(矢口新)コロナ禍より大きかったコロナ対策禍?
こんばんは。
矢口新です。
2020年度の実質GDPは4.6%減と、
戦後最大の落ち込みでした。
これはコロナ対策として行った
経済の殺処分が主因だとみていいでしょう。
四半期毎の内訳は、2020年4-6月期が前年同期比10.1%減、
7-9月期が5.6%減、10-12月期が1.1%減、
2021年1-3月期が1.6%減でした。
期を追って概ね改善してきているのは、
財政、金融両面からの超大型の資金供給のおかげです。
資金供給の原資は借金です。
世界最悪の債務を抱える日本政府がつつがなく借金を重ね、
しかもそれを問題視する声がほとんど聞かれないのは、
日本の民間にはまだ資金があるからです。
家計(自由業を含む)や民間非金融法人の純金融資産を見れば、
まだ余裕がそこそこあることが分かります。
日本は主権在民なので、民を親、官を子に例えれば、
このことは親の資産を当てにして、
子が借金を積み重ねていることを意味します。
子の借金、政府債務の規模はGDPの2.6倍にもなり、
ベネズエラに次ぎ、世界第二位です。
政府債務がGDPの1.2倍を超える国は世界に18カ国しかありません。
子が自力で借金を返せる目途は全くなく、
親にもそれほどの稼ぐ力はもうないので、
いずれ親の資産を取り崩して、子の借金を返済することになるのは時間の問題です。
もっとも、他所からの借金は多くないので、
身内の帳簿の上だけで、資産の付け替えが行われることになります。
ここで拙著からの問題です。
【問題29】 膨らむ公的債務残高
日本の公的債務残高は2011年の東日本大震災後に
GDP比での過去最大を更新し、その後も増え続けています。
IMFの見通しでは、
2020年はGDP比260%を超えたとされています。
その前のデータに残る過去最大の債務比率は
第2次世界大戦終了時のGDP比200%強ですが、
その時の政府債務はどう解消したのでしょうか?
ちなみに、日清、日露戦争時とは違い、
第2次世界大戦時は世界相手に戦ったので、
外国からの政府債務はなかったとされています。
(複数回答可)
1.ハイパーインフレーションにより、債務(国債)の価値が事実上大幅に減少した
(高物価負担を国民に課した)
2.国民の預金封鎖を行った
3.国民への増税で賄った
【答え29】
1、2、3の全部
日清戦争、日露戦争、昭和金融恐慌、満州事変のころでさえ、
日本の公的債務残高はGDPをはるかに下まわっていました。
当時の日本のGDPはそれほど大きくなかったので、
絶対額は現在よりはるかに小さかったことを示しています。
第2次世界大戦では日本の公的債務残高は
GDP比200%超えまで急増しました。
戦後には貨幣価値が暴落、「1.ハイパーインフレーション」が発生しましたので、
1946年2月16日に新円への切替えを発表、
翌日の17日より「2.預金封鎖」し、預貯金を引き出せないようにした上で
最大90%課税するという「3.増税」を行うに至りました。
また、1946年3月3日付けで「旧円」の市場流通の差し止める等の金融制限策を実施し、新しく「新円」を発行しました。
そのため市民が戦前に旧円で持っていた現金資産は、
日本国債等債券同様にほぼ無価値になったのです。
以下の「内」にその時の状態を引用します。
「終戦時の累積政府債務は、そのほとんどが戦後の急激かつ大幅なインフレによって実質的 に解消された。1944年から49年にかけて、日本の卸売物価は約90倍となった。
その結果、政府債務残高は49年度末にはGDP比で19%まで低下したのである。
これは、直接・間接に政府への債権を持っていた国民にインフレによる事実上の税を大規 模に課すことで、累積した政府債務を一挙に縮小させたことを意味する。」
◇参照:日本政府債務、深刻度は大戦末期並み(岡崎哲二)
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO2842922022032018000000
(余談ですが、現在多くの国の中央銀行が検討や導入をすすめている「中銀デジタル通貨」 では、中央銀行がすべての国民の事実上の「口座」を管理することになる模様で、そうな ると預金封鎖や増税が瞬時に完璧に行えるようになると見ています。)
また、戦時中の窮乏生活自体が国民による
