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投資と投機、「タペストリー第二理論」

From 矢口新

私は常々、投機と投資とは「似て異なるもの」だと述べている。

端的な例が「あらゆる投資基準からみて売りのものは、投機的には買える」というものだ。

何故なら、そうしたものにはショート(空売り)が積み上がっていることが多く、
何かのきっかけがあれば買い戻しを強いられるからだ。

投機と投資は、時には正反対の対応を迫られるのだ。

投機はキャピタルゲイン狙いで、商品を選ばない。
ディーラーやヘッジファンドのような借入金による売買、信用取引は投機だ。

一方、投資は保有で、商品そのものに需要がある。

長期間寝かすことのできる余裕資金による運用は投資だとみなせる。
したがって、ポートフォリオの運用は投資なのだ。

投機では、相場が逆にいった場合はすぐにでも「損切り」で対応する必要がある。
狙いがキャピタルゲインなので、逆に行けばあきらめるしかないのだ。

一方、投資がそのポジションを閉じるときは、安全性やインカム、配当、成長性といった
投資に至った前提が崩れたときだ。

それまでは多少の価格のブレには惑わされずに、保有していていい。

短期的な投機と長期投資とは、切り離して考えるべきだ。

例えば、ファンドや長期投資がリターンをあげるのに
どれだけのリスクをとっているか計るシャープレシオは、
リターンをボラティリティで割ったものだ。

ここではボラティリティがリスクと捉えられている。

一方、投機では損切りしても取り返しがきく、
ボラティリティの大きなもののほうが、リスクが少ないのだ。

すなわち、投資ではボラティリティの大きなものは不適格とされ、
投機はボラティリティを追い求める。

そして、世の中で理論価格などと呼ばれているものは、
すべて投資に対する助言で、投機にとって役立つのはチャートや出来高などのテクニカル要因だ。

さまざまな経済指標や企業業績の発表などに日々の相場が振れるのは、
経済のファンダメンタルズや収益が毎日のように大変化しているわけではなく、
それを材料として投機狙いのポジションの積み上げや整理が行われるためだ。

投機では、使う材料は何でもいい。
それよりもポジションがどちらに膨らみつつあるのか、
あるいは閉じつつあるのかを読むことが重要だ。

ここに投資と投機の違いをまとめてみよう。

 投資=資本を投じるもの。
 投機=機(タイミング)に投じるもの。

 投資=保有。あるいは買い切り、売り切り、
 投機=キャピタルゲイン狙いの売買。売り戻し、買い戻しが前提。

 投資=余裕資金、手元資金、預かり資産の運用。
 投機=借入金、信用を利用した運用。

 投資=投資物件そのものを分析して投資判断とする。
 投機=なんでも材料にできる。時に材料は後からついてくる。

 投資=トレンド(価格の方向性)に関与する。
 投機=ボラティリティ(価格の振幅)に関与する。

 投資=量に厳しい制限がある。
 投機=時間に厳しい制限がある。

 投資=実需。
 投機=仮需。

 投資=事情。
 投機=意欲。

 投資=上げ相場には強いが、下げ相場では資産のキャッシュ比率を高める、ヘッジ率を高めるなど以外に打つ手がない。
 投機=上げ下げどちらの方向にも収益が狙える。

 投資=値下がりは投資環境の改善をも意味する。
 投機=値下がりは投機の失敗以外を意味しない(買いの場合。売りの場合は逆)。

 投資=市場を利用する。
 投機=市場(に流動性)を提供する。

投資は、マクロやミクロのファンダメンタルズの数値を信じるところから始まる。
一方、投機は、何が起こるか分からないことを前提としている。
投機が信じるのは値動きだけなのだ。

投資は保有という形で、相場に長く影響を与える。
いわばトレンドに影響を与えるのだ。

投機のほうは、借入金というレバレッジ効果で量的には大きいのだが、
いつか返済しなければならないという時間制限がある。

膨らんだポジションは必ず閉じられるので、
ボラティリティ(価格波動)に関与することになる。

つまり、投資はチャートの横軸に、投機はチャートの縦軸に、より大きな力を与えるのだ。

縦軸は価格だから、投機のほうが効率的に儲けられることも示している。

相場は、投資を横糸に、投機を縦糸に編み上げる飾り絨毯「タペストリー」のようなものだ。
私は投機と投資の違いと役割を「タペストリー第二理論」と名付けている。

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