【2025年7月14日】江守哲のコモディティコメント
こんにちは、江守哲です。
【貴金属市場の市況解説】
金:3355.484(+32.79)<+0.99%>
銀:38.365(+1.34)<+3.61%>
プラチナ:1398.53(+37.79)<+2.78%>
パラジウム:1215(+73.09)<+6.4%>
11日の金相場は3日続伸した。新たな米関税措置の通知を受け貿易戦争への警戒感が高まる中、リスク回避の買いが膨らんだ。トランプ米大統領が10日、カナダに35%の関税を課す書簡を公表し、他の貿易相手国・地域にも「15〜20%」の税率を示唆したことで、世界的な貿易戦争拡大への懸念が再燃した。これにより、投資家は「質への逃避」として金への買いを加速させた。
FRBによる年内の政策金利引き下げ期待も金の支援要因となった。ウォラーFRB理事が10日、今月末のFOMCで「利下げを検討することは可能」と発言したことが材料視されている。
【貴金属のトレード戦略の考え方】
金相場は久しぶりにしっかりと上昇した。この日の動きで20日線の3339ドルを上抜けてきた。このまま上昇基調が続けば、上昇基調がより鮮明になりそうである。ドル高基調の中で上げているところを見ると、投資家はトランプ関税に対するリスク回避の動きを見せているとも言えそうである。いずれにしても、まずは週初の動きを確認したい。7月からは上昇しやすいシーズナリティがあることも再確認しておく。銀相場とプラチナ相場も勢いづいてきた。面白いことになりそうである。
【貴金属/中期トレンド判断(参考)】
<コア>
金:上昇
銀:上昇
<サテライト・参考>
プラチナ:上昇
パラジウム:上昇
【非鉄市場の市況解説】
アルミ:2602(-4)<-0.15%>
銅:9663(-19)<-0.2%>
ニッケル:15235(-50)<-0.33%>
亜鉛:2738(-39)<-1.4%>
鉛:2017(-20)<-0.98%>
COMEX銅:5.562(+0.014)<+0.25%>
<LME在庫(前日比)>
アルミ:400275トン(+4550トン)
銅:108725トン(+625トン)
ニッケル:206178トン(+1440トン)
亜鉛:105250トン(-350トン)
鉛:249375トン(-3000トン)
11日のロンドン金属取引所(LME)の銅相場は下落した。米国が輸入銅に課す予定の50%関税が、今後の銅需要を抑制するとの投資家予想が売りにつながった。投機筋のポジション解消も相場の下落要因となった。市場では、米国での懲罰的な関税導入が需要を抑制するとの指摘がある。また、これまで強気だった投機筋がポジションの見直しを迫られているとし、LME銅が1トン=9000ドル、あるいはそれ以下に戻る可能性も示唆されている。
COMEX銅先物は、50%の関税が発表された後に史上最高値の1ポンド=5.90ドルを記録したが、11日は5.59ドルと前日とほぼ横ばいだった。COMEX銅のLME銅に対するプレミアムは1トン当たり2663ドルとなった。アナリストによると、米政府が2月に輸入関税調査を開始して以来、投機筋が米市場の銅価格を押し上げてきた。しかし、投資家が関税回避のために今年に入ってほぼ1年分の銅を米国に輸出したため、在庫が積み上がり、COMEX価格が押し下げられている。
【非鉄金属のトレード戦略の考え方】
今週の銅相場は、来週はドル高を背景に売りが優勢になると予想されている。米国の輸入銅に対する50%関税の価格織り込みは徐々に進むとみられるものの、関税政策の詳細に関する新たなニュースや発言があれば、内容次第で相場の調整が入る可能性もある。先週の銅相場は、トランプ米大統領による高関税政策を背景に下落した。貿易相手国への高関税通知を受けてドル高が進行する中、銅に対する50%の輸入関税導入発表が追い打ちをかけ、銅相場は沈んだ。
COMEX銅とLME銅の価格差が現在約2500ドルに達している。関税発表前の価格差は500〜1500ドルで推移していた。この価格差がどう動くかは、50%関税が一律に課されるか、あるいは一部の国が適用除外となるかにかかっている。また、50%関税が導入されれば、価格上昇による「需要破壊」が生じ、COMEX銅のプレミアムも縮小されるとの見方もある。銅相場は相変わらずこう着相場だが、そろそろ動きが出てきてもおかしくないだろう。これはアルミ相場も同じである。
