ベネズエラとノーベル平和賞
こんばんは、矢口新です。
ベネズエラの野党指導者マリア・コリーナ・マチャド氏が
ノーベル平和賞を受賞した。
どのような功績が世界で最も価値があるとされる賞に
結びついたのかが気になったので、ウィキペディアで調べてみた。
(以下にウィキペディアから要約して引用)
1967年10月7日生まれ、
アンドレス・ベロ・カトリック大学で産業工学の学位、
カラカスの高等行政学院で金融学の修士号を取得した。
イェール大学のワールド・フェローズ・プログラムにも参加した。
野党の政治家として国民議会の議員を務め、
2014年のニコラス・マドゥロ政権に対する抗議活動や、
2024年のベネズエラ大統領選挙の候補者として、
マドゥロの独裁主義の政治に対抗し、
公平の選挙と民主化を求めてきた。
ベネズエラ大統領選挙では政権側から政治的弾圧を受け、
公職追放処分を受けるなど事実上、出馬を阻止された。
これをきっかけに主要野党が結集し、
政権交代への期待が高まる大きなうねりに発展した。
2018年にはBBCの「100人の女性」に選ばれ、
2024年にはサハロフ賞を受賞した。
さらに2025年には「世界で最も影響力がある人物」の
一覧とされるタイム100の一人にも選ばれた。
2025年、
「ベネズエラの民主的を向上させるための不断の努力と、
独裁政権から民主主義への公平かつ平和的な移行を
達成するための闘争に対して」ノーベル平和賞の受賞が発表された。
(引用ここまで)
つまり、マドゥロ政権に対する
抗議活動が同氏への評価のすべてだと見ていていいだろう。
ベネズエラでの反政府活動の高まりには
既視感があったので、
2022年12月31日の日経新聞から以下の記事を引用する。
(引用ここから、URLまで)
南米ベネズエラの野党勢力は30日、
「暫定政府」を解散することを決めた。
米国が「暫定大統領」として支持する
野党指導者フアン・グアイド氏は、
野党勢力を代表する立場ではなくなる。
野党勢力は今後、反米左派のマドゥロ政権との
対話をしながら、2024年に公正な
大統領選挙の実施を求めていくことになる。
ロイター通信によると、
解散には賛成が72票、反対は29票だった。
主要4野党のうち3党が賛成した。
野党・正義第1党のフアンミゲル・マテウス氏は
「より効果的な民主主義的な戦いの基礎を作らなくてはならない」
と指摘した。
国会議長だったグアイド氏は
19年1月に暫定大統領への就任を表明した。
18年5月のベネズエラ大統領選が
不公正だったと考える欧米諸国などに支持は広がり、
外国に「大使」を派遣したケースもあった。
ただ反米左派のマドゥロ政権の
国内の権力基盤は強固で、同年4月には
グアイド氏が軍人に蜂起を呼びかけたが失敗した。
野党勢力の今回の決断の背景には、
米国による路線変更も影響している。
対ベネズエラで強硬だったトランプ前政権から、
21年1月にはバイデン政権が発足。
同政権は、米国の中間選挙後の22年11月下旬には
経済制裁の一部を緩和した。
米石油大手シェブロンがベネズエラで進める
資源採掘事業を巡り、6カ月間の期限つきで再開を認めた。
加えて、中南米では左派政権が
増えている事情もある。
23年1月にはブラジルで左派のルラ政権が発足する。
ブラジルの政権交代で、中南米の国内総生産(GDP)の
上位6カ国はいずれも左派になる。
右派政権が多かった際には、
マドゥロ政権は中南米域内で孤立していたが、
ここに来て周辺国との関係が改善している。
ブラジルのビエイラ次期外相は、
ベネズエラとの国交を回復する意向を示している。
参照:ベネズエラ野党、「暫定政府」を解散
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN310P50R31C22A2000000/
「解散には賛成が72票、反対は29票だった。
主要4野党のうち3党が賛成した。
国会議長だったグアイド氏は19年1月に
暫定大統領への就任を表明した。
反米左派のマドゥロ政権の国内の権力基盤は強固で、
同年4月にはグアイド氏が軍人に蜂起を呼びかけたが失敗した。」の
部分について解説しておこう。
2019年1月当時、グアイド氏は野党4党のうち
最も少数野党の党首だったが、
国会議長になった直後に突然、大統領就任を表明した。
与党でもなく、最大野党の党首でもない
グアイド氏が国会議長になれたのは、
ベネズエラでは一定の議員数がある政党の党首が
持ち回りで国会議長になるという、
ある意味で「民主的な」システムであったからだ。
一方、米国や日本を含む西側諸国は、
議会と大統領の対決だとして、
グアイド氏をベネズエラ大統領だと即座に承認した。
とはいえ、ベネズエラには正当なマドゥロ政権があり、
同国内ではグアイド氏の支持が広がらなかったために、
上記のように「暫定政府の大統領」として扱うことになった。
上記の記事では
「野党勢力を代表する立場」を失うとあるが、
大統領と認めていたのは西側諸国だけで、
最も少数野党の党首である同氏が野党勢力を
代表する立場であったことは一度もない。
西側諸国の強固な支持がありながら、
他の野党からも、軍からも、
国民からも支持が集まらず、
「傀儡政権」にすらなれなかったのは、
米国がマドゥロ政権に取って代わる人選を
誤ったと見ていいかもしれない。
同氏は2022年末に、野党勢力によって
「暫定政府」を解散させられた後、
2023年4月、自身と家族の身に危険が迫ったとして
