損切りオーダーは不可欠か?
From 矢口新
過去の私の映像などで投資を学んでいる方から、
長年にわたって解決していないという疑問を頂きました。
私は、損切りは重要ですが
「損切りのための逆指値オーダーは業者に利用されるので入れない方が賢明だ」
とお伝えしています。
これが理解できないとのことです。
私は1990年に書いた最初の著書「生き残りのディーリング(東洋経済刊)」で、
「損は切るもの。アゲインストのポジションは持ってはならない」
として、損切りの重要性を説きました。
これは元ファンドマネージャーで、
現在、メディアなどで活躍している知人によれば、
「損切りの重要性を説いた世界で最初の本」だったそうです。
似たような話は、当時、私を認めてくれなかった相場のレジェンドが後年になって、
「やはり、損切りできない者は生き残っていないね」と話していたと、
元ディーラーの友人が教えてくれました。
私は、損切りは儲けるためのコストだと述べています。
コストを支払わずに儲けることが出来ないくらい、
相場で「損切りは当たり前」のことです。
それにも関わらず、
「損切りは自分で行え、業者任せのオーダーは入れるな」と
お伝えしています。
以下に、その理由を述べていきます。
ご質問された方は熱心に勉強して頂いているようで、
有難く思います。
ご不明な点は、以下の3点だという理解でお答えします。
1)オーダーを入れるということは業者に自分の手の内を見せる事。
2)業者はその損切り価格を付けに行っている。業者はあえて仕掛けて取りに行くのか?
3)スイングでもし途中大暴落等起きた時はどうするのか?
A1:
顧客のオーダーは
取引のプラットフォームを提供している業者が管理しています。
これは証券取引に限らず、
アマゾンや楽天などの商取引でも同様で、
プラットフォームの提供者たちは、そうした顧客情報を利益に変えています。
最も象徴的なのが、米ナスダック市場に最近上場した
ロビンフッドという米株取引のプラットフォーム業者で、
同社はシタデルなどの大手ヘッジファンドに顧客の売買、
及びオーダーの情報を販売することが最大の収益源となっています。
A2:
証券会社や銀行のディーリングルームには、
セールスやカスタマーディーラーと呼ばれる人々がいます。
彼らは顧客の注文を取り次ぐことで、
時にはポジションを扱うディーラー以上の報酬を受け取っています。
とはいえ、顧客が支払う手数料はほぼゼロですから、
その報酬はポジションを扱うディーラーが
トレーディングで得た収益から支払っていることになります。
これはシタデルがロビンフッドから顧客情報を買うことと全く同じです。
ディーラーやヘッジファンドの多くは、
顧客情報をもとにトレーディング収益を上げているのです。
顧客情報を買うメリットについては、
安値の手前には買いオーダーが入っているだろうと「予想」するのと、
どれくらいの買いオーダーが入っているのかと「知っている」ことの違い。
また、安値の外側には損切りの売りオーダーがあると「予想」するのと、
どれくらいの売りオーダーが入っているのかと
「知っている」ことの違いを考えて見てください。
これをどのように利用するかと言うと、
全部が「見えて」いるとき、自分が買いオーダー以上に売ることで安値を更新するようなことができれば、
逆指値の売りオーダーが発動され、下げが加速されることが分かります。
そうなれば、下げる途中で買い戻すことで、
利益が確定するのです。
これは一例ですが、
顧客情報は利益に繋げられるので、
多くの産業で求められています。
一方、こうした事実を「知って」いれば、
わざわざ顧客情報を買わなくても、
自分たちのトレーディングに活かすことができます。
つまり、安値の手前では買いオーダーが予測できるので、
その買いが大きくて機能し、安値が切り上げてくるようならば「自分も買ってみる」。
逆に安値が更新されるなら
逆指値の売りオーダーが発動されるので「自分も売るしかない」。
安値更新の後に下髭が出て戻り始めるようならば
業者の買い戻しが入っているので「自分も買ってみる」、
というようなことです。
これらは、チャートを見ているだけで、「分かる」のです。
また、避けたいのは、
安値の手前に買いオーダーを入れて席を離れたり、
安値の外側に損切りの売りオーダーや新規売りの逆指値を入れて、
自分が見ていないところで儲けよう、他人任せのリスク管理をしようと思うことだと分かります。
A3:
上記のようなことを理解していれば、
