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株価の急変動と生き方

こんばんは、矢口新です。

7月11日に4万2427円の史上最高値をつけた
日経平均は翌日から急落、

26日は4月下旬以来の安値3万7667円で引けた。

6月後半からの急騰、
高値をつけてからの急落に至った政治や経済の要因は
メディアに出ている解説者たちに譲って、
私は「誰が」こうした急変動を起こしたかを「再度」解説しておく。

何故なら、
相場を理解するには実際の市場参加者の動向を知ることが不可欠だからだ。

日経平均が4万円台で安定してきていることで、
日本株の復活のみならず、日本経済の復活を唱える人が増えてきた。

とはいえ、日本経済が前回バブル1989年当時の経済規模世界2位、
日本の競争力が世界ランキング1位、
日本企業の時価総額が世界のトップ10に7社などといった
水準に戻るとまで考えている人たちはほとんどいないだろう。

では、
せめて下げ続けてきた各種順位に反転する望みが出てきたのだろうか?

私はそうも見ていない。1989年度の税制改革以降の落ち込みを緩和してきたのは
日銀による超低金利政策と膨大な資金供給、株式の購入などだ。

それは確かに日本経済が生き延びる手助けにはなったのだが、
本質からの目くらましになっただけに留まらず、日本を弱体化させた。

例えれば風雪に耐え、
あるいは他者との競争に備えて身体を鍛える代わりに、
ぬるま湯につかって栄養剤を与えられ続けたために、
筋肉が落ち足腰が弱ってしまったのだ。

また、栄養剤の大量投与には相応のコストがかかり、
副作用も大きいように、日銀の政策による弊害も大きなものだった。

そしてそれが、身体のサイズは同じでも
脂肪や内臓疾患で体力も機能も大幅に低下した今になって、
もうこれ以上は続けられなくなったのだ。

これらの点はここで何度も繰り返してきており、
拙著の大筋もそれに沿ったものなので、今更ここでは繰り返さない。

参照:日本が幸せになれるシステム・65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方https://www.amazon.co.jp/dp/B09NRWJLY7/

今回取り上げたいのは、ではどうして日経平均が4万円台に乗ってきたのか、それが継続可能かということだ。

(中略)

このところの高値更新はヘッジファンドによる投機資金によるものだが、長期的に前回バブルから今回の水準まで株価を押し上げてきたのは外国人投資家と日本銀行だ。日経新聞の報道資料では、外国人は約75兆円を購入、日銀は37兆円購入した。一方で、押し下げたのは主に個人投資家で約75兆円を売却した。

(中略)

こうした売り買いで株価が4万円台を回復したことで、この売買構造に大きな変化が起きた。

買い手の大きな主役の1人だった日銀が購入の停止を決めたことだ。これは時間の問題で出口戦略を考えることを示唆している。つまり、今後の日銀は何らかの形で売り手に回る。

また、金融庁の指導で損保が6兆円以上の政策株の売却を決めた。これに刺激されて3メガバンクが合わせて10兆円の残存政策株売却を加速させると言明した。このことは「損保よりもはるかに大きい生保の政策株」の売却も加速される可能性を示唆している。少なくとも買い手に転じる可能性は消滅した。つまり、金融機関はこれまで以上の売り手として株価を抑えに来る。

(矢口お詫びと訂正:生保の株式投資は純投資が主体で、政策投資は損保よりも少ない)

では、事業法人の自社株買いは続くだろうか?

自社株買いは配当と並ぶ株主還元の手法だとされている。実際に買う株価押上効果に加えて、発行済み株式数が減ることは概ねファンダメンタルズの数値を改善させるので、株価にプラスだと言える。赤字でも借金して自社株買いするケースもあるが、これは財務の悪化を伴う不誠実な株高策で、通常は十分な利益を背景に行うものだ。

では、今後も最高益が更新され続けられるだろうか?

