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売り買いの判断

From 矢口新

相場は小さな判断の連続だ。

小さなことに、いちいち白黒をつけていく。

その小さな白点、黒点が集まって、
ちょうど白黒写真のような全体像の映像ができあがる。

そこに情緒の色付けをすれば、リアルカラーの映像になるのだ。
そのとき、判断する材料、判断する機会が多ければ、画素の多い鮮明な画像となる。

「判断しない」、「判断できない」、「興味がない」、「受け付けない」・・・。

そういったものが多く、自分で判断するものが少ないと、
画像はぼやけたソフトフォーカスなものにしかならない。

値動きや目先の材料だけでなく、市場の外にも興味を示さないと、
一部だけは鮮明だが、その周りは、ぼやけた不完全な映像しか得られないのだ。

運動能力の高い人とは、運動の中枢である脳の指示に、
筋肉などの運動の現場が正確に反応する人だ。

運動能力を高めるトレーニングとは、筋肉などの現場を鍛えるだけでなく、
より正確な判断材料を脳に送ること、またその材料をもとにした脳からの指示を現場の筋肉に伝えるのに、
伝達機関である神経などの中間組織の抵抗をできるだけ小さくすることだ。

中間組織の抵抗とは、脳からのスムースな情報伝達を阻む何らかの障害や、
副交感神経のように身体が身体を守ろうとする抵抗だ。

例えば、ボクサーが試合中に他所を見ていたり、
あるいは腸に活発な蠕動運動をされては動きが鈍るだろう。

また相手のパンチに無意識に目を閉じたり、
骨や筋肉、腱をかばって無意識にパンチ力を手加減していたなら、
なかなか効率的なファイトなどできない。

軍隊のように強い組織は、
運動能力の現場である兵士の判断基準を単純化させる。

すなわち「上官の命令は絶対」のように、
個々の兵士の判断を否定することで、効率的な行動を実現させているのだ。

作戦本部の命令が中間組織によって歪められたり遅らされたりすることなく、
正確かつ迅速に末端の兵士にまで行きわたるのが強い部隊なのだ。

ここで個々の兵士や中間組織が自らの判断で勝手気ままに動き出し、
出し抜いて攻撃を始める者もいれば、あるものは退却し、
あるものは戦線離脱するなどしていたら、強い軍隊が保てなくなる。

強い軍隊にする訓練とは、運動選手がその能力を高めるトレーニングに似たものだ。

現場の兵士は自ら判断する能力を奪われる。

そして、自ら白黒をつける必要がない、あるいはつけても無駄、
百害あって一利なしということになると、
物事に対する関心が次第に薄れ、どうでもよいことになっていく。

おそらく最強の軍隊の兵士は、局地的なものしか見ず、
関心も持たず、命令の遂行に関すること以外は非常にぼんやりした状態で戦っていると思われる。

これは身体の組織や軍隊だけでなく、学校や会社や国家にも当てはまることだ。

組織が効率的に動くためには、現場の能力を高めなければならない。

しかし、同時に現場にはどんな理不尽な命令でも従わせ、
自ら判断する能力や意欲を奪い取る必要があるのだ。

犬の調教とまったく同じだ。

犬の調教では、犬が右に行こうとすれば左に引っ張り、
止まろうとすれば進ませ、進もうとすれば止める。

つまり、
犬が自分の判断で行動しようとすることをことごとく否定して、服従させるのだ。

強い組織にいたエリートであるはずなのに、
組織を離れれば無能になってしまう人がいるとすれば、
彼は良き兵士であった(でしかなかった)ということなのだ。

このように考えていくと、
個人と組織、あるいは個と全体とは対立する関係だということが分かる。

お互いが自分の効率を追及すれば、どこかで衝突してしまうのだ。
共存するには、どこかに妥協点を見つける必要がでてくる。

妥協という言葉が嫌いならば「調和」と言い直そう。

個と全体だけでなく、個と個、組織と組織、国と国でも、調和する気持ちがなければ、
お互いを滅ぼしあう関係でしかないと言えるのだ。

投資は自立への道だ。

それは経済的な安定だけを意味するものではない。

人に頼らず自分で判断するという自立でもあるのだ。
相場への取り組み方や、考え方、手法などを人から学ぶことは必要だ。

しかし、判断までも人に頼ってはいけない。

ほとんどの場合、状況はむしろ悪化すると言える。

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