収益に結び付けるには目の前で完結させる「短期トレード」が
最も適していることが分かります。
想定通りに動けば利益を最大化できますし、
想定通りに動かなければ損失を最小に抑えることができるからです。
どのような金融商品でも価格が波動を描いて動くことが正しいとすれば、
短期トレード以上に最適な運用方法はありません。
一方で、
短期トレードは相応の集中する時間を必要とします。
また、値動き以上に重要なものはないと
チャートだけを見つめているのは「退屈」です。
その意味では、
短期トレードは集中力を要するものの「単純作業の労働」なのです。
何年も、何十年も短期トレードを続ける意欲を保ち続けるのは非常に困難なのです。
それで、私などは「短期トレード」の
周りの大きな経済情勢に興味を広げることで、
意欲の維持を図っています。
例えれば、寿司職人の握る作業そのものは「単純作業の労働」なので、
魚や市場、流通、気候などと興味を広げ、
顧客に満足して貰うという「生き甲斐」を見つけて、続けていくようなものです。
またスウィングトレードのように、
「単純作業の労働」に終わらない不確定要素を付け加えることで、
「ああでもない、こうでもない」と興味を保ち続けることができます。
しかし、そうした不確定要素は同時にリスクの大きさを意味します。
「スイングでもし途中大暴落等起きた時はどうするのか?」
損失を最小にしようと、
近いところに「損切りオーダー」を入れれば、
小反落でも付いてしまいます。
できるだけ付かないようなところに入れれば、
付いた時には大損失です。
それが下髭にでもなれば、
全く意味のない損切りとなります。
その中間に入れれば、中くらいの損失が、
中くらいの頻度で付きます。
これも下髭にでもなれば、
全く意味のない損切りとなります。
どのような金融商品でも価格が波動を描いて動くことが正しいとすれば、
波動を利用して儲けることを狙うべきで、
波動を恐れて損失を重ねてはならないのです。
ボラティリティは飯のタネなのに、
恐がっていては儲かりません。
スウィングトレードや長期投資は、
相場観や自分の世界の見方に「賭ける」ものです。
リスクがあるから面白いのです。
しかし、そうした「面白いトレード」で、破産しては元も子もありません。
その意味では、最悪の事態になっても死なない程度の資金で行うのが
スウィングトレードや長期投資のリスク管理だと言えます。
少額で持ち続けて下髭にでもなれば、
日本株でもほっと一息で、米株のように最高値更新をし続ける相場ならば、
どのリスク管理よりも優れたパフォーマンスを与えてくれます。
もっとも、本当にトレンドが転換したならどうするか?
そこで、私は売りと買いとを組み合わせるポートフォリオ運用をお勧めし、
同時に、世界の動きを誰にも負けないくらい注視し、皆様にもお伝えしています。
これで、ご理解が深まりましたでしょうか? ご不明な点がございましたら、いつでもお聞きください。
矢口 新
いつも「眼からうろこ」の解説に感動しています。
一般には、損を最小に抑えるためには、逆指値を設定しとくとの説明が多いですが、それをディーラーやヘッジファンドの方がその情報を利用してトレードしていることがあるとは初めて知りました。
特にFXでは、上下変動が多く、元に戻ることも多いので短時間から、長時間の状況を把握して全体の
流れを把握してトレードしたほうが良いですね。
今後も、矢口先生のコラムを楽しみに待ってます。
猛暑が続く中健康に気を付けてお過ごしください。
にいやんさんが「目からうろこ」と書いていらっしゃったのに同感です。
個人投資家はプロに対して弱者なんだなーと思いました。個人投資家が
結託して損切りの逆指値を置かないようにすればいいのか、、、
ところで矢口先生は無料動画でしか拝見していませんが、拝見する度に
「洒脱」という言葉が思い浮かびます。若い頃はいろいろやんちゃをされてた
という紹介もありましたが洗練されていて実にカッコいい。私も矢口先生みたいに
なりたいです。
矢口先生の話は、本にはない裏のはなしかとおもいます。
私たちが聞きたいことは、こう言った話かと思います。
おはようございます。今逆指値の活用について勉強したいと思っていたので非常に興味深い内容でした。また下ひげの説明もわかりやすくありがたい内容でした。また色々なメルマガ楽しみにしています。私自身高値掴み、また損切りしたとたんスルスル上がるなど!泣 毎日で日々勉強です。ありがとうございます!!