BLOG

投資に役立つ
伝えたいことが毎日ある。

  1. HOME
  2. ブログ
  3. ブログ
  4. 防衛費の「莫大な予算」は効果的か?

防衛費の「莫大な予算」は効果的か?

日本政府は12月16日、
岸田文雄首相が大幅に増やすとしてきた防衛費について、
2023年度から5年間の総額を43兆円程度とすることを閣議決定した。

単純に均等割すると1年に8.6兆円が防衛費となる。
社会保障費を除けば日本政府最大となる「莫大な予算」だ。

2022年度の一般会計予算では、
一般会計歳出総額107兆5964億円のうち、
22.6%が国債費(借金の利払いなど)、14.8%が地方交付税交付金などに充てられている。

残る62.6%の67兆3746億円が一般歳出だ。

これには社会保障が36兆2735億円、
公共事業6兆0575億円、文教及び科学振興5兆3901億円、防衛5兆3687億円、
その他9兆2847億円(食料安定供給1兆2701億円、エネルギー対策8756億円、
経済協力5105億円、中小企業対策1713億円、恩給1221億円、
その他の事項経費5兆8350億円、予備費5000億円)、
そして、新型コロナ対策予備費が5兆円。

ここで防衛費が8.6兆円に増額するということは、
歳入が増えない限り、他の予算から3兆円余りを削ることになる。

社会保障、公共事業、文教及び科学振興、食料安定供給、
エネルギー対策、経済協力、中小企業対策、恩給、その他の事項経費、予備費などからだ

新型コロナ対策予備費は2次、3次と大型の補正予算を組んだ使い残しの部分なので、
恒久的な防衛費の増額には充てられない。

参照:日本の財政関係資料(出所:財務省)
https://www.mof.go.jp/policy/budget/fiscal_condition/related_data/202204_00.pdf

5兆8350億円と巨額なその他の事項経費の内訳はここでは分からないが、国民の安全保障に深くかかわる食料安定供給1兆2701億円やエネルギー対策8756億円を全額削っても2兆1457億円と、防衛費増額には1兆円余り不足する。

一方、社会保障費は既に不足しているために、ここ10数年間支給減額などサービスの低下と、保険料の値上げを同時に進めている。
参照:日本が幸せになれるシステム・65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新、ペーパーバック版)
https://www.amazon.co.jp/dp/B09NRWJLY7/
(Kindle Edition)
https://www.amazon.co.jp/dp/B092W1M8MZ/

また、公共事業費は不足しているためか、恣意的な分配方法に問題があるためか、各地でインフラの劣化が顕在化しつつある。

文教及び科学振興費は不足しているためか、日本の競争力低下が著しい。

一方で、国債費は残高が1000兆円を超えているために、マイナス金利政策での利払い費の抑制が限界を迎え、2021年度を転換点に増加に転じた。このことは、利上げをしなくても今後は国債費が増え続けることを意味しており、日銀が利上げをためらう一因ともなっている。

つまり、今後は国債費が他の予算を食い続けることが明白で、歳出面では(その他の事項経費は知らぬが)防衛費増額の余裕は全くない。明治時代の日本は「富国強兵」を進めたが、岸田現政権は「貧国強兵」が成り立つとでも思っているのだろうか?

では、財源の方を見てみよう。2022年度の歳入総額107兆5964億円のうち、公債金が34.3%なので、日本の政府予算の3分の1が借金で賄われていることが分かる。これが積み上がった結果が上記の国債費の残高1000兆円超というわけだ。

残る租税及び印紙収入が65兆2350億円で、これがいわゆる一般税収だ。この数値は過去最大のもので、21年度は63.9兆円、20年度は60.8兆円、それ以前はずっと低迷(2009年度などは38.7兆円)し、60兆円を超えたのは1990年度の60.1兆円にまで遡る必要がある。

これらのデータも上記の「日本の財政関係資料」から得られる。私はそうした税収低迷と経済停滞の主因を1989年度の税制改革に見ているので、興味のある方々は上記の「日本が幸せになれるシステム」をご覧いただきたい。

ちなみに、名目GDPで見た日本経済のピークは1997年度の542.5兆円で、計算方法の見直しなどで30兆円を上乗せし、2016年度に更新するまでは空前絶後のものだった。現時点での過去最大は2019年度の556.8兆円だが、2022年度は1997年度を再び下回る見通しだ。また、GDPギャップは消費税率を10%とした2019年10月-12月期以降12四半期連続のマイナス(需要不足)となっている。

このように経済が停滞している中での、ここ数年の税収増は異次元緩和による未曽有の資金供給と、コロナ対策で行った超大型の補正予算といった刺激策の恩恵が大きい。しかし、それは中央銀行や政府が前代未聞(異次元)のリスクを取った再現不可能と言えるものだ。この大きな付けは将来の日本人が必ず支払させられることになる。

そこで、現状の税制下での日本政府の税収の実力を1997年度から2022年度までの平均税収だとすれば、それはたかだか年50.9兆円でしかない。これで将来にわたって年間防衛費の8.6兆円を賄うとしているのだ。つまり、現実的には増税か、国債発行の増額しか方法はない。そして、このどちらもが日本人が必ず支払させられる付けを大きくするものだ。増税なら即座に、国債発行なら将来にわたってだ。

ここで、2023年度の税収が仮に過去最大の66兆円だとすると、防衛費の8.6兆円は税収の13%にも相当する。22年度の税収内訳は大きい順に、消費税21兆5730億円、所得税20兆3820億円、法人税13兆3360億円だった。

消費税導入の翌年が税収の最初のピークで、その年の消費税収は4.6兆円、所得税収は26兆円、法人税収は18.4兆円だった。その後は総税収が減少したように、税率を上げても税収が減れば、防衛費の増額は賄えない。消費増税は景気後退に繋がるので、むしろ総税収を減らしてしまうのだ。

