【2024年10月10日】江守哲のコモディティコメント
こんにちは、江守哲です。
9日の金相場は、FOMC議事要旨の発表を控え様子見ムードが広がる中、続落した。FRBはこの日、FOMC議事要旨(9月17・18日開催分)を公表する。10日には米消費者物価指数(CPI)、11日には米卸売物価指数(PPI)の発表を控えており、市場では今後の金融政策に関する手掛かりを得ようと積極的な商いは控えられた。また、為替市場では対ユーロでドルが強含み、ドル建てで取引される金の割高感につながったことから、相場はマイナス圏で推移した。
調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は8日、金現物を裏付け資産に持つ上場投資信託(ETF)が9月に18.4トン(14億ドル)の流入超となり、総保有量が3200トンに増加したと発表した。流入超は5カ月連続で、北米の上場ファンドが金保有を増やしたことが要因。
5カ月連続の流入超により、年初来ベースでもドル換算で3億8900万ドルの純流入に転じた。前年を含めた過去3年間は金利が高かったため年間ベースで純流出が続いた。
金価格はFRB が9月18日に利下げ開始を決定したことが好材料となり、26日に1オンス当たり2685.42ドルに上昇し、過去最高値を更新した。金価格の上昇と最近の流入により、金ETFが保有する月末時点の運用資産総額は9月末に2709億ドルに達し、過去最高記録となった。
さて、金相場は下げ基調が続いている。ただし、売られすぎになっており、まずは20日線の2603ドルで下げ止まるかを確認したい。節目の2600ドルに近付いたこともあり、新興国などの買いが入るかに注目することになろう。中国がこの数カ月間、金購入を見送っているが、その理由はわからない。安値を付けても買いが入ってこなければ、状況は深刻ということになる。いずれにしても、まずは下げ止まるかを見極める。2600ドルを割り込めば、50日線の2540ドルがターゲットになろう。
9日のロンドン金属取引所(LME)の銅相場は急落。その他の非鉄相場も軒並み下落した。ドル高基調やこれまでも中国政府による刺激策への期待の剥落、さらに最近の上昇に対する手仕舞い売りが下落につながった。銅相場は続落となり、基調が崩れてきている。もう一段安になれば、売られすぎになる、まずは20日線の9573ドルで下げ止まるかを見極めることになろう。ここにきてドル高が目立っており、この基調が続けば、ドル建てで取引されるコモディティへの圧力がさらに強まる可能性もある。その場合、非鉄相場もその影響は免れないといえる。アルミもこの日は下落し、一時20日線の2523ドルを割り込む場面もあった。亜鉛や鉛も同様の値動きにあり、まずは下げ止まるかを見極めたい。
<米エネルギー情報局(EIA)週間石油在庫統計>
原油在庫:+581万バレル(423百万バレル)
戦略石油備蓄(SPR):+38万バレル(383百万バレル)
クッシング在庫:+125万バレル(24.91百万バレル)
原油生産量:+10万バレル(日量1340万バレル)
原油輸入:-39万バレル(日量624万バレル)
原油輸出:-8万バレル(日量379万バレル)
ガソリン在庫:-630万バレル(215百万バレル)
ガソリン需要:+113万バレル(日量965万バレル)
ディスティレート在庫:-312万バレル(119百万バレル)
ディスティレート需要:+39万バレル(日量403万バレル)
ジェット燃料在庫:-0万バレル(4百万バレル)
ジェット燃料需要:-22万バレル(日量171万バレル)
石油製品需要:+134万バレル(日量2119万バレル)
製油所稼働率:-0.9%(86.7%)
9日の原油相場は、需給のだぶつきを意識した売りに押され続落した。米エネルギー情報局(EIA)が発表した4日までの1週間の米石油在庫統計によると、原油在庫は前週比580万バレル増と、市場予想(200万バレル増)を大幅に上回る積み増しとなった。需給緩和への警戒感から相場はマイナス圏を軟調に推移した。ただし、同統計でガソリン、ディスティレート在庫の取り崩し 幅はいずれも市場予想を大きく上回ったため、下値は抑えられた。
FOMC議事要旨(9月17・18日開催分)によると、大多数の参加者が0.5%ポイントの大幅利下げを支持したものの、一部が0.25%利下げを支持した可能性があるという。ただし、相場への影響は限られた。
一方、市場は中東情勢の行方のほか、9日夜にも米フロリダ州へ上陸するとみられる大 型ハリケーン「ミルトン」が同地域の石油供給にもたらす影響を注視。8日、同州沿岸部 で100万人超に避難指示が発令される中、住民らはガソリンの買いだめを急ぎ、需要が 急増しており、原油価格の下支えにつながったとの見方もあった。
ゴールドマン・サックスは石油市場の地政学的リスクプレミアムがやや低下したと指摘した。先週はブレント原油のインプライド・ボラティリティとコールオプションのインプライド・ボラティリティ・スキューがともに急上昇していたという。
