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まずは生き残ること、生き残ってこそ未来がある

8月23日のファーウェイ創始者の発言をきっかけに、
翌24日の中国株4400銘柄が下落、
特に同社が属するエレクトロニクス分野では大規模なストップ安まで起きるという事態になった。

当のファーウェイは社員持ち株制を取っており、上場していない。

どのような発言だったのか、
ダイヤモンドの記事から部分引用する。

「もし、予定したとおり2025年に一縷(いちる)の希望を見つけるには、まずはこの3年の困難な時期をいかに乗り切るかを考える必要がある。生存の基盤をキャッシュフローと利益中心に調整する。もはや売り上げだけを目指していてもだめだ。2023年、24年は我々にとって苦しい時代となるはずで、それを突破できるかどうか、今は予断を許さない。
だから、これからはうるわしい物語ではなく、現実を語らなければならない。特にビジネスについては幻想を抱かず、会社をだますような話をしないこと。損失はあなたたちの生活の糧から差し引く。まずは生き残ること、生き残ってこそ未来がある。」
「今後10年は世界経済が衰退を続け、歴史的にも非常に苦しい時期になるだろう。戦争の影響と米国による継続的な封鎖と抑圧を受けて、今後3年から5年間の世界経済の改善はならず、さらに新型コロナの影響もあり、世界のどの地域においても明るい要素がまったくない。そして消費能力は大幅に減退する中で、我々の生産は供給だけではなく、市場からの圧力を受けることになるだろう。」

参照:「まず2年生き延びる」ファーウェイ創業者の発言に中国経済人が震えた理由
https://diamond.jp/articles/-/309119

一経営者の発言が、大規模なストップ安にまで繋がったのは、同氏の発言が多くの人が抱いていた不安心理に突き刺さったからだと言える。

「戦争の影響と米国による継続的な封鎖と抑圧を受けて、今後3年から5年間の世界経済の改善はならず、さらに新型コロナの影響もあり、世界のどの地域においても明るい要素がまったくない。」

仮に、この「米国による継続的な封鎖と抑圧」が中国経済独自の事情であったとしても、中国経済の低迷から日本経済が影響を受けないことは望めない。

とはいえ、「米国による継続的な封鎖と抑圧」を受け続けてきた国々は20カ国ほどもあり、ロシアによるウクライナ侵攻、それに対する米側のロシア制裁強化をきっかけに、団結する動きを強めている。

例えば、北朝鮮はロシアに武器を売却し、自らは新法を設定して、先制攻撃を含む核兵器使用を明文化した。

以下にロイターの記事を部分訳して引用する。

北朝鮮の新法、先制攻撃を含む核兵器使用の要点を述べる。北朝鮮は新たな法律を設定し、正式に自衛のための先制核攻撃を使用する権利を明記した。金正恩委員長は、新法により核保有が「不可逆的」となり、非核化交渉が禁じられると述べたと、金曜日に国営放送が報道した。

この動きは、2018年に当時のドナルド・トランプ米大統領や他の世界の首脳たちとの歴史的な首脳会談が、金に北朝鮮の武器開発を放棄させる説得に失敗した後、2017年以降で初めてとなる核実験の再開準備をすすめているようだと観測筋が述べるなかで起きた。

「核兵器政策法制化の最大の意義は、我々の核兵器を巡っての交渉ができないという引き返せない一線を引くことだ」と、金は議会での演説で述べた。そして、たとえ北朝鮮が100年の制裁に直面しても、核兵器を放棄することはないと付け加えた。

核攻撃の引き金を引くシナリオの中には、差し迫った核攻撃の脅威がある。同国の指導者、人民、国家体制の存在が脅威にさらされた時、あるいは、戦争中に優位に立つためなどの理由がある。

新法はそれを超えて、もし大量破壊兵器よるものや、指導者を含む同国の「戦略的目標」に対する差し迫った攻撃が探知された場合には、先制核攻撃を可能にするとしている。

「核兵器が地球上に存在し、帝国主義が残り、また米国とその追随者たちの我が共和国に対する作戦行動がなくならない限り、核武装を強化する我々の作業が止むことはないだろう」と、金は述べた。

