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追い詰められた日銀が採れる政策

政府は日本銀行総裁に植田和男共立女子大教授(71)を
起用する方針を固めたようだ。


戦後初の経済学者出身の総裁となる。
副総裁には内田真一日銀理事、氷見野良三前金融庁長官を充てるという。


1月のブルームバーグ調査では、
次期日銀総裁の有力候補に植田氏は入っていなかった。


回答者数36人のうち25人が雨宮正佳副総裁を挙げていた。
日本経済新聞によると、政府は黒田氏の後任総裁として雨宮氏に打診したが、
同氏は辞退したという。


雨宮氏は2022年12月2日の参議院予算委員会で、
「全期間で同じレートだけ金利が上昇したら、日銀保有国債にいくらの評価損が発生するか?」の問いに、
「1%の金利上昇で28.6兆円、2%で52.7兆円、5%で108.1兆円、11%で178.8兆円の評価損になる」と答えていた。


また、21年度末の当座預金残高が563兆円なので、
政策金利を3つの階層のすべてで付利を1%ずつ引き上げれば、
日銀収支は年間5.6兆円悪化すると言われている。

 

 

日銀の異次元緩和は文字通り次元が異なる珍政策だった。国債の大量購入で、日銀の国債保有額は13年3月の125兆円から23年1月の583兆円へと4倍超に拡大、発行済み長期国債の5割以上を買い占めた。長期金利上限維持のための国債購入額は1月に23兆6902億円と過去最多となった。そうしたイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)政策は世界で日銀だけ、そして、マイナス金利政策を続ける唯一の中央銀行となった。

 

また、世界で唯一中央銀行が民間企業の株式を保有するETFの保有額も買い入れベースで1.5兆円から36.9兆円に増え、日銀は多くの上場企業の主要株主となった。

 

そうした異次元の力技で、少なからず国内景気の悪化を防ぎ、17万社を超えるゾンビ企業の増加や破綻を防ぎ、残高が1000兆円を超えた国債利払い費負担の急増スピードを減速させてきたが、同時に日銀収支は上記のように金利上昇には耐えられない体質となった。

 

その一方で、約40年ぶりの高水準にあるインフレの鎮静化や、国債市場や短期金利市場の機能回復、資金の調達・運用市場の正常化のためには、世界的にも異質な異次元緩和をこれ以上続けるわけにはいかない。また続けたくても、残高に限界がある国債を、これ以上買い占めることは時間の問題で出来なくなるのだ。

 

こうした異次元緩和の限界と弊害を知りながら継続することも出来ず、とはいえ、責任者の1人として自らの手で終えることは自己否定にも繋がることから、雨宮副総裁の進退は窮まっていた。日本経済のためには、誰かの手で異次元緩和を終えて貰うしかない。同氏は、「今後の金融政策には新しい視点が必要だ」と総裁就任を固辞したという。

 

 

各紙の報道による総裁、副総裁候補3氏の経歴を述べておく。

 

植田和男(うえだ・かずお)東大理卒。1980年マサチューセッツ工科大大学院経済学博士課程修了。ブリティッシュコロンビア大経済学部助教授、大阪大経済学部助教授を経て、93年東大経済学部教授。98年から2005年まで日銀審議委員。05年東大大学院経済学研究科教授。17年共立女子大教授。71歳。静岡県出身。

 

1998年4月、悲願の独立性が保証された新日銀法が施行された金融政策決定会合に参加。97年11月の山一証券や北海道拓殖銀行などの破綻による金融システム不安などを背景に日本経済が不況に陥る中、速水優総裁の下で実施されたゼロ金利政策や量的緩和政策を理論面で支えた。また、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)で運用委員会の委員長を務めたこともあるという。

 

 

内田真一(うちだ・しんいち)東大法卒。1986年日銀入行。新潟支店長、企画局長、名古屋支店長を経て、2018年理事。60歳。東京都出身。

 

2012年から企画局長を5年間務めるなど長く金融政策の企画・立案を担う企画畑を歩んできた。18年4月に理事に就任し、22年4月に再任された。理事の再任は、新日銀法下で中曽宏前副総裁、雨宮副総裁に次ぐ3人目となった。黒田総裁が就任直後の13年4月に打ち出した大規模な量的・質的金融緩和政策(QQE)や16年1月のマイナス金利政策、同年9月に導入した現在のイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)政策の企画・立案に企画局長として中心的な役割を担った。理事就任後は決済機構局も担当し、世界的に議論が高まる中央銀行デジタル通貨(CBDC)にも注力している。

 

 

氷見野良三(ひみの・りょうぞう)東大法卒。1983年大蔵省(現財務省)入省。バーゼル銀行監督委員会事務局長、金融庁金融国際審議官を経て2020年金融庁長官。19年9月から日本人初の金融安定理事会(FSB)規制監督常設委員会議長。22年からニッセイ基礎研究所。62歳。富山県出身。

 

 

植田氏は指名を受けた10日夜、記者団に対して、「金融政策は景気と物価の現状と特に見通し、先行きに基づいて運営しないといけない。その観点から、現在の日本銀行の政策は適切であると考えている。いずれにせよ、現状では金融緩和の継続が必要であると考えている」と語った。

 

また、22年7月に同氏は「日銀、拙速な引き締め避けよ」と題して日本経済新聞の「経済教室」に長文を寄稿、「日本における持続的な2%インフレ達成への道のりはまだ遠い」と指摘し、政策金利の引き上げには慎重な姿勢をみせていた。

 

また、22年5月には「金融政策の効果が出なかったのはなぜか。様々な構造問題により日本の成長力が下がり、中立金利(経済を刺激することも冷やすこともない金利)が低下したためだ」と述べたという。

 

19年10月のインタビューでは、「日銀はすぐに実行できて効果の大きい政策をほとんど持ち合わせていない。だから金融緩和だけでなく、同時に財政出動で支えてもらうのが一番良い選択肢ではないか」と答えたという。

 

 

こうした総裁、副総裁候補3氏の経歴、植田氏の発言からは、「今後の金融政策に新しい視点」が得られるとは考えにくい。むしろ、雨宮氏よりも異次元緩和継続に積極的かも知れない。

 

とはいえ、異次元緩和は遂行面でも弊害面でも既に限界が近付いており、継続不可能なのは明らかだと言っていい。急ブレーキで衝撃が起きないように、徐々に正常化するしかないのだ。

 

私は、利上げの弊害は税制改革による(1988年度以前のように)景気刺激+税収増で補うのが最善だと見ている。また、時価で50兆円を超えるとされる保有ETFは、時間をかけてGPIFに移管するのがベストではないかと思う。その意味では、植田氏がGPIFの運用委員会委員長であったことは、何らかの含みがあるのかも知れない。

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