コロンビアに脱出、そのまま米国に亡命した。
ベネズエラの検事総長は、2023年10月に、
亡命中のグアイド氏に対して国際手配の手続きを取った。
同氏の身に危険が迫ったとあるが、
軍人に蜂起を呼びかけたが失敗(クーデター未遂)は
2019年4月のことだ。
その後、4年間も逮捕されなかったのは、
マドゥロ政権の非道はそれほどのものではないか、
あるいはグアイド氏が米国の後ろ盾があるうちは
「治外法権」的な立場を維持できていたからかも知れない。
そこに降ってわいたようなマチャド氏への
2024年のサハロフ賞受賞、今年のノーベル平和賞受賞なのだ。
米国がグアイド氏に代わる反マドゥロの適役を見つけた可能性がある。
ノーベル賞選考委員らがマドゥロ政権に対する
抗議活動以外にこれといった功績のない同氏を選んだのは、
ノーベル平和賞を望んでいた
トランプ大統領への配慮かも知れない。
これで米国はベネズエラ攻撃に一種の正当性が得られるからだ。
ちなみに、トランプ氏へは、何故かFIFAが平和賞を送った。
グアイド氏とマチャド氏の共通点は米国での教育で、
グアイド氏はジョージ・ワシントン大学、マチャド氏はイェール大学だ。
一方、米国は着々とベネズエラ攻撃の準備を進めている。
ロイター通信が撮影した写真によると、
海軍により20年以上前に閉鎖されたプエルトリコの
旧ルーズベルト・ローズ海軍基地における建設活動は
9月17日時点には進行中で、乗組員らが滑走路につながる
誘導路の整地と再舗装を始めていた。
また、米海軍最大かつ最先端の航空母艦ジェラルドRフォードが
10月24日に地中東部からカリブ海方面への再展開が命じられ、
11月4日に地中海から大西洋へ出、11日にカリブ海地域に移動した。
フォード級空母に加えミサイル発射能力を持つ海軍の
駆逐艦3隻の到着により、既に同地域に展開している
1万人の部隊に約5500人の軍人が追加される。
うち約半数はプエルトリコに上陸、残る半数は8隻の軍艦上にいる。
1万5000人以上の軍隊という米軍増強は、
同地域においてこの数十年で最大規模となる。
また、トランプ氏はベネズエラ空域を封鎖するとも述べている。
関連:米国がカリブ海に配備している先進兵器を参照。
See Advanced Weaponry the U.S. Is Deploying to the Caribbean
https://www.wsj.com/world/americas/us-weapons-caribbean-graphics-44d9e5e5
一方のベネズエラ軍は、米国攻撃に備えゲリラ戦対応を準備しているとされる。
米国がベネズエラを狙うのは、
これまでの米政権ならばマドゥロ政権の
権威主義的な体質を口実としただろうが、
1期目のトランプ政権がロシアや北朝鮮に
積極的にアプローチしたところからしても、口実とはし難い。
麻薬戦争の一環だとする口実は、
軍備増強の規模からしても説得力に乏しい。
関連:「まったくの嘘だ!」トランプのベネズエラとの戦争準備は麻薬とは無関係。
‘Flat Out Lies!’ Ana Navarro Argues Trump’s Preparation for War With Venezuela Has Nothing to Do With Drugs
https://www.yahoo.com/news/videos/flat-lies-ana-navarro-argues-162628480.html
ベネズエラ攻撃の真の狙いは、
埋蔵量世界一と言われている同国の
石油資源ではないかと言われている。
大量破壊兵器保有を口実に攻撃され、
当時のフセイン政権が転覆、
大統領が処刑されながら、
遂にどこからも大量破壊兵器保有の証拠が
見つからなかったイラク戦争再現の可能性があるのだ。
先週10日頃には、ベネズエラから
キューバ方面に向かっていたとされるタンカーが
米国によって拿捕され、テキサス州に連行された。
これはトランプ政権の1期目だった2019年に
米国の制裁の対象とした30隻以上のタンカーの1隻で、
初の押収となった。
これらのタンカーは中国にも原油輸出を行っていたと見られている。
こうした拿捕の布石は、
既にトランプ氏の2期目の就任直後に打たれていた。
パナマ運河を事実上の中国支配から
米国支配に取り戻したことだ。
ベネズエラは太平洋に面していないので、
西向きの海運はカリブ海からパナマ運河を通って太平洋に出るからだ。
また、パナマ運河を抑えることは、
フォード級空母を含む軍艦を太平洋に
展開できることをも意味している。
ベネズエラ経済は圧倒的に石油に依存している。
輸出収入の90%以上、国家予算収入約5割、
GDPの約25%~27%を石油部門に依存しているのだ。
そのため、米国による長年にわたる制裁に加え、
トランプ政権1期目の制裁強化は
ベネズエラ経済を大きく圧迫している。
疲弊した国民は海外移住を試み、
政府批判を強めているが、
それでもグアイド氏は支持されなかった。
そんな中でのマチャド氏への
世界的な支持の高まり(の演出)は、
米国の武力行使が近付いていると見ていいのかも知れない。
マチャド氏は幽閉されて所在不明のため、
ノーベル平和賞の授賞式には
出られないのではないかと報道されていたが、
どうにか無事にノルウェーに現れ、
トランプ氏のマドゥロ氏への圧力を賛辞したと言う。

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