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最悪期の首相

From矢口新

菅義偉首相が自民党総裁選への不出馬を決めた。
このことは日本の首相が変わることを意味する。

「1年間、まさに新型コロナ対策を中心とする様々な、
この国が抱える問題に全力で取り組んできた」。

首相は9月3日、党役員会で総裁選不出馬を表明後、
首相官邸で記者団にこう強調した。

最終局面で首相は小泉進次郎環境相と4日連続で会談したという。

勇退を進言したという小泉氏は涙ながらに、
「批判ばかりだったが、1年間でこんなに仕事をして結果を出した政権はない」と述べた。

菅首相が全力で取り組み、出した結果とは、
「世界に後れを取ってきた脱炭素とデジタル行政を看板政策として前進させた」
ことを意味するのだろうか? 

あるいは、
「他の先進国に後れを取ってきたワクチン接種を前進させた」ことだろうか? 
それとも、「新型コロナ対策としてロックダウンなど経済を止めることを主張する各地の知事たちと折り合いながら、
オリンピック・パラリンピック開催を含め、まがりなりにも経済を動かしてきた」ことだろうか?

とはいえ、国民がそれらの成果を評価せず、
支持率が落ちたことが「勇退」につながったことは否定できない。

しかし、「世界に後れを取ってきた」、
「他の先進国に後れを取ってきた」、「経済を止めた」、
「コロナ禍でのオリンピック・パラリンピック開催」と、
これまでの政権の尻拭いに終始した政権であったことも事実なのだ。

このことを、私は菅首相誕生時点から指摘してきた。
拙著「日本が幸せになれるシステム」の前書きから、該当の個所をそのまま引用する。

2020年9月16日、日本に新しい首相が誕生した。菅義偉第26代自民党総裁が第99代内閣総理大臣となった。自民党の総裁選中、菅氏は「将来的なことを考えたら行政改革を徹底した上で、国民にお願いして消費税は引き上げざるを得ない」と話していた。少子高齢化を踏まえ、社会保障の財源には必要だと訴えたという。

消費税率引き上げが必要だというのは、総裁選に出馬したほかの2候補も同様で、日本の首相には誰がなっても、消費増税が既定路線だったことになる。実際、前任者の安倍晋三前首相は在任中に二度も消費税率を引き上げた。

とはいえ前図00でもあきらかなように、消費税を導入した翌年が税収のピークとなり、後述するが税率を5%に引き上げた1997年度が経済規模のピークとなった。こうして経済が低迷し、税収が減ったことが、社会保障制度がぐらついている主因だと言える。最終章の「崩壊前夜の社会保障制度」を読んでいただければ分かるが、ほとんどの国民を支えている日本の社会保障制度はこのままでは維持できる見通しが立たないのだ。

消費税のどこが悪いか? 政府財政は国民の税金で運営されている。政府はインフラを整備し、安全に事業がおこなえる環境を整えて、国民が生産によって作りだした富の分け前を税金として徴収する。このとき、生産の成果に応じて徴収するのが所得税や法人税だ。消費税とは、秋の実りを待たずに種や苗の段階で10%を徴収するようなものなのだ。これでは、実りのもとを取りあげられたことで生産が低迷し、かえって税収が減少する。

税制は国の土台だ。土台が腐っているのに、行政改革で雨漏りや風除けだけを修理しても無駄になるのだ。そこで多くの図表をつかって、グラフを見るだけでも理解がすすむように心がけた。より多くの人々が消費税を理解しないと、日本は良くならないからだ。

前首相の安倍氏は連続在任2822日、第一期と合わせれば在任通算3188日と、ともに歴代最長の記録を塗りかえた。このことは、過去2~30年の日本経済がパッとしないとすれば、歴代最大の責任があることを意味する。とはいえ、アベノミクス下の景気回復期間は71カ月と、戦後最長とされた「いざなみ景気(2002年2月~2008年2月)」の73カ月にあと2カ月に迫る長さだった。