一方、今週は重要経済指標の発表が相次ぐ。15日は 中国の4〜6月期GDP、6月の米消費者物価指数(CPI)が発表される。16日は6月の米卸売物価指数(PPI)が発表される。18日には米ミシガン大消費者信頼感指数が発表される。さらに、中国の景気動向を占う6月の新規銀行融資も今週中に発表される見通しである。
【非鉄金属/トレンド判断(参考)】
<コア>
アルミ:上昇
銅:上昇
<サテライト・参考>
ニッケル:下落
亜鉛:中立(短期強気)
鉛:上昇
【エネルギー市場の市況解説】
WTI原油:68.45(+1.88)<+2.82%>
ブレント原油:70.36(+1.72)<+2.51%>
RBOBガソリン:2.187(+0.0346)<+1.61%>
ヒーティングオイル:2.4474(+0.0639)<+2.68%>
天然ガス:3.314(-0.023)<-0.69%>
11日のNY原油相場は反発した。週間では2.16%高となった。前日の米高関税政策に対する警戒感による大幅安の反動で、この日は安値拾いの買いが入り、相場は堅調に推移した。短期的な需給引き締まり観測が相場を下支えした。国際エネルギー機関(IEA)は、旅行や発電向けの利用に伴う夏の製油所稼働のピーク需要により、世界の石油市場が見かけよりも逼迫している可能性があるとの見方を示した。
OPECプラス関連では、ロシアのノバク副首相が8月から9月にかけてOPECプラスの割当枠超過分を完全に相殺する意向だと伝えられた。また、サウジアラビアの8月の中国向け原油輸出が2年超ぶりの高水準に増加する見通しと報じられた。
サウジアラビアのエネルギー省は11日、6月の原油生産が、自主減産分を含めた「OPECプラス」の生産目標を完全に順守したと発表した。市場への原油供給量は日量935万2000バレルで、合意に沿っていると説明した。一方で、国際エネルギー機関(IEA)は今月、サウジアラビアの6月の原油生産量が980万バレルと、OPECプラスの目標を43万バレル上回ったと報告していた。
これに対し、サウジのエネルギー省は声明で、生産が一時的に供給を上回った分は、国内外で販売せずに戦略備蓄に振り分けたと釈明。生産と供給の両方をOPEC事務局に透明性をもって報告していると強調した。
国際エネルギー機関(IEA)は11日に発表した月報で、世界の石油市場は供給過剰を示しているものの、実際にはより引き締まっている可能性があるとの見解を示している。これは、夏の旅行や発電需要に対応するため、製油所が稼働率を引き上げていることを理由としている。
IEAは今年の世界の原油供給量が日量210万バレル増加すると予測し、前回予想から30万バレル上方修正した。一方、世界の需要は日量70万バレル増加にとどまると見ており、統計的には大幅な供給過剰を示唆している。
しかし、IEAは、OPECプラスが先週末に増産で合意したにもかかわらず、「ファンダメンタルズが逼迫している」ため、市場で有意義な動きは見られなかったと分析。また、価格指標も、IEAが推計した大規模な供給過剰が示唆する以上に、石油市場が逼迫していることを示していると指摘している。
2026年の世界の石油需要は、平均で日量72万バレル増加すると予測され、従来予想から2万バレル下方修正された。供給の伸びは日量130万バレル増と予測している。
米石油サービス会社ベーカー・ヒューズが10日に公表した、同日までの1週間の米国内石油掘削リグ稼働数は、前週比1基減の424基となり、2021年9月以来の低水準を記録した。天然ガス掘削リグ稼働数は前週から変わらず108基だった。
11日のNY天然ガス相場は反落した。液化天然ガス(LNG)輸出プラントへのガス流入量は増加したが、市場は来週の気温が従来予想を下回ると見込み、冷房用の電力を賄う発電需要が減少すると予想したことが、相場の下落につながった。
【エネルギーのトレード戦略の考え方】