税収を増やすには景気浮揚が期待できる消費減税もしくは撤廃で、景気浮揚→収益拡大→所得拡大のもと、大きな所得に大きく課税する所得税や法人税の累進性を高めるしかない。これは国民の生産力を信じることを意味するが、それでしか、「富国強兵」は成り立たない。この辺りは、上記の「日本が幸せになれるシステム」に詳しい。

とはいえ、私は岸田政権の防衛費の増額が日本の安全保障に役立つとは見ていない。何故なら、日本はエネルギーのほぼ全て、食料の大半を海外に依存しているからだ。

世の中の動きを額面通りに受け取ってはならない。メディアの報道には限界があることを教えてくれる実話を元にした映画がある。

こうしたことを踏まえていれば、ウクライナ戦争や日本の防衛費増額などにも、新たな視点が得られるかも知れない。アマゾン・プライムの紹介文は以下の通りだ。

「フセイン大統領時代のイラク。国民は経済制裁の影響で生活が困窮。国連は『石油を販売したお金でイラク国民に食料を買い配る』という夢の人道支援プログラムを開始。しかし現実は、様々な国籍の人間がその計画に群がり食い尽くす悪夢の始まりだった。莫大な予算ゆえに欲望が渦巻き、汚職、裏切り、殺人が入り乱れ、銀行や実業家、政治家も次々に取り込まれていく。イラク戦争のその陰で実際に行われていた知られざる衝撃の事実!」

参照:バグダッド・スキャンダル(字幕版) 2016年制作
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07SHMYKCX/ref=atv_hm_hom_1_c_E6DOit_16_1

上記の紹介文には、イラク戦争のその陰でとあるが、ここでは、米国がどうしてイラク戦争を始めたのかの理由まで描かれている。そもそもの経済制裁そのものが、そこに至る布石だと見なせなくもない。

つまり、現状の「力の趨勢」に従わない国を制裁することで、被制裁国の弱体化と政情不安とを同時に高める。そして、時期が熟せば「力の趨勢」が主導するプログラムや侵攻で、被制裁国の富と、プログラムや侵攻に伴う利権を食い尽くそうとするのだ。しかし、その利権の恩恵に預かっているのは1部の者に過ぎず、「力の趨勢」を主導する制裁国の人々もまたプログラムや侵攻で命や資産を搾取されている。

この映画を見て、世界を理解するために、私がこれまで断片的につなぎ合わせてきたメディアの報道、ウィキリークスやスノーデン氏の暴露などが、1本の線に繋がった。そして、このことが米トランプ元大統領の出現や、欧州での極右の台頭、中南米での左翼政権の躍進など、「力の趨勢」に従う現政権への不満に繋がっているのではないかと疑っている。

ここだけではない。同様のことが、アフガニスタンやアフリカ、その他の地域でも行われているのだ。

バグダッド・スキャンダルは、1人の人間の暴露、告発から始まっている。それがメディアを動かし、組織を変えた。映画でより多くの人々が知ることにもなった。

1人が世界を変えた例では、ドイツへの徹底抗戦を主導した英チャーチル元首相がいる。これもアマゾン・プライムの紹介文を引用する。

「1940年、第二次世界大戦初期。ナチス・ドイツの勢力が拡大し、フランスは陥落間近、イギリスにも侵略の脅威が迫っていた。連合軍がダンケルクの海岸で窮地に追い込まれるなか、ヨーロッパの運命は、新たに就任したばかりの英国首相ウィンストン・チャーチルの手に委ねられた。度重なる失策から“政界一の嫌われ者”であったチャーチルは、政敵たちに追いつめられながら、ヨーロッパのみならず世界にとって究極の選択を迫られる。ヒトラーに屈するのか、あるいは闘うのか・・・。」

参照:ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 (字幕版) 2017年
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07FMKBFC7/ref=atv_hm_hom_1_c_E6DOit_16_26

とはいえ、主導する1人では何もできない。多くの人々の賛同、協力が不可欠だ。チャーチルの呼び掛けに応え、英国の対岸、フランスのダンケルクから兵士たちを実際に英国に運んだのは民間人たちだった。

「ダンケルクの海岸に追い詰められた何十万人もの英仏連合軍に敵の軍勢が迫りつつある状況の下、物語は陸・海・空を舞台に展開される。海峡上空ではイギリス空軍(RAF)のスピットファイアが敵機を迎え撃ち、地上の無防備な兵士たちを守るために空中戦を繰り広げる。そして海上では軍人ばかりか民間人も小型船に乗り込み、一人でも多くの味方の命を救うため、時間との戦いの中で危険をも顧みず、決死の救出作戦を決行する。」

参照:ダンケルク(字幕版) 2017年
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0779CJF95/ref=atv_hm_hom_1_c_E6DOit_16_1

民間の小型船で30人が運べるとして、1万隻以上がチャーチルの呼び掛けに賛同、協力した。1人1人が自分に出来ることを精一杯行うことで、不可能だと思われたことを可能にする奇跡を起こせたのだ。

地政学的リスクの高まり、防衛費の増額が示しているように、現在の日本人も「力の趨勢」の存在や、戦争では何が起きるのかを学んでおく必要がある。そして、有事に自分が何をできるのかを予め考えておく必要があるのだ。そのために、これらの映画を見ておくことをお勧めする。

すべての人間はいつか死ぬ。その死ぬ時に自分がこれまで何をしてきたかは、少なくとも自分だけは知っているのだから。「ダンケルク」は有事の際の自分の生き方の参考にもなるだろう。

 

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


主要指標

最近の記事