月1日に当初予定されていた閣僚級会合は5日に延期された。
レバノンの通信社は29日、イスラエル軍の戦車4両がレバノン国境の村に入ったと報じた。27日に発効したイスラエルとレバノンの停戦は、双方が停戦合意への違反があったと主張しているものの、原油のリスクプレミアムは縮小し、相場は下げている。ただし、この中東の紛争は供給混乱につながっていない。供給は25年により潤沢になると予想されている。国際エネルギー機関(IEA)は、世界生産量の1%以上に相当する日量100万バレル超の供給過剰を見込む。
米石油サービス会社ベーカー・ヒューズが30日までに公表した国内石油の週間掘削リグ稼働数は、前週比2基減の477基と、今年7月以来の低水準だった。 天然ガスは1基増の100基。
ロシア石油最大手ロスネフチは29日、同社が保有する製油所の刷新計画について、金利上昇と増税を受け、延期する可能性があると明らかにした。
複数の業界関係者は今月、輸出制限や原油価格の高騰、借り入れコスト上昇を受け、ロスネフチ保有のトゥアプセ製油所を含む少なくとも国内3カ所の製油所が、原油処理の一時停止や稼働率の引き下げを余儀なくされていると話していた。 ロスネフチは「株主の利益を保護し、損失を回避するため、製油所の刷新プロジェクトを停止する必要を検討している。同時に、品質の高い石油製品の国内需要への対応は引き続き優先事項だ」と述べた。
29日のNY天然ガス相場は約5%高と反発。気温低下の予報を受け、暖房需要が増加すると見込まれた。天然ガス相場が反発しているのは、ここ数年とは対照的に冬の寒さが戻りつつある状況が要因。供給は米国のみならず欧州でも数年ぶりの速いペースで減少しており、冬の寒さが続けばエ ネルギー不足に陥るとの不安が再燃している。
ロンドン証券取引所グループ(LSEG)の暫定データによると、米国の主要液化天然ガス(LNG)生産・輸出プラントへの天然ガス供給量が29日、過去最高近辺まで急増した。気温低下や施設の再稼働が背景にある。LNGプラントへの天然ガス供給量は29日、146億立方フィートに上ったとみられる。前日の145億立方フィートから増加し、2023年12月に記録した過去最高の147億立方フィートに迫った。
全米でLNG生産2位のフリーポートLNGプラントへの29日のガス供給量は推計20億立方フィート強。前日は19億9000万立方フィートだった。4日間停止していた液化生産施設3基が稼働を再開したとみられる。
米最大のLNG輸出業者であるシェニエール・エナジーの2施設はほぼフル稼働。ルイジアナ州にあるサビンパスLNGプラントへの29日のガス供給量は推計52億立方フィートと、過去3番目に多かった。 米国は世界最大のLNG輸出国。数週間後には二つのLNGプラントが生産を開始する。
EU欧州委員会は29日、2025年2月1日までの域内のガス備蓄について、最低でも満量の50%を維持する目標を草案に盛り込んだと明らかにした。今冬は寒くなるとの予想や欧州向けロシア産ガスの供給停止が懸念される中、安定供給を確保する。
欧州委は草案で「2月のガス備蓄目標を最低でも平均50%程度に設定することで、需要の高い24年12月〜25年1月の備蓄からのガス供給力を高水準で維持し、安定供給強化を目指す。今冬が例年より寒くなった場合、これは特に重要となる」と説明した。
天気予報によると欧州の今冬はロシアのウクライナ侵攻以降で最も寒い冬となる可能性があり、液化天然ガス(LNG)の需要が押し上げられ、エネルギーコストは高止まりすると予想した。EUのガス備蓄はこのところ、北西部が寒波に見舞われているため急速に減少している。
原油相場は続落しているが、テクニカル面では売られすぎになっている。ここから一段安になっても、直近安値の67ドル前後では下げ止まりそうである。この水準の下を売り込むのはあまりうまみがないように思われる。もっとも、繰り返すように、原油相場には買い材料がない。そんな中で、トランプ次期大統領が原油増産を促すとみられており、ますます需給は緩和する可能性がある。前回のトランプ政権下では原油価格は横ばいだった。今回もそうなるかを見極めることになろう。