もっとも、いざなみ景気もアベノミクスも、ともに落ち込んだところからゆっくりと時間をかけて回復しただけで、後世に誇れるものを残したわけではない。それどころか、今後の日本にいくつもの大きな課題を残すことになった。

菅首相は、そうした歴史に残る前首相の課題を引き継ぐことになった。どんな課題か、思いつくままに列挙してみる。

1.膨大な累積財政赤字
2.膨大な公的債務残高
3.税収増が見込めない税制
4.このままでは事実上崩壊する社会保障制度
5.少子高齢化対策
6.ほぼ限界にまで緩和した状態の金融政策(残された政策は中立か引締め)
7.消滅した短期金利商品
8.機能を失った国債市場
9.30数兆円の日銀の株式保有残高
10.空洞化、インバウンド頼み、消費増税、コロナ対策でダメ押しした景気悪化
11.大廃業時代
12.貧富格差の拡大
13.米中本格対立を見据えた外交
14.ウィズ・コロナと今後の疫病対策
15.猛威を振るいはじめた温暖化への対策

1つ1つが、語りだしたら止まらないような大問題ばかりだ。こうした課題に向き合ってきた安倍氏が連続在任記録を更新したその日に辞任を考えた気持ちが理解できるような気がする。同氏自身が2822日かけて、第一期と合わせれば3188日もかけて悪化させてしまった問題を、短い残りの任期でどうやれば好転できたというのだろう。その意味では、日本の首相職は官房長官として前政権を支えてきた菅氏が引き継ぐべき「要職」であったと言える。

本書の主題は、社会保障費の財源とされるはずの消費増税が、増税による景気の悪化を通じて社会保障費をかえって増やしてきたこと。一方で、財源となる総税収を減らしてきたこと。これが財政の巨大な累積赤字や、膨大な公的債務の主因になり、社会保障制度の維持を脅かしていると指摘することだ。

さらには景気の悪化を通じて企業の競争力を低下させ、労働環境を悪化させ、貧富格差の拡大につながったとも見ている。

またそうして悪化した景気を刺激するため、副作用の弊害が甚大なマイナス金利政策や、将来的な国の信用を失墜させる通貨の乱発、財政ファイナンス、中央銀行による民間企業の株式保有などにつながり、日本の金融政策が機能を失ったことも指摘している。

私自身がこれらの図表を分析して得た結論は、税制1つで国が栄えも滅びもするということだ。日本は1989年度から「税収増が見込めない税制」に変えた。これが上記に挙げた15の課題の大半を作ってきたことを、図表データをもとに解説する。

このことは税制さえ高度成長期、バブル期のようなものに戻せば、まともに経済成長する日本に戻すことができることを強く示唆している。具体的には消費税の撤廃と、所得税の累進課税率の拡大、法人税率の引き上げだ。こうして、税収が増える税制に戻すことなしには、日本の社会保障制度は崩壊してしまうのだ。

社会保障制度の維持は他人事ではない。誰もが将来は年金の受給者となる。健康保険は今でも使っている。誰も失業保険の世話にならないとは断言できない。仮にそうした給付の対象となることがなくても、現時点で誰もが社会保険料を支払っており、今のままでは保険料の値上がりは避けられないのだ。政府の大借金を民間が穴埋めさせられる日が迫っている。

本書があなたにとって、日本の制度への理解を深める手助けとなることを願っている。

参照:日本が幸せになれるシステム(著者:矢口 新、Kindle Edition:\500)
65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方

「貧すれば鈍する」という言葉があるように、
ワクチン開発や、医療体制の維持を含め、ここ20年余りの問題の多くは「カネがない」ところから来ている。

リスク管理には資金的な余裕が必要だからだ。

1988年度の税収が50.8兆円で、
消費税が加わった後の1989年度から2019年度までの平均税収が50.7兆円などという馬鹿げたことがあるだろうか?

