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ドル円、ここからどうなる?

先週木曜日に発表された米の経済指標の発表を受けドル円が146円台半ばから急落、週末には138円台後半にまで下落した。私は当面のドル円の底は145円前後だと見なしていたので、大外れとなった。

下図01を見れば、10月22日の大量の円買い介入にも勝る下げ幅なので、覆面介入があったか、それでなければドルロングを潰すために、大きなドル売り仕掛けがあったことを匂わせる。

10月31日に発表された日銀の円買い介入額は、9月の2兆8382億円と合わせて2か月で計9兆1881億円だった。この金額は4ー9月期の貿易赤字額に匹敵する。つまり、日本の輸入企業による外貨需要に、日本の輸出企業と日銀とで半年分の外貨を供給できたことになる。これで、輸入品購入のために、どんなレートでもドルを買わねばならない人たちが、当面はいなくなった。

さて、ドル円はここからどうなる? 結論を言えば、何も変わっていない。貿易赤字の体質が変わらない限り、日本の外貨需要は続く。金利差はこれからも拡大する見込みで、中長期的な円安トレンドは変わらない。

一方で、介入原資となる10月末の外貨準備高は1兆1946億ドルだった。9月末の1兆2381億ドルからの減少で、率としては3.5%減と、9月の4.2%減に次ぐ過去2番目の減少幅となった。ピークの2021年8月からは16.1%も減少した。これは、この規模の介入はあと6回~13回ほどしか繰り返せないことを示唆している。

こうしてみると、138円台後半までの短期的な下落は、一時的なボラティリティ低下の隙をつかれて、予想外の値幅になったに過ぎない。

参照図01:ドル円レート(2022年9月19日~10月11日)

木曜日の経済指標とは、米10月の消費者物価指数で、前月比+0.4%、前年比+7.7%だった。前年比では6月の+9.1%をピークに4カ月連続で減速した。+8%を下回ったのは2月以来となる。

下図02の米消費者物価指数内訳を見ると、2021年2月に米連銀のインフレ目標の2%を超えてからは、一貫して上げ続けてきた消費者物価指数が、2022年3月から始まった利上げを受けて、3カ月後の6月には既にピークをつけたことが分かる。また、エネルギー価格も6月から急落しているが、食品価格はまだ横ばい状態だ。

参照図02:米消費者物価指数内訳(ウォールストリート・ジャーナル:2019年1月~22年10月)

食品とエネルギー価格を除くコア指数は前月比+0.3%、前年比+6.3%だった。約40年ぶりの高水準だった9月の+6.6%から減速した。

下図03のコア指数の内訳で分かるのは、コア指数の下落は年初まで急騰していたモノの価格の急落によるもので、サービス価格はまだ勢いよく上げている。このサービス価格は、コロナ対策で経済を止めた時期を除いては、元来比較的安定しているものなので、今後の急落が見込めるとは言えない。

これら02と03、2つの図で分かるのは、消費者物価指数の下落は、エネルギーとモノの価格の急落によるもので、今後これが継続するかは不透明だと言えるのだ。このことは、米連銀のこれまでのスタンスが、この指標で急変するとは限らないことを意味している。

参照図03:米消費者物価コア指数内訳(ウォールストリート・ジャーナル:2012年1月~22年10月)

超低金利政策の維持を決めている日銀と、諸外国の中央銀行と共に利上げを継続する米連銀。このスタンスの違いは、日米金利差がますます拡大することを意味している。

下図04は過去5年間の日米金利差だ。2年国債同士、10年国債同士の利回り較差の推移だ。青色が2年国債の利回り較差、オレンジ色が10年国債の利回り較差だ。

右端の急激な較差縮小は消費者物価指数を受けた米国債の利回り低下によるものだ。日本国債の利回りは日銀のイールドカーブ・コントロールのために余り動かない。つまり、この5年間の利回り較差の縮小、拡大は、ほとんどが米国債の利回り低下、上昇によるものだ。しかし、右端程度の較差縮小はこれまでにもあったもので、米連銀のスタンスが変わらない限り、較差拡大のトレンドは変わらない。

参照図04:日米金利差(日米財務省:2017/11/10~2022/11/10)

貿易赤字の体質が変わらない限り、日本の外貨需要は続く。金利差はこれからも拡大する見込みで、中長期的な円安トレンドは変わらない。

一方で、米国債の利回り上昇とは、米国債価格の下落を意味する。

前述のように、外貨準備高が9月に4.2%減、10月に3.5%減と、合わせて7.7%減なのに、残高がピークの2021年8月から16.1%減少もしたのはそのためだ。この期間に他の円買い介入は行っていないので、8.4%分の減少は主に米国債の評価価値の目減りによるものなのだ。

これは、以前から米国債を保有している日本の運用機関にはすべて当てはまる。例えば、21年12月から3月までの3カ月間で、メガバンク3行の外債含み損が1.7兆円拡大した。

下図05は、米連銀の利上げ継続を受け、これからも続くと思われるそうした米国債投資の損失拡大を防ぐために、日本の年金・生保は今年に入って米国債を売り続けていることを示している。これはドル安円高要因となっている。

参照図05:日本の生保・年金の外債投資(ウォールストリート・ジャーナル:2005年~2022年3Q)

つまり、金利差拡大がドル円レートに与える影響は、貿易赤字などに比べてより複雑なのだ。

とはいえ、上図04にも挿入したように、金利差拡大が中期的な円安要因であることは間違いがない。特に、日本の国債は4年債までがマイナス利回りで、30年債でも1.5%なので、消費者物価指数+3.0%超時代の運用ができないからだ。

下図06は、先週木曜日時点の日米の国債利回り曲線だ。太い線が米国債、細い方が日本国債のもの。2つの図を、2%、1% 0%の横線に合わせ、1年以降30年までを縦線に合わせて合成した。米国債は3カ月Tビル以降が逆イールド、日本国債は順イールドとなっている。

参照図06:日米国債利回り曲線(日米財務省:2022/11/10)

これで分かるのは、米国債は1年Tビルの利回りが1番高く、4.59%もあることだ。このところ米投資家がキャッシュポジションを大きく増やしているのだが、これはリスク回避ばかりだとは言えない。1年以下はキャッシュ相当と見なされるので、最も高い利回りを求めれば、キャッシュに行き着くことになる。

また、日米ともに1年以下の国債にはクーポン(利札)がなく、ディスカウントで発行されて、満額で償還されることで利回りとなる。上記の例では、米国の1年Tビルは95.41で買い、1年後に100で返ってくる。日本の1年Tビルは100.105で買い、やはり100で返ってくるのだ。米国債では儲けることができる一方で、日本国債では損が出る。これが日米金利差の拡大は、ドル高円安要因となる理由だ。

ドル円はここからどうなる? 繰り返しておくが、これまでと何も変わらない。貿易赤字の体質が変わらない限り、日本の外貨需要は続く。金利差はこれからも拡大する見込みで、中長期的な円安トレンドは変わらない。介入を受けて重くなっていた短期筋のドルロングは、概ねはけたのではないか? 私見では、間もなく円安に向かう可能性が高いと見ている。

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