半年分の上昇を消す市場心理の怖さ

From:戸松信博
自宅デスクより、、、

おはようございます。
戸松信博です。

 

今週の相場見通し

たった5日で半年分の上昇を消す市場心理の怖さ
日経平均は週間2,244円安、全ての日で全業種全面安に。

<目次>
(1)グローバル相場見通し:
たった5日で半年分の上昇を消す市場心理の怖さ
(2)金や金鉱株も下げ、全てのアセットクラスが軟調に
(3)日経平均は週間2,244円安、全ての日で全業種全面安に
(4)今週の戦略

(1)グローバル相場見通し:
たった5日で半年分の上昇を消す市場心理の怖さ

 

【週間騰落率】
ドル(対主要通貨加重平均) -1.14% (98.13)
株 (S&P500指数)     -11.49% (2,954.22)
商品 (CRB総合指数)    -8.70% (159.45)
金(ニューヨーク先物)   -4.98% ($1,566.70)
原油(WTI)         -16.15% ($44.76)
債券(米10年債利回り)   -31bpts (1.16%)

 

□ニューヨークダウ・ナスダック推移

先週の米国市場は大荒れで、世界株安を引き起こす震源地となりました。新型コロナウイルス拡大懸念によって先々週末あたりから目を覚ましたように下げ始めていたのですが、一旦下げ始めると勢い止まらずという様子でした。

 

週間の下げ幅は、S&P500▲11.49%、ダウ▲12.36%、ナスダック▲10.54%で、2008年金融危機以来の下げ幅となります。

 

米国株に関しては2019年9月5日の上昇のフォロースルーが入ったところで「上昇転換」としており、以降は米中通商協議の合意期待から上げに上げ、「出来すぎ」「バブル的」と書いてきたほど最高値更新を続けてきました。しかしその9月5日以降の上昇幅全てを、ダウとS&P500は僅か5日間の下げで消し去ったのです。ナスダックに関してはまだ9月5日の株価を僅かに上回りますが、いずれにせよ半年間の上昇トレンドを瞬時に消し去りました。

 

個別ではアップルが週間▲12.7%安と下げをリードしました。同社は新型コロナウイルスによる中国サプライチェーン寸断によって1-3月期の売上予想が未達になると警告していたのですが、これにこだまするようにマイクロソフト、マスターカード、ペイパルなどが同じ理由で売上減速の警告を発しました。マイクロソフトは週間▲9.3%安でした。

 

そのような警告を出していなくても、アマゾン▲10.1%、フェイスブック▲8.4%、アルファベット▲9.7%安と崩れ、極めつけはバブルと称してきたテスラが▲25.9%安となりました。エヌビディアは終盤50日線で反発しましたが、直前の高値から20%下げました。

 

高値を更新してきた半導体セクターもアドバンテスト・マイクロ・デバイシズが▲14.8%安となるなど総崩れでした。また長期金利が過去最低を大きく更新し、銀行最大手のJPモルガンチェースが▲14.5%、バンクオブアメリカが▲17.1%安と厳しい下げになっています。JPモルガン以外もダウ構成銘柄の金融株は大幅安で、アメックスが▲18.5%安となるなど、ダウの下げ幅を大きくしました。

 

ダウで連日1,000ドル超の下げとなったことが注目されますが、むしろ先週、最も注目したいのは、下げ幅が一番少なかった2月26日(水)です。

 

その前の2日間で暴落し、米国株は2/24日(月)の大幅安で下げのフォロースルーが入って下落転換と判断できます。そして流石に26日(水)の朝は反発から大きく上げて開始されていました。ダウはこの日一時+460ドル超上げ、ナスダックも前日比+2%となる場面があるなど、ほっと一息かと思われました。

 

しかし、終値でダウは▲123ドル安と下げに切り返して終わり、ナスダックも大幅上昇を保てず▲0.2%安とマイ転しました。そしてこの日の出来高に注目ですが、大幅安となった月曜日や火曜日より増えたのです。

 