消費税や社会保険料は必ずしも豊かでない一般大衆から取る税金だ。
(注:OECDは社会保険料も税金だと定義している)。

日本はこの30年間一般大衆から取る税金を引き上げることで、
個人消費を殺してきた。

その結果、経済は低迷し、税収も増えなかった。

更には、大金持ちから取る所得税の累進課税率を下げ、
法人税率も下げることで、景気が良くなっても税収が増えない税制に変えたのだ。

これを変えない限り、次期首相には誰がなっても大きな成果は期待できないどころか、
政治生命の終わりにもつながりかねないと言える。

その意味では、次期自民党総裁は、これまでにない覚悟がいる要職ではないか。

日本政府の債務はGDP比で過去最大を更新し続けている。

世界でも突出して多いそうした借金を可能にしているのは、
日本国民が持つ資産が担保となっているからだ。

以前の過去最大の債務は第二次世界大戦時だが、
その時は国民の預金封鎖に次ぐ大幅増税と、
ハイパーインフレーション、旧円から新円のデノミで「解消」した。

第100代内閣総理大臣となる日本の次期首相、
あるいはその後の何代かの首相の選択肢は、政府機能を維持するためにだけ、
前例のように「国民の資産を没収」するか、あるいは経済成長を促し、税収増が見込める税制に変えるかしかない。

しかし、国民の資産を没収した後も現状の税制のままでは、
単に民も国も貧乏になるだけで、先の成長はますます見込めなくなる。

つまり、日本を救うには消費税の撤廃と、
所得税の累進課税率の拡大、法人税率の引き上げを伴う「税制改革」しかないのだ。

残念ながら、一握りの人々(766人)しか、
自民党総裁選に投票することができない。

読者の方々で、総裁選候補や投票権を持つ人々と繋がりがある方、
あるいは、何らかの形でアクセスできる方は、ぜひこのコラムを送って頂きたい。

でなければ、次の首相も何も結果を残せず、
日本を悪化させたままで、「勇退」することになる可能性が高いと言える。

私の言っていることが悲観主義者の妄想かどうか、
自民党総裁選候補を含め、日本に暮らす人間として利害を共にする日本人全員に読んで頂きたいものだ。

それでは本日の出来高急増銘柄です。

<講師プロフィール>

矢口新(やぐち あらた)

1954年生まれ。
金融業界の第一線で30年以上にわたり活躍し続け、
プロディーラーにも師と仰がれる天才ディーラー。

東京・ニューヨーク、ロンドンと世界3大金融市場で活躍し、
さらには為替、債券、株のすべてに関わるという
非常に稀有なキャリアを持つ。

相場を動かすプロの裏の裏まで知り尽くしており、
投資を真剣に学びたいという意欲ある方々との交流にも熱心。

■ 本日の出来高急増銘柄

※上昇銘柄の推奨などではありません。

※投資の学校の全講師の手法に使える、
 銘柄選びの考え方です。

なぜ、
出来高急増銘柄が注目なのか、その理由と、
本銘柄を抽出した根拠はこちら。
https://youtu.be/xAVWjxMIq4c

売買の際には、ご自身でチャート分析、
ファンダメンタルズ分析を行っていただき、
売買をする際には自己責任にてお願いします。

【1】レノバ(9519)
株価(終値):4,900
日付:9月6日
売買代金(千円):20,384,440

【2】野村ホールディングス(8604)
株価(終値):-
日付:9月6日
売買代金(千円):-

【3】明和産業(8103)
株価(終値):-
日付:9月6日
売買代金(千円):-

【4】花王(4452)
株価(終値):-
日付:9月6日
売買代金(千円):-

【5】クボタ(6326)
株価(終値):-
日付:9月6日
売買代金(千円):-

*ランキングは売買代金の
 総額に基づく順位を示したものです。

*この銘柄一覧は、
 特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。

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  1. サービス

    有難う御座いました。

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