ゴールドマンは、中東情勢の行方が依然として不透明であり、イランの生産が混乱した場合、ブレント原油に1バレル当たり10~20ドルの上昇余地があると引き続き予想。ただし、大きな混乱がなければ、今四半期は現在の水準付近で推移する可能性があるとしている。
コールオプションのインプライド・ボラティリティ・スキューは先週、4月中旬の水準まで急上昇。ブレント原油のインプライド・ボラティリティは今年初めてモデルが示唆する公正価値を上回った。オプション市場は、価格が1バレル当たり20ドル上昇する確率を約5%と見積もっているという。
9日の天然ガス相場は4日続落。米南部フロリダ州にハリケーン「ミルトン」が直撃して多くの住宅・企業が停電し、発電所で使われるガスの量が減少するとの予想が響いた。9月26日以来の安値を4日連続で付けた。米国立ハリケーンセンターによると、ミルトンは9日夜にフロリダ州西海岸に上陸し、10日には同州中心部を通過する見通し。
ミルトンはすでにフロリダ州の4万8000世帯・企業で停電を引き起こしている。ノースカロライナ州とジョージア州では、ハリケーン「ヘリーン」上陸の影響で約11万8000世帯・企業がいまだに停電している。ヘリーンは9月26日にフロリダ州を直撃していた。
さて、原油相場は続落した。一時大きく下落し、20日線の71.29ドル付近まで下げる場面もあったが、ここはかろうじて下げ止まっている。ただし、まだ下げ余地があるだけに、注意が必要であろう。ドル高基調も上値を抑える要因になる可能性があろう。米石油在庫統計の内容は堅調だった。原油在庫は増加したが、石油需要の増加で石油製品在庫が大きく減少している。産油量がわずかに増加した点は驚きだが、今後は製油所稼働率が低下していくため、原油在庫が増加していく点は理解しておく。
9日のコーンは不安定な値動きとなる中、反発した。金融市場の上昇で買いが波及したほか、需給報告を前にポジション調整の買いも 入った。米農務省は、民間業者が2024〜25年度渡しの米大豆12万6000tを仕向け 地不明で売却したことを確認した。収穫が進む米中西部では、温暖で乾燥した天気が続く見通し。コモディティー・ウェザー・グループによると、ブラジル北部では待望の降雨があり、 作付け作業が進んだものの、作付けは依然として大幅に遅延した状態だという。
大豆は6日ぶりに反発。需給報告の発表を前に南米の天候をめぐる不透明感も加わり、ポジション調整の買いが入った。市場は原油相場の下落を注視。エネルギー需要が低迷し、米国内の石油在庫が増加する半面、中東情勢の緊迫化や米フロリダ州に接近するハリケーン「ミルトン」による供給混乱へ懸念が高まっている。
コモディティー・ウェザー・グループは、ブラジル北部での降雨により、大幅に遅延していた作付け作業が進んだとした。一方で、コンサス・アグ・コンサルティングは「異なる天候モデルが矛盾する見通しを示している。一つはアルゼンチンで降雨を予想し、もう一つは晴天が続くという。どちらの予報も南米での豊作見通しにつながるものではない」とした。
小麦は3日続伸。主要生産国ロシアの乾燥した天候への懸念や輸出需要拡大に支援された。市場は悪天候の影響を測ろうと、ロシア農業省が10日に発表する2024年の小麦生産量見通しを待っている。また、25年の冬小麦の作付けが予定される干ばつ地域の降雨予報にも注視している。 同国ではこれまで、1300万ヘクタール(3210万エーカー)の冬小麦の作付けが完了。昨年同様、計2000万ヘクタール(4940万エーカー)の作付けを目指すが、一部では目標達成に懐疑的な見方を示している。
NYココアは続伸。コートジボワールの主産地の大半で平年を上回る降雨量を記録し、農家の間では現在のメインクロップシーズン(10月〜翌年3月)の収穫量増加への期待 が高まった。ブラジルのカカオ加工産業協会(AIPC)によると、同国の7〜9月期のカカオ豆加工量は前年同期比13.5%減の5万5300トンだった。
NYコーヒーは続伸。ブラジル主産地は今年、記録的な干ばつの影響を受けたものの、12月から2月に雨量がかなり増える可能性があるという。同国では早ければ今週にも雨が降り始めるとの予報が出ている。市場筋は「注視すべき唯一のリスクはブラジル南東部から中西部における洪水の可能性で、コーヒーやサトウキビへの被害が最大の脅威だ」としている。
NY砂糖は4日続落。一時3週間ぶりの安値となる21.77セ ントを付けた。最大生産国ブラジルでの降雨予報が相場の重石となっている。
さて、コーンは小幅ながら反発した。売られすぎになっており、ここで下げ止まるかを見極めたい。20日線の415セントと100日線の425セントのどちらに抜けるかを確認することになろう。大豆はかろうじて50日線の1010セントで下げ止まっている。すでに売られすぎであり、これで20日線の1027セントを超えると、上昇に転じることになりそうである。小麦は続伸し、下値を切り上げて上昇している。100日線の600セントを明確に超え、200日線の615セントを超えると急伸しそうである。
なお、最終的な投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
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