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この株価上昇はバブル?

こんばんは、矢口新です。

3月にバブル後の最高値をつけた日経平均は、
4月に大きく下落、5月、6月と上値が重い展開が続いていた。

それが7月に入って急上昇、
更に高値を更新した。

7月1-5日の週には、
海外投資家が先物を含め今年2番目の大きさとなる
8810億円を買い越したと報道された。

海外投資家に加え、新NISA、年金などの機関投資家、
事業法人の自社株買いなど、総出の買いが株価を押上げたとされた。

とはいえ、
海外投資家による現物の買いは1837億円で、
先物買いが6973億円だった。

これは買いの主体が
投機筋だったことを示唆している。

日本取引所のデータによれば、
この週の現物買いは海外投資家の1837億円が最も大きく、
次いで、事業法人が1268億円、投資信託が1033億円、
その他法人が730億円、年金が518億円と続いた。

一方の売りは、個人投資家が4966億円、銀行が288億円、
生損保が273億円、その他金融が101億円だった。

それらを含めた委託計では
372億円の売り越しだった。

今年に入って株価は急騰したが、
1-6月の兆円単位の現物株の売買は、
買い手から大きい順に海外投資家が4.3兆円、事業法人が2.6兆円で、
売り手は年金が5.1兆円、投信が2.0兆円だった。

生損保は銀行と合わせて1.2兆円売った。
1-6月の個人投資家は341億円の売り越しで、
新NISAによる日本株押上げは見られない。

新NISAには1月以降、
毎月1.2兆円から1.5兆円ほどの資金が流入しているが、
買われているのは海外株が中心だ。

実際、人気ファンドは三菱UFJアセットの
全世界株式(オルカン)を筆頭にトップ15のすべてが海外株式投資だ。

一方、日本株ETFからは5月に1.2兆円が流出した。

6月もその勢いは続いており、アセマネOneの
日経225ノーロードオープンからは単体で291億円流出した。

これらの全てが示唆しているのは、日本株の急騰は投機的な先物が主導したということだ。そして、理解しておくべきことは、投機筋の買いは、必ず後日の売りを伴うことだ。つまり、7月の高値の更新は上昇トレンド入りしたことを意味するわけではない。むしろ、ミニバブルの様相が強い。

上昇トレンドが続いてきた米株でも、バブル崩壊の兆候ではないかと懸念されることが起きている。株価の急騰に警鐘を鳴らしてきたベテランたちが外されてきているのだ。

JPモルガン・チェースのチーフ・マーケット・ストラテジストでグローバル調査部門共同責任者のマルコ・コラノビッチ氏が、19年務めた同行を退社することが明らかになったという。同氏は株急落が差し迫っていると警告を発していたが、現実にはS&Pとナスダックが最高値を更新し続けた。

また数カ月前には、株価上昇に懐疑的だったモルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン最高投資責任者(CIO)が、同社のグローバル投資委員会の委員長を降りた。

両氏に限らず、伝統的な投資で実績を上げてきたファンドマネージャーやストラテジストたちはこのS&Pとナスダックの上昇に付いてこられていない。何故なら、昨年は偉大なる7銘柄を持っていたかいないか、今年はエヌビディアに代表されるAI銘柄を持っているかいないかが、決定的にパフォーマンスを左右しているからだ。

実際、このところのエヌビディアは連日で売買高がトップ、エヌビディアが上がればS&Pとナスダックが上がり、下がれば両指数共に下げるようになっている。また、このところ売買高上位に戻ってきたテスラを、元の債券王ビル・グロース氏は仕手株だと呼んだ。これでは、ストラテジストやCIOがいらないどころか、そうしたベテランたちはかえって足を引っ張ってしまう。何故なら、大手の機関投資家は少数銘柄を大量保有することを正当化できないからだ。

大手投資家は自分の売りで相場を崩すことを恐れる。持ち過ぎていると評価益が上がっても、その値段では売れなくなる。

例外はウォレン・バフェット氏が率いるバークシャーのポートフォリオで、3月末の株式ポートフォリオの40.81%に相当する1354億ドルをアップル株1社に投資していた。これでは、アップル株が値下がりすれば、ポートフォリオ全体が大きく悪化するだけでなく、相場を崩すことを恐れて、簡単には売れない。とはいえ、バークシャーの現金保有高は12月末時点で過去最高の1676億ドルだったので、最悪の事態は回避できる。こんな芸当はバフェット氏にしかできないのだが、こうした一点買いはもはや投資というよりも投機に近い。

これまでもバブル期には多くのベテランが外されてきた。通貨危機やドットコム・バブル、サブプライム・バブルなどでも、異常を感じたベテランたちは警鐘を鳴らさないまでもバブルから離れようとしてきた。しかし、バブルから離れれば、パフォーマンスで見劣りする。

現状を例に取れば、エヌビディアを増やした者が競争に勝ち、減らした者は負ける。S&Pは4-6月期に前期比3.9%高と、3四半期連続で上昇した。このうちエヌビディアがS&P500の時価総額増加額のうち約4割を占めた。一方、ベテランたちはエヌビディアの比重が高まり過ぎるリスクを排除するために、保有残高を減らしがちだ。持ち過ぎると売れなくなり、また、どんな上昇も永遠には続かないからだ。そして、バブルが弾けると、エヌビディアしか知らない者たちも消えていく。

今の相場がバブルだとすれば、その始まりはコロナだ。世界中の政府と中央銀行がコロナ期に止めた経済の損失補填と活性化に、大量の資金を供給した。しかし、その巨額資金は止められた経済では吸収できないので、モノや資産の購入に充てられた。インフレ率が急上昇し、資産価格も急騰、随所でバブルが発生した。唯一無二だとは言えデジタル上だけにしか存在しないNFTに大金を投じたことや、白紙委任でプロに大金預けたSPACなどはその典型だ。

ところが、米国では一時は2兆ドルを優に超えていたコロナ期の過剰貯蓄がついにマイナスゾーンに低下した。また、クレジットカード・ローン、自動車ローンの延滞率が上昇してきている。奨学ローンにおいてはその免除が選挙公約になるほど追い詰められてきている。NFTブームやSPACブームはもはや昔話で、プライベートエクイティですら、「たそがれ迫るPE業界」(ブルームバーグ)などと取り沙汰されているのだ。

NFTやSPAC、あるいは仮想通貨などと違い、AIには中身がある本物だ。コロナバブルが弾けても生き残るだろう。しかし、値動きが示しているように数社だけが他の産業のすべてに勝ると考えることは、典型的なバブル思考なのだ。同じように7月の日本株の急騰にも中身が見えないでいる。

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