参照:New N.Korea law outlines nuclear weapons use, including preemptive strikes
https://www.reuters.com/world/asia-pacific/nkorea-passes-law-declaring-itself-nuclear-weapons-state-kcna-2022-09-08/

関連:ロシアは北朝鮮の迫撃砲を購入している。米情報局
Russia Is Buying North Korean Artillery, According to U.S. Intelligence
https://www.nytimes.com/2022/09/05/us/politics/russia-north-korea-artillery.html

米国のロシア政策を支持していないのは被制裁国だけではない。

トルコはNATO加盟国でありながら、ロシアとの関係を強めている。インドは中国への対抗から日本や米国と軍事的な関係を強めながら、ロシアとの関係も深めている。かつては中東で親米の盟主だったサウジアラビアはOPEC+を通じて、ロシアとの関係維持を譲らない。

また、中南米では親米政権の要であったコロンビアに左翼政権が誕生し、メキシコと共に、長らく米国の制裁下にあったキューバやベネズエラまでも加えて、中南米を米国の影響下から切り離そうとする動きが出てきている。

これはウクライナ戦争を、「ロシアの帝国主義的な拡大志向による侵略戦争」だとの、日本など米国の影響下にある報道を、それらの国々は信じていないことを示している。

「ウクライナ侵攻は短期間で終えられる」としたロシアに誤算があったかも知れないが、ウクライナ侵攻で「制裁を強化すればロシアは孤立する」と考えた米国にも誤算があったことになる。

つまり、米国に「組み込まれている国々」を除いては、世界はウクライナを2つの軍事大国の覇権争いの現場だと見ているのだ。つまり、米国連合と、ロシア・中国連合とが、本格的に対立し始めたのだ。

そして、インド、中近東、中南米などの国々は、これを機会に大国の影響下から逃れ、自分たち地域の利害を追求しようと動き出している。

世界は激動期を迎えていると言える。米中ロは外側は強国だが、内側から何が起きるか分からない。

先週もご紹介した、アマゾンのプライムビデオの「ウィンストン・チャーチル」と「ヒトラー ~最後の12日間~」を、是非ともご覧いただきたい。

前者は、英国の民主主義が描かれており、チャーチルが如何に政治的に孤軍奮闘して(国王と民衆の支持のもと)、ナチスドイツに対抗したのかが分かる。
参照:ウィンストン・チャーチル
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07FMKBFC7/ref=atv_hm_hom_1_c_E6DOit_16_26

後者は、独裁者というものが如何に自分以外の者を軽視し、自ら破滅を招いて行くかが分かる。
参照:ヒトラー ~最後の12日間~
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B00G884HDE/ref=atv_hm_hom_1_c_E6DOit_16_10

これらの映画で描かれていることは、イラクやアフガニスタン、ウクライナなどでも繰り返されてきたことだ。過去の話ではなく、今の世界のリーダーたちが明日にも採りかねないオプションの1つだ。実際に台湾海峡では軍事演習が繰り返され、日本は軍事予算を倍増し、北朝鮮は核兵器による先制攻撃を法制化した。

「まずは生き残ること、生き残ってこそ未来がある」と言えるのではないか?

資金運用面では、こうした環境下では、保有よりもトレーディングが機能する。如何に機能するかは、遠くない将来にご紹介する。

<講師プロフィール>

矢口新(やぐち あらた)

1954年生まれ。
金融業界の第一線で30年以上にわたり活躍し続け、
プロディーラーにも師と仰がれる天才ディーラー。

東京・ニューヨーク、ロンドンと世界3大金融市場で活躍し、
さらには為替、債券、株のすべてに関わるという
非常に稀有なキャリアを持つ。

相場を動かすプロの裏の裏まで知り尽くしており、
投資を真剣に学びたいという意欲ある方々との交流にも熱心。

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