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(矢口新)人々の生産能力を信頼しない税制

こんばんは
矢口新です。
私の

「学術論文」

が、
「リスクガバナンスとコントロール:金融市場と金融機関
(Risk Governance and Control: Financial Markets & Institutions)」
に掲載されました。
実は昨年末に拙著の英文版をSNSで告知したところ、
2月初めに上記の経済誌から原稿の依頼がありました。

拙著:What has made Japan’s economy stagnant for more than 30 years?/ How to protect the pension and medical care systems (Arata Yaguchi: Paperback)

私は学者でもないし、
まともに経済学を学んだこともないので断ったのですが…

テーマと紹介文が面白いから、まずは原稿を送ってくれと言われました。

1月にはインド、カルカッタの
「School of Commerce and Management _ BIHER」からウェブ講演の依頼があり、
オンラインで100人余りの学生を相手に話して、
テーマへの手ごたえを感じていたこともあり、
とりあえずはと原稿を送ったのです。

ところが、「学術論文」にするには、
こうした体裁が必要です。

これを宣誓しろ、ここを修正しろと、
2カ月以上かけてダメ出しされ続けました。

この年齢で、学術論文を書いても何かの役に立つとは思えないのですが、
私の書いているものの「質の向上」にも繋がるかと思い、
言われるままに修正を重ねました。

最後まで相手の要望に応えられなかったのが、
論文の「理論的な背景」と「参考文献(書籍)」の提示です。

そこで、
論文の結論の末尾に
以下の文章を付け加えることで受け入れて貰いました。

 

This paper has limitations. There is no theoretical background of this research. The author of this paper, as a former dealer for financial institutions and a money manager, uses directly the primary information sources that can be found on websites. Therefore, it is unknown whether the topic of this paper has been investigated previously in Japan or in other countries.

この論文には限界がある。この研究には理論的背景がないのだ。本稿の著者は、元金融機関のディーラーであり、マネーマネージャーであるため、ウェブサイト上で確認できる一次情報源を直接利用している。したがって、本稿のテーマが日本や諸外国で先行研究されているかどうかは不明なのだ。

 

Besides, the problems of collecting figures and data on the websites are that those links to the websites often change without notice and that those data are frequently revised.

また、ウェブサイト上の数値やデータを収集する際の問題点は、それらのリンク先が予告なく変更されたり、データが頻繁に修正されるということだ。

 

However, these limitations and problems will not reduce the importance of this study. On the contrary, this study may open up a new aspect of the research of the relationship between the tax system and economy for those who have an academic background.

しかし、これらの限界や問題点は、本研究の重要性を低下させるものではない。それどころか、本研究は学問の背景を持つ人たちに、税制と経済の関係の研究において新たな局面を開く可能性がある。

 

私は、自動車の運転席と後部座席に例えて、

「ディーラーやマネーマネージャーは、市場の最前線で経済を見ているため、
エコノミストたちより世界が良く見える位置にいる。私に見えているものをエコノミストに伝えるから、

エコノミストがそれを元に背景となる理論を打ち立てればいい」

とも書きましたが、
さすがにそれは割愛されました。

以下に、掲載された概要をご紹介します。

本文は当のウェブサイトから無料でダウンロードできます。
概要だけには、日本語訳を付けておきます。

A TAX SYSTEM THAT DOES NOT TRUST THE PRODUCTIVE POWER OF THE PEOPLE
https://virtusinterpress.org/A-tax-system-that-does-not-trust-the-productive-power-of-the-people.html

タイトル:「人々の生産能力を信頼しない税制」

Arata Yaguchi

矢口新

Abstract

概要

The global economy grew by 2.8 times from 1997 to 2019. Meanwhile, Japan’s economy grew by only 15%. Even heavily sanctioned countries such as North Korea, Venezuela, and Iran, grew by 60%, 75%, and 5.6 times respectively during the same period of time. Even war-torn countries such as Somalia, Libya, and Afghanistan, grew by 26%, 80%, and 6.5 times respectively (United Nations Statistics Division1).