この水曜日の「上がったところで売り叩き」というアクションは重要です。出来高が大きいことから売り手は機関投資家など大口です。つまり月、火と大幅安で危機を感じ、ただ暴落中は売りたくなく、次に上がったところは売ってやろうと身構えていたのです。チャートでは長い上髭がその痕跡となります。

 

売り需要の大きさがわかり、こうなると一段と慌てて全面安展開になりやすく、27日(木)はダウが過去最大となる1,190ドル安となりました。

 

しかし、28日(金)は一時1085ドル安くらいまで下げたところから猛烈に挽回し、パウエルFRB議長が利下げの可能性を示唆したこともあり、終値では357ドル安に収まりました。ナスダックも一時3.5%安と大幅続落だったところから+0.01%へとプラ転して終えています。26日(水)の反対のようなアクションで一旦の底打ちの期待を持てます。

 

利下げ期待も心理ですが、5日間の大下げも相場心理の変化によるものでしょう。5日間で日米欧の時価総額が600兆円ほど吹っ飛んだのですが、世界の実態がたった5日でこれほど激変したわけでありません。1週前も大体今と同じ程度に悪く、人・モノが止まりだした1月末から徐々に悪くなってきたものです。

 

しかし、米国は対岸の火事を見ているように、最高値を更新し続けました。そしてナスダックの移動平均線からの乖離率が限界となったところで心理が180度変わると、一変にこのようなパニックになってしまった感じです。

 

「コロナウイルスは一時的だから全く大丈夫」という相場解説者も多くいましたが、その心理が蔓延していたのが高値を舞っていた時の米国市場です。しかし「これは大ごとになる、経済を大きく下押しする」と警告していた解説者も、まさか5日でここまで下がるとは想像できなかったでしょう。経済指標は読めても、相場心理の変化は読めないのです。

 

(2)金や金鉱株も下げ、全てのアセットクラスが軟調に

□米国のイールドカーブ

先々週に30年債利回りが史上最低を付けるなど、債券市場はコロナウィルスによる懸念や不安を一足先に示していましたが、先週は10年債利回りも大幅に史上最低を更新しました。同利回りは週間31ベーシスポイントも下落して1.16%となりました。米国もずっとあとに日欧と同じく1%割れからゼロ金利へと向かうのか、銀行株の大幅な(相場以上の)下落は気になるところです。

 

各年月の満期別利回りを結んだイールドカーブは、米中貿易戦争で悲観の極だった昨年8月に逆イールドを形成し、弱気形状でした。

 

そこから年末までにFRBが3度の利下げを行い、景気腰折れの予防はされたとの認識で、短期の利回りは下がったものの、長期金利は景気回復を見越して大きく上昇し、右肩上がりの強気形状に戻りました。

 

しかし、コロナウィルスをいち早く織り込んだ債券市場は、2月21日までに再び弱気形状を見せていました。そして株価の崩れとともに8月と同じような形状に戻りました。ただし金利水準は今後の利下げを織り込むように8月より一段と低くなっています。

 

先々週までは異なる2つの世界が混在するようだとして様々な違和感ありましたが、今は株式、債券、そして株価以上に大幅安となった商品、円高とすべて弱気を示し、ある意味一体感があります。

 

金が安全資産として買われていましたが、先週は5%安と反落しました。米国上場の金鉱株指数は、それまで上昇していた反動もあって15.4%の大幅下落です。2008年金融危機の際も、当初金や金鉱株は逃避的に買われていましたが、最後は一斉に全ての資産が売られて大幅安となりました。

 

(3)日経平均は週間2,244円安、全ての日で全業種全面安に

日経平均 21,142.96円 週間-2,244円 *過去最高値まであと+84%要

□日経平均

相場判定(長期):上昇トレンド継続中(2019/11/02~)
相場判定(短期):下落トレンド継続中(2020/01/27~)

注目セクター : なし

 

これまで米国株高や円安にも関わらず、なかなか上昇転換できない日本株に違和感があるとし、前回の配信では不穏な空気を警戒してもいましたが、まさか1週間でこれほど下げるとは思いもしませんでした。

 