原油相場は反発し、直近の高値付近に戻した。20日線の68.557ドルと200日線の68.45ドルは超えていないが、その目前まで値を上げている。これらを超えると地合いは大きく転換し、強気に傾くだろう。その場合、次のターゲットは71ドル、さらに74ドルになりそうだが、そのような動きにつながるような材料が出てくるだろうか。IEAは世界の石油需給がひっ迫している可能性を指摘するが、かなり無理があるように思われる。いずれにしても、まずは週初の動きを確認したいところである。
【エネルギー/中期トレンド判断(参考)】
<コア>
WTI原油:中立(短期強気)
天然ガス:下落
<サテライト・参考>
ブレント原油:中立(短期強気)
RBOBガソリン:上昇
ヒーティングオイル:上昇
【農産物市場の市況解説】
コーン:412.25(-4.25)<-1.02%>
大豆:1007.25(-6.5)<-0.64%>
小麦:565.5(-9.5)<-1.65%>
大豆ミール:283.6(-1.7)<-0.6%>
大豆油:53.65(+0.18)<+0.34%>
ココア:7451(+50)<+0.68%>
綿花:67.42(-0.31)<-0.46%>
コーヒー:280.45(-1.65)<-0.58%>
砂糖:17.25(+0.3)<+1.77%>
シカゴコーンは3日ぶりに反落した。米国の産地で作物生育に適した天候が続き、豊作予想が強まったことが相場を圧迫し、約定安値まで下落した。米中西部の主産地では作物がおおむね良好な天候のもと生育しており、米農家らは今季の豊作を見込んでいる。米農務省の日報でも、降雨により土壌水分量が良好に維持され、気温も生育にストレスを与える水準には達していないと報告された。
今秋収穫される米コーンは、世界的に潤沢な供給を後押しする見通しである。一方で、米農務省は月間需給報告で、記録的な水準になるとされる秋の収穫を前に、米コーンの在庫が過去4年ぶりの低水準に縮小すると予想した。
米農務省は11日に発表した7月の農産物需給報告において、世界のコーン需給予測を更新した。2025〜26年度の世界全体のコーン期末在庫は2億7208万トンと、前月報告の2億7524万トンから下方修正された。これは、市場予想の2億7746万トンを下回る水準。中国を除いた期末在庫も9292万トンと、前月(9407万トン)から引き下げられた。
世界全体の生産高は12億6366万トンと、前月(12億6598万トン)から下方修正された。特に米国の生産高は3億9893万トンと、前月(4億0185万トン)から下方修正された。一方、ウクライナ、アルゼンチン、ブラジル、中国の生産高は前月と変わらず、中国の輸入高も1000万トンに据え置かれた。
2024〜25年度の世界の期末在庫予測も2億8418万トンと、前月(2億8504万トン)から下方修正された。しかし、世界生産高は12億2530万トンと、前月(12億2333万トン)から引き上げられた。これは主にブラジルの生産高が1億3200万トンと、前月(1億3000万トン)から上方修正されたことによる。米国、ウクライナ、アルゼンチンの生産高は前月の水準に据え置かれている。
シカゴ大豆は反落した。好天予報が秋の豊作期待を高めたことが相場の重石となった。米農務省(USDA)が公表した月間需給報告によると、2025〜26年度の米国産大豆の生産見通しは43億3500万ブッシェルと、前月の43億4000万ブッシェルから引き下げられた。これは事前予想とほぼ一致する。一方、同年度の米大豆の期末在庫予測は3億1000万ブッシェルと、前月の2億9500万ブッシェルから上方修正された。これは市場予想の3億0200万ブッシェルを上回る水準である。
米農務省は11日に発表した7月の農産物需給報告で、大豆の世界需給予測を更新した。2025〜26年度の世界全体の大豆期末在庫は1億2607万トンとなり、前月報告の1億2530万トンから上方修正された。ただし、市場予想(1億2631万トン)は下回っている。中国を除いた期末在庫は8269万トン(前月8042万トン)となった。
