(矢口新)トランプ関税で円高?
こんばんは、矢口新です。
5月の経常収支は3兆4364億円の黒字だった。
前年同月から4869億円拡大した。
貿易収支(モノ+サービス)は3212億円の赤字だった。
モノの貿易収支は5223億円の赤字で、前年同月から半減した。
輸出入共に減少したが、エネルギー価格の下落が輸入金額をより大きく押し下げたために、赤字額が減少した。
一方、サービス収支は2011億円の黒字だった。
インバウンドが活況で旅行収支の黒字転換が貢献した。
貿易赤字でも経常黒字なのは、
依然として第一次所得収支が4兆2555億円の黒字と、
過去最大規模のためだ。
海外投資による利子・配当収入が増加した。
一方で、政府などによる海外への「無償資金協力、寄付、贈与」の受払等を意味する第二次所得収支は4979億円(約0.5兆円)の赤字だった。
この赤字はアベノミクスまでは年間でも1兆円内外の赤字だったのだが、
外交好きの元首相の下、
2015年度に初めて2兆円を超えた。
そして、何故か後継首相たちの下でも増え続け、
22年度に初めて3兆円を超え、23年度に初めて4兆円を超えるなど、
隠れた大赤字になりつつある。
今年度も、外交嫌いとされる現首相の下、「無償資金協力、寄付、贈与」の赤字は
5兆円を超える勢いだ。
ちなみに、ドル円レートの長期トレンドには、
日本の貿易収支が最も大きな影響を与える。
日本が貿易黒字を謳歌していた2010年度まではしつこく円高圧力が残っていたが、
赤字体質となった2011年度以降は円安圧力となっている。
貿易黒字とは輸出金額が輸入金額を上回ることなので円買いが円売りを超え、
赤字では円売りが円買いを超えるからだ。
貿易実需は資本実需に比べて金額は小さいものの、売り切り買い切りとなるので、
長期トレンドへの影響は大きい。
この5月は輸出入共に減少したのだが、
2024年12月の輸出額は前年比2.8%増の9911億円と過去最高を記録していた。
また、25年2月には前年比11.4%増と加速していた。
しかし、3月以降のトランプ関税騒動で、3月の輸出金額は3.9%増に、
4月は2.0%増にと伸び率が減速し、
5月には1.7%減と、マイナスに転じたのだ。
5月の輸出は対米が前年比11.1%減、対中も8.8%減となった。
EUやロシア、ASEAN向け輸出は増加したが、
全体では米中への落ち込みを補えなかった。
トランプ関税は対米黒字が大きい国々に特に厳しい。
これは日本に対しても、対米輸出を減らし、
対米輸入を増やすことを求めていることを意味する。
つまり、普通に考えて日本の貿易赤字は今後拡大すると見ていていいだろう。
これはドル需要、円安要因の増大を意味している。
また、拡大を続けている第二次所得収支も、
「無償資金協力、寄付、贈与」という性質上、
帰って来ない円売りの可能性が高い。
これは隠れた外貨需要、円安要因が増え続けていることを示唆している。
一方で投機筋は、
トランプ関税は円高に繋がると見て、
2月初めからドル売り円買いにポジションを傾けている。
ポジションの大きさは5月以降減少を始めたが、それでも過去の水準と比べれば、とんでもないドル円ショートをまだ抱えている。
このポジションは日米金利差が逆転でもしない限り、
近い将来にも買い戻されることになると見ていていい。
円安に備えたい。

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