辰巳天井、午尻下がり
こんばんは、矢口新です。
相場の格言に「辰巳天井、午尻下がり」というものがある。
意味は、
「辰巳天井(たつみてんじょう):辰(龍)と巳(蛇)の年は株価が上昇しやすい。
午尻下がり(うましりさがり):辰巳天井の後に来る午(馬)の年は、株価が下落に転じやすい。 」
というものだ。
私も聞いたことがあったのだが、2024年、25年と、共に
一時的な急落があったものの、共に上昇し、
史上最高値圏の5万円台で終えたことで、
午年の26年を控え市場で広く思い起こされるアノマリーとなった。
天井とは高いだけでなく、
その上はないという意味でもあるからだ。
最高値更新に貢献したのは、
高市政権が掲げる「責任ある積極財政」を
好感したことも要因の1つだ。
積極財政は21.3兆円の規模の経済対策を含む
過去最大の歳出なので疑いのないところだが、
その財源を国債に頼るところは責任あると言えるのだろうか?
つまるところはリスクの先送りで、
結果が良くなることを祈るしかないのではないか?
同じようなことは、アベノミクスを含め歴代の政府が行い、
世界最大級の公的債務を抱えるに至ったのだが、
1990年代からの日本の凋落を
誰も止めることはできなかったのだ。
アベノミクスと異次元緩和は物価上昇を目指したものだった。
物価上昇が賃金上昇を促し、消費拡大、企業収益増、投資拡大に
繋がるとの好循環を期待したものだった。
実際に、黒田日銀はマイナス金利と膨大な資金供給など
事実上の円安政策により、力づくで物価を上昇させた。
しかし、賃金上昇が追いつかないために、
実質賃金は10カ月連続でマイナス、
その結果、購買力が低下した。
消費拡大や企業収益増も物価高による嵩上げで、
数量はむしろ減少した。
その消費額も日々の食費に多くを費やされ、
7-9期のエンゲル係数は、現行基準となった00年以来、
四半期として最高の29.4%となった。
エネルギーと光熱費を加えれば家計消費の4割以上が
数量を減らしギリギリ生きるためだけに費やされている。
これでは投資拡大には向かえない。
つまるところ、アベノミクスによる物価上昇は、
日本を安売りしただけで、強くするどころか、ますます弱くした。
その結果、日本銀行や内閣府が推計する
日本経済の潜在成長率は0.5~0.6%台で、
約10年前の半分の水準にとどまっている。
こうしたアベノミクスを継承する高市政権に
何か特別な秘策でもあるのだろうか?
おまけに前石破政権が約束した米国投資86兆円(5500億ドル)の
資金供与が始まることになる。
リスクの先送りは電力にも見られている。
ウォールストリート・ジャーナルは、
福島の記憶が薄れるにつけ、
日本は原発依存に向かっていると取り上げた。
参照:As Memories of Fukushima Fade, Japan Seeks Bigger Role for Nuclear Power
https://www.wsj.com/world/asia/as-memories-of-fukushima-fade-japan-seeks-bigger-role-for-nuclear-power-2a9a9236
AI大手の米企業は各地にデータセンターの建設を進めている。
AIのためのデータセンターは膨大な水と電力を消費する。
AIモデルの学習には1日に数百万ガロンという
膨大な冷却用水が必要なため、
地域の生活用水を圧迫している。
また、従来の施設の数倍から数十倍の電力を消費するため、
既存の送電網では足りなくなってきている。
そこで、原子力発電所のすぐ隣にデータセンターを建設し、
電力を「直引き」する動きが出ている。米国内だけでなく、
資源の確保が容易な海外にも触手を伸ばしている。
アイスランドやフィンランド、マレーシアやタイなどだ。
日本国内でも、AI需要の急増を受けて
データセンターの建設ラッシュが起きている。
千葉県、北海道(石狩・苫小牧・千歳)、九州(福岡・熊本)などだ。
もっとも、都市部に近い千葉はデータセンターがあまりに集中しすぎたため、
現在は「電力不足」が深刻化しており、
新規建設のための電力を確保するのが難しくなっているとされている。
一方、北海道や九州は送電線が足りないのだ。
このままでは電力不足で停電が日常化しかねない。
そこで原発依存の再来だというのだ。
しかし、もう誰も「安全、安価、安定」という
原発神話を信じてはいない。
それどころか、福島原発後始末の目処さえついていない。
加えて、使用済み核燃料の処理や、原発テロ対策施設整備も棚上げ状態だ。
こうした将来の不安より、今の要望が先だ。
先のことを考えるより、今を何とかするしかない。
とはいえ、抜本的な対策は軋轢が大きいので、小手先で出来ることを進めたい。
ここに見られている、急用なのでブレーキのない
故障車で加速するようなリスクを取り、
将来に何かが起きても(起きない方が奇跡的なのだが)、
先の世代が何とかしてくれるという考え方は、
世界一の借金を積み上げながら、「責任ある積極財政」を
進めるとする高市政権にも共通する。
株価はどうか?
某著名エコノミストは
「株価は美人コンテストでの人気投票のようなもの」と述べた。
その意味では、高市トレードで株価が
高値を更新し続けることもあり得る。
とはいえ、ノーベル賞ですら、自然科学系のように
確固たる基準がない人文科学系や平和賞では、
受賞に何らかの「力」が働いているケースが散見されている。
美人コンテストにも、営業目的のスポンサーがいるのだ。
株価も同じだ。
株式にも「人気投票」だけでなく、
中央銀行や機関投資家などのように「事情」で
売買する人たちがいる。
日本取引所グループの投資部門別売買動向では、
購入時ベース、売却時ベースでの投資家別売買動向を知ることできる。
2005年1月以降、2025年11月までの純購入、
純売却の総額を買い手、売り手に分けて見ると以下のようになる。
兆円単位での買い手は、
大きい順に事業法人51.8兆円、
外国人39.3兆円、
日銀37.1兆円、
他法人7.1兆円だ。
このうち、事業法人は主に1株益を高めるための自社株買いで、
他社への政策投資株は売り続けている。
そのため、事業法人の日本株の保有比率は下げ続けている。
また、日銀は2026年から売り手に回る。
売り手は、
個人投資家55.1兆円、
年金14.1兆円、
生損保12.7兆円、
銀行10.4兆円、
投資信託4.7兆円、
他金融3.1兆円となっている。
2026年はこうした売り手が買い手に転じるのだろうか?
また、自社株を減らしている事業法人はどこまで減らし続けるのだろうか?
今では日本株の最大株主、日本企業のオーナーとなった外国人は、
どこまで本気で買い続けるのだろうか?
辰巳天井、午尻下がりは、こうしたことを考慮したものではないが、
もしアノマリー通りになれば、
「格言は侮れない」ということになる。

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