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29日のコーンは上昇。米感謝祭の休場明けにポジション調整が強まる中、テクニカル主導な買いや、年末にかけて季節的にみられる上昇トレンドが背景にあったという。国際市場での米国産の競争力強化につながるドル安も相場の支援要因 になったもよう。ブラジルとアルゼンチンのにわか雨が 引き続き作物の生育を促進しており、これも米国産コーン相場の圧迫要因となった。米コーンの今年度の純成約高は106万2900トン となり、予想レンジ(80万〜200万トン)内だった。
大豆は小幅続伸。テクニカル主導の買いと相次ぐ輸出需要が相場を支援したもよう。ブラジルとアルゼンチンでのにわか雨が、豊作とされる作物の生育を引き続き促す中、米国産大豆相場は圧迫されたという。コモディティー・ウェザー・グループは、南米での降雨は作物の生育を引き続き後押しすると述べた。国際市場での米国産の競争力強化につながるドル安も相場の支援要因になった。
米週間輸出成約高(15〜21日)によると、米大豆の今年度の純成約高は249万0500トンと、予想レンジ(150万〜240万トン)を上回った。米農務省は29日、仕向け地不明で2024〜25年度渡しの米大豆合計99万1700トンの民間輸出があったことを確認した。
小麦は激しい値動きとなる中、続落。アナリストによれば、ロシアとアルゼンチンが世界市場で、小麦を割引価格で販売していることが引き続き重石となった。米国産小麦の天候条件は依然として良好で、寒波がダメージを与えるとの懸念は今のところ、プレーンズの最北部に限られるという。米週間輸出成約高で、24〜25年度の米国産小麦は36万6800トンと、アナリスト予想(20万〜60万トン)の範囲内だった。
NYココアは反発。一時5カ月ぶり高値となる9520ドルを付けた。今年4月には主要産地であるコートジボワールとガーナでの不作を受けて供給が引き締まり、過去最高値となる11722ドルを付けた。
NY綿花は続伸。週間輸出成約高の好調な内容やドル安が相場を支援した。
NYコーヒーは7日ぶり反落。ただし、一時1977年以来の高値となる335. 45セントを付けた。主要生産国ブラジルでは今年度の干ばつの影響で、来年度の収穫量が完全に回復するのが難しい状況となっている。これを受け、供給が引き締まり、相場を押し上 げた。ブラジルの一部農家はさらなる値上がりを期待して、今年度に収穫されたコーヒー豆の出荷を遅らせている。短期的な供給不足が起きているほか、納品を見込んでいたトレーダーに大きな金銭的損失が生じているという。
アラビカ種の価格は年初来で約71%上昇している。価格が2倍超になっている ココアと並んで、最も好調なコモディティの一つとなっている。
今週のコーン・大豆相場は、上値が重い展開が予想されている。トランプ次期大統領が中国製品などの関税を引き上げると宣言したことや、南米産の豊作見通しが背景にある。トランプ氏は25日、中国製品に10%の追加関税、メキシコ・カナダ製品に25%の関税を課すと宣言した。貿易関係の悪化に伴い中国など対象国が米国との取引を再考し、米国産穀物の需要が減退するとの懸念がくすぶっている。
米国産コーンの需要は底堅さを保つ一方、トランプ氏返り咲きで貿易が混乱するリスクを回避する思惑から、一部の買いは政権発足を見越したものとされている。関税引き上げは輸入価格上昇を通じ、米国内のインフレを再燃させるリスクを抱える。 この場合、FRBによる利下げペースが鈍り、他国との金利差 が開いたままの状態が続き、ドル高が進行する可能性がある。ドル高は、ドル建てで取引 される米国産穀物の輸出に逆風となる。
南米でここ数週間、雨が降ったことで大豆・コーンの収穫が上向くとの見方も相 場の弱材料となる可能性がある。小麦についてはロシアがインフレに対処するため、来年の輸出 枠を削減する政策が強材料になるとの見方もある。
これらの材料を市場がどのように判断するのかを見極めることになろう。
コーンは上昇したが、20日線と50日線が位置する433セント水準では打たれている。売られすぎの状況にあることから、これを超えると大きく上昇する可能性は十分にある。大豆は反落している。売られすぎからの戻りを試す状況にあるが、20日線の997セントを超えるかが目先のポイントになりそうである。小麦は小動きである。一時安値を更新したが、このまま下げていくのか、あるいは売られすぎからの反発に向かうのかをみきわめることになろう。
なお、投資判断はご自身の責任で行ってください。
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