印象だけでは分かったとは言えない世界 ー1ー コメの値段
こんばんは、矢口新です。
2024年春まで2000円前後だったコメの平均店頭販売価格は、
2025年10月27日―11月2日の週に
5キログラム当たり前週比+0.6%の4,235円だった。
販売数量の31%を占めるブレンド米等は
+1.7%の3,556円、残る銘柄米は+0.4%の4,540円だった。
平均価格は6月以降、
随意契約による政府備蓄米の流通により低下。
8月以降は新米の出回りや
随契備蓄米の販売がピーク時に比べ減少したことを背景に
上昇した後、横ばいで推移している。
販売数量は、6月、7月は前年を
上回る水準で推移したが、
8月以降はピーク時に比べ低い水準が継続している。
参照:スーパーでの販売数量・価格の推移(農水省)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/ksppos.pdf
一方、コメの国際取引市場はコメ余りで、
価格が急落している。
国際連合食糧農業機関(FAO)は
世界の25-26年度のコメ生産量を
前年比0.9%増の5億5150万トンと、
過去最高を更新すると見込んでいる。
コメ生産国のほとんどは自給自足が原則で
国内消費を最優先にしているが、
豊作で余剰分が市場に出回り、
国際取引量の8割以上を占める長粒種の
インディカ米8月の価格指数は前年比-29%の103.7と、
3年8カ月ぶりの安値となった。
コメの在庫は25-26年度に2億0950万トンと
過去最高水準に達する見込みで、
現状では価格が底値を打ったとは言えない。
もっともコメの年間消費量は5億4910万トンなので、
在庫は4.6カ月分と、充分過ぎるとは言えない量だ。
25-26年度の生産量と消費量の差は余剰だとはいえ
240トンしかないので、わずか0.4%の生産減少で
も在庫が減少していくことになるからだ。
一方、将来的に異常な高温が続く場合には、
世界のコメの収穫量は最大で40%減少するとの試算がある。
このことは0.4%程度の生産余剰でも価格が
急落する国際市場が大幅な不足となった場合には、
危機的なほどの価格上昇に見舞われる可能性があることを示唆している。
また、世界のコメ生産国はインド、
中国、バングラデシュ、インドネシア、ベトナムの順で、
いずれも人口が多い大消費国であるうえに、
異常な高温にさらされるリスクの大きい国々だ。
このことは、最悪の試算が現実のものとなった場合には、
大輸入国に転じる可能性すら示唆している。
国際価格とはかけ離れた高値で
国民の生活を圧迫し続ける日本のコメ価格だが、
それでも備蓄米の放出や輸入米が
価格上昇の歯止めとはなってきた。
とはいえ、その備蓄米も大幅に減少し、
国際価格の低迷がいつまでも続かないとなれば、
そうした歯止めの期待もできないことになる。
コメ生産国のほとんどは自給自足が原則で
国内消費を最優先していることを鑑みれば、
日本も増産し、余剰分は備蓄や輸出に回すことが
食の安全保障に繋がることになると考えるのが自然だと言える。

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