結果がすべて
相場は頭脳の格闘技だとも言われる。
私はトレーディングの技術面は自動車の運転に例えているが、
精神面では「戦」を念頭に置いている。
個人投資家としてのトレーディングは弱小軍団を率いて、
強大な敵と戦うようなものなので、それなりの心構えが必要なのだ。
勝ち負けがつくサッカーのようなスポーツも、
私はそうしたトレーディング、
あるいは「戦」の心理戦の側面からゲームを見てしまう。
そうした面からの、
日本の対ドイツ、対スペインの最も大きな勝因は以下の3点だ。
1、前半に1点取られ、それ以上は取られなかったこと。
2、後半に機動力を活かした総力戦にでたこと。
3、相手にとどめを刺せる仕事人たちがいたこと。
とはいえ、勝負事は結果がすべてだ。
損失を積み上げてはトレーディングも成り立たない。
1、2、3のどれかが裏目に出ていれば、とんでもない采配だったと責められていたはずだ。
逆に、コスタリカ戦に勝ってしまっていれば、
E組4チームの様々な心理が変わってしまい、
ここまで上手くは運ばなかった可能性がある。
まさか、
森保一監督の采配が捨てゲームをつくるほど「リスクを取る」ものだとは思えないので、
その意味では、勝負運も味方した。
自分たちより体格で勝り、8割近くの時間ボールを支配されたことが象徴する技術面でも勝る相手に、勝つには「奇策」しかない。相手を油断させ、守りにまわらせ、奇襲でダメージを与えて、狼狽させることだ。
両試合とも、前半戦を見る限り日本に勝ち目はなかった。日本をなめていたという批評もあったが、当初はなめていなくても、45分間もあのような展開が続いたら、相手は油断してしまう。
相手は早々と1点先取して、ますます優位に立ったはずだった。ところが、日本はそれ以上の失点を許さなかった。相手にとっては簡単に取れそうに思えた追加点が遂に取れなかったのだ。
相手が1点を守る気になりかけた後半戦で日本は豹変した。奇襲攻撃でダメージを受けた相手は狼狽したようにも見え、反撃にも前半戦の自信と精度が欠けていた。前半戦でもう1点が遠かったことが、追いつく気力の邪魔もした。
こうした私の見方では、前半戦が0対0ならば、日本は後半戦に心機一転で攻めてきたであろうドイツやスペインに勝てなかったはずだ。心理的に1点を守らせるようにしたから、先手が打てて奇襲攻撃が効いたのだ。ここでも勝負運が味方した。
もちろん、そうした心理戦だけでは勝負にならない。格上相手からの猛攻に失点1だけで守り切る守備力と、反撃に転じては相手にとどめを刺せる仕事人たちが必要だ。
その点、奇襲攻撃を行い得点に絡んだ選手たちは見事だった。どのシーンも記憶に残る得点への流れだ。最後の決定力がないと言われ続けてきた日本のサッカーが、ドイツやスペインよりも決定力があったのだ。
人類の歴史は偉人伝を集めたものだとも言われる。良いも悪いも、たった1人の人間が周りを変え、歴史を塗り替えてきたのだ。1人の人間の力は意外に大きい。
部外者の勝手な見方では、私は日本のA代表に円熟期を迎えつつある三笘薫選手が加わったことで、ワールドカップ優勝さえ狙えるチームになったと見なしている。
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