もちろん、可能性は常にあるが、逆風もある。1つ目は金利高、2つ目は賃上げやインフレなどによるコスト高、3つ目はどの国も財政赤字、公的債務が拡大しているので、増税や関税率引き上げ、懲罰金などで歳入増を図る可能性が高まっているからだ。

バブル時はほとんどの人が強気だ。日本株の復活のみならず、日本経済の復活を唱える人が増えてきたのは驚くに値しない。しかし、マインドやセンチメントで株価や経済が強くなるのならば、皆が強気なのに崩壊するバブルは説明がつかなくなる。敗戦もなくなる。世の中はそんなものでは動いていない。マインドやセンチメントが先行することはなく、現状を追認するだけなのだ。

これまで何度も述べてきたように、日本経済の先行きはここからが正念場だ。また、日銀を含めて日本の機関投資家が売り手としての勢いを強める中、外国人がいつまでも強気でいるとは思えない。加えて、借金による過剰資金に支えられた海外株のバブルもいつまで続くかも分からない。

一方で、先週にもS&Pが最高値を更新したように、まだまだ投機筋の勢いは強い。しかし、日本株の売り手買い手を分析していると、一時的に5万円台に達することがあっても、長期的に4万円台を維持できるとは思えない。売り手は構造的、買い手は投機的だということで、私は現在、日本株の保有には興味がない状態だ。

(引用ここまで)

関連:日経平均4万円時代の投資戦略と戦術(2024-03-11)
https://ameblo.jp/dealersweb-inc/entry-12843924641.html

このところの株高も、企業業績の改善も、最も大きな要因を上げればインフレだ。中身は実質的な経済規模が縮小しているように、世界的な競争力が1位から38位にまで低下しているように、楽観できるものではない。

また上記のコメントや、特に有料メルマガを含む投資家向けのコメント(7月16日の「この株価上昇はバブル?」など)では事あるごとに繰り返しているように、日本株の「売り手は構造的、買い手は投機的」だ。そのことが暗に示しているのは「長期的に4万円台を維持できるとは思えない」というのは、相当に抑制した表現であることだ。

とはいえ、株価が下がれば年金は買い手に回る。何故なら、GPIFは日本株、外国株、円建て債、外貨建て債をそれぞれ約25%ずつ保有しているからだ。そのため、値上がりでどれかの比率が上がれば売りで、値下がりでどれかの比率が下がれば買いで、資産の再配分(リバランス)を行う。日経平均が最高値に至る過程で年金が売り続けてきたのは、日本株の値上がり率が他の資産を上回っていたためだ。

6月末のトピックスは2809円63銭、先週末は2699円54銭なので、3.9%下落した。これだけを見ると、年金は日本株を買わねばならない。一方、円建てにしたS&Pは(5488.48X160円83銭)88万2712円から、(5459.10X153円72銭)83万9173円となり、4.9%の下落だった。外国株はもっと買う必要があることが分かる。また、ドル円だけでは4.4%の下落だ。これは外貨資産を買い、円資産を売る必要が出てきたことを意味する。ごく単純化すれば、年金にはそのようなニーズがある。

一方、米10年国債は約1%の上昇で、円建てにすれば3.4%下落。日本の10年国債はほぼ変化なし。つまり、円建てにした4資産は、米株4.9%下落、日本株3.9%下落、米国債3.4%下落、日本国債は変化なしなので、単純化したリバランスでは、円建て債の売り圧力が強まり、他の3資産の買い圧力が強まっていることになる。

一方、上記4月初めのコメントでは、「先週にもS&Pが最高値を更新した」とあるが、今回は米株も崩れた。「借金による過剰資金に支えられた海外株のバブルもいつまで続くかも分からない」というのが顕在化したというより、株高が特定の銘柄に集中し過ぎているために、特定の材料で指数まで振れてしまうからだ。極論すれば、エヌビディアが売られれば、米株が下がる。これは危険な兆候だ。

相場はいつも難しいが、アプローチする手掛かりはいくつもある。しかし、特定の銘柄にここまで資金が集中してしまうと、自分もそれについていくか、離れるかでパフォーマンスが大きく変わる。そうしたことこそがバブルの兆候なのだ。

一方で、「借金による過剰資金」は日々のボラティリティをも高めている。短期トレードは易しいとは言わないが、自分の力さえ高めれば必ず収益に繋がる。そこでは、ボラティリティの高さは期待収益の大きさを意味している。短期トレードで損するのは、政治経済など世間のせいではなく、自分の力が足りないせいなのだ。チャレンジ心と努力次第でどうにでもなるのだ。

この株価の急変動により、自分たちがどう生きるかが試されている。同時に、大きくプラスにもマイナスにもできる機会の高まりを意味しているのだ。

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