政府債務の負担だったとも言われています。
(引用ここから、URLまで)
戦費は税で調達するにはあまりにも膨大だから、
公債の増発によって調達されることが多い。
日清戦争以降の臨時軍事費特別会計の公債依存度を見ると、
日露戦争の時にも公債依存度は高かった。
この時は、外国からの借り入れが多かった。
しかし、第2次世界大戦では、
このオプションは使えなかった。
国内で調達された戦費のほとんどは、
日本銀行による国債の直接引き受けで賄われたのである。
日銀は、
国債を買った対価を日銀券というマネーを増発することによって支払う。
政府は、そのマネーを兵士の給与や食料・衣料品等の購入、
兵器・軍事物資等の購入に充てる。
(中略)
GNPに対する個人貯蓄の比率は、
1935年には13.8%であったが、
1944年に27.0%にまで上昇している。
そして、政府は国民にも「戦時国債」という名の国債を買わせ、
貯蓄部分も吸収したのである。
ところで、「第2次世界大戦の戦費は、戦後のインフレで賄われた」と
言われることがある。
戦時中に買わされた戦時公債は、
戦後のインフレでほぼ無価値になった。
この時に負担が生じたように見える。
確かに、国と国債保有者の関係ではそうだ。
しかし、国全体としては、
戦争の費用をこの時に負担したわけではない。
それは、戦時中に、生活を切り詰めることによって負担されたのだ。
◇参照:第2次大戦はどう賄われたか(野口悠紀雄)
https://note.com/yukionoguchi/n/n9ca9ea39a652
「国内で調達された戦費のほとんどは、
日本銀行による国債の直接引き受けで賄われたのである。
日銀は、国債を買った対価を日銀券というマネーを増発することによって支払う。」
こうしたことは、
黒田日銀が量的緩和によって大量の日本国債を購入し、
経済規模を超えるマネーサプライを行っていることで、現在の日本に再現されています。
戦後になっても、通貨が変動相場制に移行することになるニクソンショックや、
オイルショックなどがありましたが、
それでもバブル期までの日本の公的債務残高はGDP比50%強を上限としていました。
しかし、1990年に税収が事実上のピークをつけたことで、
債務の膨張を防ぐ手だてが事実上なくなったと言っていいでしょう。
<講師プロフィール>
矢口新(やぐち あらた)
1954年生まれ。
金融業界の第一線で30年以上にわたり活躍し続け、
プロディーラーにも師と仰がれる天才ディーラー。
東京・ニューヨーク、ロンドンと世界3大金融市場で活躍し、
さらには為替、債券、株のすべてに関わるという
非常に稀有なキャリアを持つ。
相場を動かすプロの裏の裏まで知り尽くしており、
投資を真剣に学びたいという意欲ある方々との交流にも熱心。
■ 本日の出来高急増銘柄
※上昇銘柄の推奨などではありません。
※投資の学校の全講師の手法に使える、
銘柄選びの考え方です。
なぜ、
出来高急増銘柄が注目なのか、その理由と、
本銘柄を抽出した根拠はこちら。
→ https://youtu.be/xAVWjxMIq4c
売買の際には、ご自身でチャート分析、
ファンダメンタルズ分析を行っていただき、
売買をする際には自己責任にてお願いします。
【1】商船三井(9104)
株価(終値):9,340
日付:2月28日
売買代金(千円):114,536,200
【2】三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)
株価(終値):713
日付:2月28日
売買代金(千円):65,676,710
【3】日本電信電話(9432)
株価(終値):3,293
日付:2月28日
売買代金(千円):51,352,060
【4】三井物産(8031)
株価(終値):2,866
日付:2月28日
売買代金(千円):47,344,850
【5】日本たばこ産業(2914)
株価(終値):2,120
日付:2月28日
売買代金(千円):45,550,140
*ランキングは売買代金の
総額に基づく順位を示したものです。
*この銘柄一覧は、
特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
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