世界全体の生産高は4億2768万トンと、前月の4億2682万トンから引き上げられた。一方で、米国の生産高は1億1798万トンと、前月(1億1812万トン)から下方修正された。中国(2100万トン)、アルゼンチン(4850万トン)、ブラジル(1億7500万トン)の生産高は前月と変わらず、中国の輸入高も1億1200万トンで据え置かれた。
2024〜25年度の世界の期末在庫予測は1億2512万トンと、前月(1億2420万トン)から上方修正された。世界生産高も4億2200万トンと、前月(4億2078万トン)から上方修正された。特にアルゼンチンの生産高は4990万トンと、前月(4900万トン)から引き上げられている。中国(2065万トン)、米国(1億1884万トン)、ブラジル(1億6900万トン)の生産高は前月と同水準に据え置かれた。
シカゴ小麦は反落した。米国での収穫が進み、供給が拡大していることが相場を下押しした。一時1週間ぶりの高値を付けていたものの、その後値を消す展開となった。
米農務省は11日に発表した7月の農産物需給報告で、小麦の世界需給予測を更新した。2025〜26年度の世界全体の小麦期末在庫は2億6152万トンと、前月報告の2億6276万トンから下方修正された。これは、市場予想(2億6269万トン)を下回る水準。中国を除いた期末在庫も1億3691万トン(前月1億3816万トン)となった。
世界全体の生産高は8億0855万トンと、前月(8億0859万トン)から下方修正された。国別では、ウクライナが2300万トンから2200万トンに、カナダが3600万トンから3500万トンにそれぞれ下方修正された。一方、欧州連合(EU)は1億3655万トンから1億3725万トンに上方修正された。アルゼンチンの生産高(2000万トン)と中国の輸入高(600万トン)は前月と変わらなかった。
2024〜25年度の世界の期末在庫予測は2億6359万トンと、前月(2億6398万トン)から下方修正された。世界生産高は7億9992万トンと、前月(7億9991万トン)からわずかに引き上げられた。この年度のアルゼンチン、ウクライナ、オーストラリア、中国の生産高はいずれも前月と変わらなかった。
NYコーヒーは反落した。トランプ米政権によるブラジルからの輸入品に対する50%関税に対し、ブラジルが報復する可能性が懸念され、アラビカ種は一時、10日ぶりの高値となる297.60セントを付けた。しかし、ディーラー筋によると、ブラジルでのコーヒー収穫が速いペースで進んでいることが意識され、終盤にかけて値を消す展開となった。
トレーダー筋は、8月1日にこの関税が実際に導入された場合、ブラジルから米国へのコーヒー出荷はほぼ停止する可能性があると指摘している。また、米国が別の国から同じ量や価格で調達することは難しいとの見方を示した。
NY砂糖は反発した。最大生産国であるブラジルは米国にあまり砂糖を販売しておらず、市場は米国がブラジルからの輸入品に課す50%関税の影響を意に介していないと見られている。
【農産物市場のトレード戦略の考え方】
今週のシカゴコーン・大豆相場は、米中西部での作物生育に好ましい天候が続くため、引き続き上値が抑制されると予想されている。また、トランプ米大統領が主要な貿易相手国に対して新たな関税方針を打ち出していることも、市場の地合いを一段と圧迫する恐れがある。
中西部の産地では、作物の生育に深刻な打撃を与えるような極端な気象は予想されていない。米農務省が7日に発表した週間クロップ・プログレスによると、米コーンの「優」と「良」の割合は74%に達し、この時期としては2018年以来の高水準の作柄となっている。米中西部では週末に気温が上昇し、来週初めには雨が降る可能性があると述べた。好天の継続が、今後の相場の上昇を抑える主要因となる見通し。
【農産物/中期トレンド判断(参考)】
<コア>
コーン:下落
大豆:下落
小麦:下落
<サテライト・参考>
大豆ミール:下落
大豆油:上昇
ココア:下落
綿花:下落
コーヒー:下落
砂糖:下落
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