勝つために「禁止」薬物は必要?
From 矢口新
自宅のトレーディングルームより……
こんにちは。
矢口新です。
8月も終わりに近づいていますが、
天気が相変わらず不安定ですね。
こういうときは、体調を崩しやすくなるので、
気を付けてお過ごしください。
さて、今年はとある大学のアメフト部や、
アジア大会に出ていたバスケットボールチームなど、
「スポーツをめぐるトラブル」が頻発しています。
そこで今日は、「スポーツをめぐるトラブル」の一つ、
ドーピング=禁止薬物の使用について考えてみました。
実はこれ、相場にも通じる話ですので。
結局、選手が振り回される
いうまでもないですが、禁止薬物を使ってまで、
いい成績を残そうとするのは、フェアではありません。
しかし、
「たまたま飲んだ薬に、禁止薬物に指定されている成分が入っていた」
ということもあり得ます。
女子テニスのマリア・シャラポワ選手も、
このような状況で1年間、競技大会に出られませんでした。
復帰はしたものの、
「ダーティーなヒール」扱いされているそうです。
日本選手だって、風邪薬を飲んだことで、
ドーピング検査で陽性を出してしまう例はあるでしょう。
こういう場合まで、フェアでないといっていいのでしょうか。
また、何が禁止薬物かは、その時々で変わります。
その変わる理由が恣意的なものであったら……振り回される選手が気の毒です。
勝つためには薬物が必要?
一方、アメリカでは大麻の合法化が進んでいますが、
スポーツ界にもその影響は及んでいるそうです。
3人制バスケットボールのプロリーグ「BIG3」は、
選手たちに痛みや炎症の緩和を目的に、カンナビジオールの使用を許可しました。
これは、大麻に含まれる化学物質を使った鎮痛剤で、
痛みを伝える神経に作用しないのが特徴です。
アメリカのプロスポーツ界の中では、
痛み止めとしてオピオイド鎮痛剤が幅広く利用されてきました。
しかし、(ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが)
オピオイド系鎮痛剤は痛みを伝える神経に作用することで痛みを止める薬です。
本来、厳重な取り扱いが求められる薬ですが、
アメリカでは管理が行き届いておらず、乱用が社会問題となりました。
米大統領府経済諮問委員会が、オピオイドが絡む薬物過剰摂取による影響は
- 2015年に3万3,000人以上の米国人が死亡
- 経済的損失は5040億ドル
と報告しています。
さらに、トランプ大統領はオピオイド中毒を国家的な危機に指定したため、
関係者に対する風当たりがさらに強まりました。
例として、
- オピオイド製剤を販売している薬品会社の創業者を、医師への贈賄罪で訴追
- ケンタッキー州は全米第2位の薬局チェーン、ウォルグリーンズを提訴
などがあげられます。
ちなみに、オピオイド製剤は日本では「医療用麻薬」に指定されているため、
特別な免許を持った医師・薬剤師・製薬会社にしか扱えません。
命を削ってでも勝とうとする?
さっき私は、ドーピングの判定に振り回される選手が気の毒、といいました。
しかし、「リスクは自分で負うもの」ということで、
ドーピング審査をやめてしまうと、命を削ってでも勝とうとする選手は出てくるはずです。
特に、プロスポーツ選手のように、「勝たなきゃ生活できない」人なら、
罰則を付けないと、薬物接種の誘惑に打ち勝つのは難しくなります。
それで収入が数倍にもなるなら、
多少健康を害しても……と考える選手がいても、おかしくありません。
ドーピングが大問題になった選手の例として、
自転車競技のランス・アームストロング選手を考えてみましょう。
彼は、精巣癌を発病し、一時は選手生命どころか生命も危ぶまれたものの、
その後復帰し、1999年から2005年にかけて、
ツールド・フランスを7連覇した名選手でした。
しかしその後、癌を発病する前からドーピングを
繰り返していたことが発覚し、自転車競技界から永久追放されます。
この辺りはご興味がある方は、本や映画やWeb記事をご覧ください。
私が問題にしたいのは、
「ドーピングをしなかった他の選手は、7年間、
一度もツールド・フランスで勝てていない」
という事実です。
7年の間に、どう頑張っても勝てない自分に嫌気がさし、
引退した選手はきっといたでしょう。
つまり、アームストロングのドーピング問題は、
自転車ロードレースをめぐるすべての人に、
(直接的・間接的な差はありますが)被害を与えたのです。
相場だって、同じ
ここまで延々とスポーツと薬物をめぐる話をしてきましたが、
実は相場にも同じことが当てはまるのです。
プロのディーラーの中にも、解雇や収益目標のストレスから
解放されたいという理由で、薬物に走る人はいました。
私がニューヨークに駐在していたときは、
ウォールストリートのはずれに薬物の売人がたむろしている場所もあったのです。
幸い、その時の私は日本本社からの駐在社員として
暮らしていたので、薬に頼るほどのストレスはありませんでした。
私が暮らしていたころ、多くのアメリカ人の夢は
「早く引退して、老後をのんびり過ごすこと」でした。
いわば、勝ち逃げです。
そのためには多少の無理もやむなし、という考え方が、
薬物に走るきっかけにもなったでしょう。
だからと言って、薬物に走るのはやはり反対です。
スポーツだって相場だって、ルールを守ってこそ、
多くの人から支持され、収入も増えるのですから。
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もふもふ様
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「わくわくしている」とのこと、嬉しいです。
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