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日本は過剰債務の「深刻実態」を乗り切れるのか?

日本のGDPギャップはコロナ前の2019年10-12月期から2022年4-6月期まで11四半期連続マイナスで、需要不足を表していた。

とはいえ、コロナ対策での行動規制もほとんどが解除され、ようやくいくつかの指標が好転を見せてきた。

例えば、7-9月期の日銀短観2022年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比16.4%増だった。前期調査の14.1%増から上方修正し、1983年の調査開始以来、9月時点の水準として過去最高となった。大企業全産業設備投資は21.5%増と、18.6%増から加速した。中小企業全産業設備投資は1.3%増と、1.4%減から改善した。

設備投資製造業全規模で21.2%増と、20.5%増から上方修正、1988年以来の高水準となった。非製造業全規模は13.6%増と10.5%増から上方修正、9月時点の過去最高を更新した。

また、8月の鉱工業生産は前月比2.7%増、前年比5.1%増だった。経産省は基調判断を「生産は一進一退」から「生産は緩やかな持ち直しの動き」に引き上げた。8月の小売業販売額は前年比4.1%増の12兆5210億円だった。7月の2.4%増から加速した。

しかし、過去の例では不況から好況への転換点に、事業の活発化に運転資金が追いつかず「黒字倒産」が増えている。停滞期に膨らんだ債務がネックになり、新たな資金を確保できないからだ。

現在では、ゼロゼロ融資で多くの企業が過剰債務を背負っている。以下にダイヤモンドからの記事を部分引用する。

(引用ここから、URLまで)

コロナ関連対策の目玉だったゼロゼロ融資は、コロナ禍で苦しむ企業の資金繰り緩和に大きな効果を見せた。総額56兆円、申請件数200万件以上に及ぶ企業支援は、民間金融機関の取り扱いが2021年3月末で終了。政府系金融機関の取り扱い分も、数回の延長を経てこの9月末で終了した。

ゼロゼロ融資は、新型コロナで売り上げが減少したという事実さえあれば、間口が大きく開かれた。融資後、最長3年間は都道府県が利子補給し(実質無利子)、信用保証協会の全額保証付きで担保を差し出す必要もない(無担保)。さらに最長5年の返済据え置き期間が設定されている。借り手にとってはこの上ない有利な条件での資金調達だった。

経営体力の乏しい小・零細企業には高いハードルだった融資審査が、コロナ禍の「非常事態」で事実上、取り払われた。平時であれば融資が難しい「赤字補填」のための借入金も、コロナ禍では融資が受けることができた。

もっとも実質無利子は借り手の企業側から見た話で、貸し手側の金融機関には都道府県から利子が補給される。財源は税金だ。さらに、信用保証協会による保証が付き、仮に融資先が返済不能に陥っても全額が代位弁済され、金融機関は不良債権リスクを負わない。

メリットはそれだけではない。金利引き下げ競争が長引き、金融機関の貸出金利は0.5%未満が貸出金の36.6%、0.5%~1.0%未満が同33.7%を占める。一方で、ゼロゼロ融資の金利はおおよそ0.7%~1.2%とみられる。

不良債権リスクのない貸し出しで、しかも低金利から抜け出す金利を稼げるゼロゼロ融資は、中小企業の支援と同時に、金融機関への支援でもあった。コロナ禍で国内106銀行の2022年3月期決算の中小企業向け貸し出しは347兆円に上り、過去最高額を更新した。

ただ、一部ではゆがみも表面化している。9月30日、ゼロゼロ融資の実績づくりを目的とした不正手続きで、中日信用金庫(名古屋市)が東海財務局から業務改善命令を受けた。

とはいえ、ゼロゼロ融資は返済義務のある借入金には変わりない。今、大きな焦点になっているのは、膨らんだ借入金を企業が返済できるかという問題だ。

返済据え置き期間は最長5年だが、最多のボリュームゾーンは3年前後という。すでに返済が始まった企業は多く、年明け以降にピークを迎える。

当初はこの据え置き期間は売り上げが回復し、コロナ禍から脱却する期間と想定されていた。ところが感染拡大が長期化し、事業環境は好転の兆しを見せない。次第にゼロゼロ融資などを得ても手元資金が枯渇し、息切れや返済の見通しが立たないケースが増えてきた。

(中略)

2022年3月期は、借入金が減少した企業の比率が上昇したにもかかわらず、借入金月商倍率はほとんど改善していない。これは経営の二極化が広がり、借入返済を進めた企業は増えたものの、売り上げの回復が進まずに過剰債務が解消できていない企業も多い実態を浮き彫りにしている。

特に、コロナ禍が直撃した宿泊業やタクシー、観光バスなどの道路旅客運送業、飲食店、娯楽業などは、コロナ前より借入金月商倍率が大幅に上昇した。営業機会を失い、売り上げを失った企業はコロナ関連融資を頼りに資金繰りをつないできたが、一向に改善しない事業環境から借入債務の負担感だけが募っている。

これから返済を無理なく利益償還するためには、コロナ前を上回る収益水準が求められる。また、経済が動き出すと、仕入れや人材の確保などで資金需要は増す。コロナ禍で従来のビジネスモデルが難しければ、業態転換や新分野への展開といった事業再構築に備えた資金も必要になってくる。苦境を乗り切るために不可欠だった借入の返済と、これからの事業に必要な運転資金の確保を両立させなければならない。

歴史をたどれば、企業倒産は景気の停滞期よりも好不況に転換する端境期で増加してきた。

特に、不況から好況への転換点では、事業の活発化に運転資金が追いつかず「黒字倒産」が増える。停滞期に膨らんだ債務がネックになり、新たな資金を確保できないからだ。ゼロゼロ融資で多くの企業が過剰債務を背負った現在の状況と重なる。こうした状況において、単純なリスク回避に動くか支援に動くか、金融機関の貸し出し姿勢も大きく影響してくる。

肥大化した債務の克服にどのような出口戦略を描くか。アフターコロナを見据え、政府や金融機関は企業の“現場”に足を着けた支援策への転換が求められる。

参照:企業倒産がついに増加、過剰債務の「深刻実態」を東京商工リサーチが解説
https://diamond.jp/articles/-/311409

総額56兆円、申請件数200万件以上に及ぶ企業支援の財源は、コロナ対策の補正予算による赤字国債だ。つまり、日本は官民共に過剰債務を抱えた状況にある。

そのため、どんな円安でも日銀は大規模緩和を続けざるを得ないと言える。金利の上昇は過剰債務の政府や企業を追い詰めるだけでなく、英首相が辞任に追い込まれる原因の1つになったように、年金などの運用機関の破たんの可能性も高めるからだ。

とはいえ、10年国債の利回りが連日で0.255%をつけたように、日銀が指値オペを続けていても、目標上限の0.25%が守れなくなってきている。1997年3月から続いている日本の超低金利政策にほころびが見え始めてきたようだ。

<講師プロフィール>

矢口新(やぐち あらた)

1954年生まれ。
金融業界の第一線で30年以上にわたり活躍し続け、
プロディーラーにも師と仰がれる天才ディーラー。

東京・ニューヨーク、ロンドンと世界3大金融市場で活躍し、
さらには為替、債券、株のすべてに関わるという
非常に稀有なキャリアを持つ。

相場を動かすプロの裏の裏まで知り尽くしており、
投資を真剣に学びたいという意欲ある方々との交流にも熱心。

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