【2023年10月10日】江守哲のコモディティコメント
こんにちは、江守哲です。
コモディティのコメントです。
ゴールドや原油が急騰しています。
直前まではかなり軟調な動きになっていましたが、材料で上がり始めています。
その材料とは、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの軍事衝突です。
久しぶりに「地政学的リスク」がコモディティ相場を動かす状況になっています。
ゴールドの上昇の背景は、パレスチナのイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃を受け、安全資産とされる金に買いが集まったことがあります。
また、同じように安全資産である米国債が買われ、金利が低下したことも、金利のつかないゴールドを押し上げています。
ゴールドに関しては、今後も金利動向が重要になります。
これまでの下落は、米金利の上昇の影響がありました。
今週は9月19 〜20日開催分のFOMC議事要旨や米消費者物価指数(CPI)があります。
特に12日発表の米CPIは、今後のFRBの金融政策に直接的な影響を与えます。
インフレ率が鈍化していれば、利上げ観測が後退し、米金利が低下する可能性があります。
そうなると、ゴールドはさらに買われる可能性があります。
この点からも、目先はゴールドに要注目といえます。
私は今回の押し目で買い続けてきました。
一方、原油は、中東での紛争が拡大すれば、中東からの石油供給に打撃を与えうるとの懸念が台頭したことが材料になりました。
先週のWTI原油は8%超も下落していました。週間下落率では3月以来の大きさでした。
マクロ経済見通しの悪化で、世界需要を巡る懸念が強まっていたことが売り材料になっていました。
しかし、地政学的リスクの台頭で、いとも簡単に値を戻しています。
これが原油相場の怖いところでもあり、また収益機会でもあるといえます。
現在の状況が長期化すれば、原油相場は一段高になる可能性もあります。
7日には、ハマスがイスラエルに対する過去数十年間で最大規模の軍事攻撃を開始しました。
イスラエルはガザへの空爆を続けて報復しました。
関係筋によると、ガザに近いイスラエルの港湾都市アシュケロンとその石油ターミナルが軍事衝突を受けて操業を停止しているもようです。
一方、この戦闘で、サウジアラビアとイスラエルの関係改善を仲介しようとする米国の取り組みが頓挫する恐れがあります。サウジが米国と防衛協定を結ぶ代わりにイスラエルとの関係を正常化するというシナリオです。
サウジ当局は6日、イスラエルとの合意の一環として来年原油生産を拡大する意向をホワイトハウスに伝えたと報じられました。
イスラエルとサウジの関係正常化、さらにはそれを条件としたサウジの生産拡大の可能性が、軍事衝突で減少したとの分析もあります。
サウジとロシアは合計で日量130万バレルの自主的な原油供給削減を年末まで続けることで合意しています。
新たな混乱は、年内の持続が予想されている需給逼迫を悪化させるとみられています。
今回の衝突の影響で、米国の制裁にもかかわらず今年大幅に拡大しているイランの原油輸出が減速する可能性があるとの指摘もあります。ハマスの攻撃にイランが関与していたと米国が判断した場合、対イラン制裁をより厳しく適用することでイランの原油輸出への締め付けを強化することもあり得ます。
イランの原油生産は過去1年間で日量60万バレルに近い水準で増加しており、同国内外に貯蔵された原油が市場に販売され、サウジとロシアが主導している需給逼迫が幾分緩和されているとの見方もあります。
いずれにしても、今後の情勢の行方をじっくりとみていくしかありません。
ただし、今回は長期化する可能性もあります。
ロシアのウクライナイ侵攻や今回の件は、世界情勢が不安定になっていることを示しています。
コモディティの供給面に関するリスクを今後も注意深く見ていく必要があるといえます。
なお、投資判断はご自身の責任で行ってください。
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