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(矢口新)築城十年、落城一日

From矢口新

飲食店などの客商売はつくづく大変だと思う。

料理や接客態度が気に入って、長年通っていた店でも、
たった1回の不満足で遠のくことがあるからだ。

特に、気に入った店があるからと、
大事な人たちを案内した時に、そうした期待外れは見切りにさえ繋がってしまう。

長年にわたって築き上げた信用が、
たった1度の不始末で瓦解することを「築城十年、落城一日」と表現するが、
実際の建造物でも、時間をかけて建設したものが、
たった1度の災害で壊れてしまうことがある。

 

 

 

 

その災害の原因に「手抜き」が含まれていた場合などは、
信用も失うことになる。

実例を数え上げれば切がないが、
東電を挙げれば実感を伴うだろう。

人間関係も同じかも知れない。
長く付き合ってきて、総合評価なら控えめに見ても高得点だと見なせる人でも、
わずかな「がっかり」で、どこか疎遠となってしまう。

国の関係も同じだ。
芸術やスポーツを中心に、長年にわたって友好を深めてきたロシアに対し、
ウクライナ侵攻を理由に、過激に敵対視するようにもなっている。

隣国の韓国に対しても、ドラマやポップスで親近感を深めていたのに、
前政権のいくつかの反日政策で、「嫌いになった」人たちが増えた。

そんななかで、是枝裕和監督の韓国映画「ベイビー・ブローカー」が公開された。

私は同監督の「誰も知らない」や「万引き家族」を、
映画史上に残る名作だと見なしているので、
カトリーヌ・ドヌーブ主演のフランス映画「真実」に続き、
今度は韓国映画なのかという、同監督の「挑戦」を観るつもりで出かけた。

是枝ワールド満開の、いい映画だった。

全編韓国語(日本語字幕)で、舞台も韓国なのに、
韓国でも日常の誰もが関心を持っているとは思えない特殊な設定なのに、
何の違和感もない。

違和感がないどころか、多くの登場人物に親近感を覚えてしまうような映画だ。

国と国との関係では、こじれた原因が些細なことであっても、
自国と他国との違いを強調するようなことが多い。

例えば、ロシアが侵攻したのは兄弟国のウクライナで、
日本と直接には何の関係もないのに、ロシアを異質扱いして敵視する。

米国を含め、他国に侵攻した国など数えきれないほどあるのに、
ロシアだけを憎みすらする。

しかし、「ベイビー・ブローカー」だけでなく、
他国の映画、文化、芸術、スポーツなどが教えてくれるのは、
どこの国の人たちも、自分たちと同じだということだ。

 

 

 

 

 

言葉を含め多少の違いはあっても、共通の部分が圧倒的に大きい。
だからこそ、外国映画で、特殊な設定で、自分とは接点がない人たちに共感し、
身近に感じ、感動する。

「築城十年、落城一日」は危険な考え方だ。

相場で言えば、乗り遅れまいと買い急ぎ、
悪材料でパニック売りすることに似ている。

総合的に判断することを忘れて、目先の動きに振り回されているのだ。
悪材料は減点であって、全否定ではないのだ。

<講師プロフィール>

矢口新(やぐち あらた)

1954年生まれ。
金融業界の第一線で30年以上にわたり活躍し続け、
プロディーラーにも師と仰がれる天才ディーラー。

東京・ニューヨーク、ロンドンと世界3大金融市場で活躍し、
さらには為替、債券、株のすべてに関わるという
非常に稀有なキャリアを持つ。

相場を動かすプロの裏の裏まで知り尽くしており、
投資を真剣に学びたいという意欲ある方々との交流にも熱心。

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