1997年から2019年まで、世界経済は2.8倍に成長した。一方、日本の経済成長率はわずか15%だった。北朝鮮、ベネズエラ、イランといった重い制裁を受けている国々でさえ、同期間にそれぞれ60%、75%、5.6倍と成長した。ソマリア、リビア、アフガニスタンなどの戦禍にまみれた国々でも、それぞれ26%、80%、6.5倍と成長した(国連統計局1)。

Japan was the second largest economy in the world in 1997. However, Japan’s growth rate has been the worst in the world since then. What has happened to the country?

1997年の日本は世界第2位の経済大国であった。しかし、その後、日本の成長率は世界最悪となった。この国に何が起きたのだろうか?

Japan’s economy began to slow down in the fiscal year (FY) 1990 and reached negative growth from FY 1997. After that, thanks to unprecedented monetary easing and enormous-scale fiscal spending, Japan’s nominal gross domestic product (GDP) reached a record high in FY 2016 for the first time in 19 years; however, more easing and more fiscal spending can no longer be expected.

日本経済は1990年度から減速し始め、1997年度からマイナス成長になった。その後、未曾有の金融緩和と膨大な財政支出により、2016年度に日本の名目国内総生産(GDP)は19年ぶりに過去最高を記録したが、もはやこれ以上の緩和と財政支出は期待できない。

Because Japan’s tax revenue effectively peaked in FY 1990 and that caused a huge budget deficit and accumulated public debt. And this made the social security system in jeopardy.

なぜなら、日本の税収は1990年度に事実上のピークを迎え、それが巨額の財政赤字と公的債務の累積を招いたからだ。そして、そのために社会保障制度が危うくなった。

Japan’s strength until the 1980s was neither a coincidence nor a miracle; it was the tax system that supported the economy and public finances well. At that time, there was no consumption tax that levies on sales no matter how the economic condition is, while the income tax which is the fruit of production was highly progressive. The corporate tax rate was also high.

1980年代までの日本の強さは、偶然でも奇跡でもなく、経済と財政をうまく支える税制だったのだ。当時は、景気の良し悪しに関係なく売上に課税する消費税はなく、一方で、生産の成果である所得税は高い累進性を持っていた。法人税も高率であった。

This allowed people to compete in a more equal environment, which resulted in higher productivity and consequently higher tax revenue. The tax reform of FY 1989 destroyed Japan’s economy. In the face of higher inflation coupled with a weaker yen, another tax reform that goes back to the pre 1989 system is urgently needed.

この税制で、人々はより平等な環境で競争できるようになり、生産性が向上し、結果として税収も増加した。1989年度の税制改正は日本経済を破壊した。インフレ率の上昇と円安に直面している今、1989年以前の制度に戻る再度の税制改革が急務なのだ。

The tax system is the foundation of a country. This paper may give a clue to how to solve your own country’s problems as well.

税制は国の根幹をなすものだ。本稿は、あなた自身の国の問題を解決するヒントも与えてくれるかもしれない。

A TAX SYSTEM THAT DOES NOT TRUST THE PRODUCTIVE POWER OF THE PEOPLE
(↓ go for free downloading the full article)
https://virtusinterpress.org/A-tax-system-that-does-not-trust-the-productive-power-of-the-people.html

<講師プロフィール>

矢口新(やぐち あらた)

1954年生まれ。
金融業界の第一線で30年以上にわたり活躍し続け、
プロディーラーにも師と仰がれる天才ディーラー。

東京・ニューヨーク、ロンドンと世界3大金融市場で活躍し、
さらには為替、債券、株のすべてに関わるという
非常に稀有なキャリアを持つ。

相場を動かすプロの裏の裏まで知り尽くしており、
投資を真剣に学びたいという意欲ある方々との交流にも熱心。

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