週間の日経平均は2,244円安で、全ての日で全33業種が下がる全面安の週となりました。TOPIXは10%安で、8月末の米中懸念による底時点と同水準にまで戻しました。マザーズ指数は週間15%安、8月末の水準をさらに17%も下回ります。逃避的に買われていたリート指数も10%の大幅安と全面安でした。

 

商いは3兆円台、4兆円台と今年最大規模に増加していますが、これは売り圧力が拡大していることを意味します。東証一部の騰落レシオは53.3を付けました。これは2008年リーマンショック後の10月の大混乱時に付けた数値とほぼ同じです。

 

業種別では不動産、証券、鉱業、金属などが先週は大きく下げ、米国と対照的に銀行は8%安程度で最もましな部類でした。

 

日本株については2月2日の配信で(短期)下落転換と判定しています。それ以降、米国株高に乗って2万4000円に迫る場面あり、上昇転換にリーチが掛かっていましたが、不思議なほど出来高が付いてこず、フォロースルー判定が出ないために、何度も上昇転換を見送ってきました。結果的にはこの不思議な価格と出来高の組み合わせが、非常に正しく相場を映してきたこととなります。

 

これで下げ位置からして昨年夏ごろの、貿易戦争で景気腰折れするという見方の株価位置となりました。このあと、新型コロナウイルスの影響で確実に非常に悪い経済指標と企業業績が出てきます。それをどう株価に織り込むかがポイントとなります。

 

ものすごく悪い数字が続くとしても、それは季節性の疫病による一時的なもので、需要が無くなっていない限り、暖かくなれば元に戻るはずです。そうなれば一気に株価もV字回復するでしょう。

 

現時点でこのシナリオがメインシナリオですが、非常に悪い数字が続く時期が、1-3月期くらいまでだといいのですが、長引けばコロナウィルスを機にこのままリセッション入りしてしまう恐れもまだ残っています。

 

もともと世界景気は積極的な金融緩和策もあって異常に長い景気上昇局面が続いてきました。もうそれは終盤で、いつかは終了して次のリセッションがそう遠からず自然に来るものです。もしコロナウィルスによる人・モノの停滞時期が長引けば、それを機にそのままリセッションに、予定より早めに入ってしまう可能性があるわけです。

 

あくまで短期の季節性疫病で春にも回復が見えるなら、従来通りPBR1倍の20,700円どころが底、或いは一瞬強く押す場面も想定して(18年初めのパニック時と同様)19,000円台というのが意識できる底となります。28日の安値は20,916円でした。

 

しかしずるずると経済活動の停滞が長引くことで需要や景気まで寒くなってしまうと(中国で一時的な売上激減に耐えられず倒産続出、設備投資の撤回など)、PBR1倍を割り込み、さらにPBRの元である純資産額まで減少するかもしれません。

 

このあたりはまだ現時点で見通すことができないため、現状は下落転換継続として防御優先で様子見を続けるよりないと思います。

 

(4)今週の戦略

 

週末のダウは357ドル安も1,085ドル安から大きく戻し、ナスダックは小幅にプラスに転じて終えました。シカゴ日経先物は大証終値比65円安い21,015円で終えています。

 

前回の配信で恐れていた通り、日経平均は50日線で跳ね返される形となりました。この先の展開は難しくなりそうですが、その時点の相場判定に沿って粛々と手を打っていきたいと思います。

 

歴史的な急落となり、騰落レシオや米国のプット・コール・レシオからも一旦の反発必至のところです。したがって今週は流石に一旦反発する見込みです。しかし、これで完全に底打ったなどとは思っていません。一旦上昇したあとに2018年末のように第二弾の下げ来ることも想定しておく必要がある局面と思います。

 

―戸松信博

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2 thoughts on “半年分の上昇を消す市場心理の怖さ

  1. 水口 政導

    戸松先生の世界経済情勢の分析は的確で非常に参考になりました。
    「第二弾の下げが来ることも想定するように」との一言が迷っている自分の投資活動に
    一つの方向性が見えました。
    有難うございました。

    返信
    1. 信博戸松

      いつもご覧頂き、ありがとうございます。
      現在は相場荒れていますので、気を付けてトレードなさってください。

      返信

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