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今年もボラティリティは高い

2022年は投資家苦難の年だった。

10億ドル以上をアクティブに運用する米国の債券ファンド198本の
2022年12月16日時点の平均成績は-11.5%だった。

プラスは2本だけで、ティー・ロウのファンドが+3.4%、
JPモルガンのファンドが+0.3%だった。

世界の国債利回りが急騰(価格は急落)し、
28年ぶりの上げ幅となったことに加え、
国債に上乗せされる社債などの信用スプレッドも拡大、更に損失が拡大した。

そして、年明けの1月5日には、
一時は残高が18.4兆ドルもあったマイナス利回り債券が消滅、
人類史上初の壮大な官製バブルが終了した。

米株式も軒並み2桁以上のマイナスで、ナスダックなどは3割以上も下落した。

債券と株式の同時安は28年ぶりだった。

勝ち組は+60%以上のリターンを上げたエネルギー関連セクターだけで、
S&P500の他のセクターで+5%のリターンを上げたところはない。
日経平均は-9.36%、TOPIXは-5.05%だった。

ヘッジファンド総合指数1-11月の成績は-4.11%だったが、相場の下落に賭けた一部のベアファンドは+150%超の成績を上げた。

世界の株式時価総額は2022年初めのピーク70兆ドル超から年末には56兆ドルにまで減少した。また、JPモルガン世界の総合PMIは8月以降12月まで50を下回り、景気後退を示している。

現時点で、米国23のプライマリーディーラーのエコノミストたちの3分の2以上が、米国は2023年にリセッション入りするとし、他の2社は2024年のリセッションを予測している。

その理由は、インフレが続いているために2023年中の利下げがなさそうなこと。個人がパンデミック貯蓄を使い果たしつつあること。住宅市場が低迷していること。銀行が融資基準を厳しくしていることなどだ。一方、IMFは世界の3分の1が2023年にリセッション入りすると予測した。

また、世界第2位の経済、中国の住宅市場の悪化が深刻だ。新築住宅価格は2021年9月から前月比での下落が続いている。住宅販売の急減も続いている。また、コロナ禍も深刻で、ゼロコロナ政策放棄の少なくとも1週間前から感染者数の急拡大が見られていたようだ。

加えて、欧州はロシアとの対立で安価で安定したエネルギー供給が断ち切られために、インフレと景気後退の同時進行(スタグフレーション)に見舞われている。このロシアとの対立は現状では改善する目途が立たず、最良のシナリオでも世界の分断化が進む見通しとなっている。

一方で、世界の総合PMIがリセッションを示していた2008年~2009年当時や、2020年前半にはほどなくして株価が急回復したことから、2023年も株価の急回復を予測する向きがある。

しかし、残念ながらリセッションそのものが株価の大底となる合理的な根拠はない。2008年~2009年や2020年前半は、政府や中央銀行の政策が株価を押し上げることになったのだ。具体的には大量の資金供給だ。また、多くの中央銀行がマイナス金利政策まで導入した。

それらの政策は未曽有や前代未聞、異次元などと称されたもので、当時の政策責任者たちが、これまで人類が延々と積み上げてきた叡智を事実上否定したものだった。そして、それはそうした先人たちの警告通りにハイパーインフレを生み、政府や中央銀行のバランスシートを大幅に悪化させた。

現状の世界の金融政策は、GDPをはるかに超えるような資金供給やマイナス金利政策などといった異常な政策が、大きな弊害を生んだための「正常化」だ。弊害が起きたことでようやく学習し、異常だと認めたうえでの「正常化」なので、繰り返される可能性は低い。つまり、目先の弊害であるインフレを鎮静化させるために、過剰な資金を回収し、利上げを続ける可能性が高いのだ。

また、傷んだバランスシートでは再度の刺激策を採る余裕に乏しく、反対に増税すら考えられることになる。このことは、主要経済がリセッションに至る可能性は高く、株価の回復は期待薄だということになる。

一方で、高金利でインフレが鎮静化に向かえば、債券が買われることになる。とはいえ、マイナス利回り債券消滅が象徴する官製バブルの終了は2023年に入ってからだ。バブルの崩壊はまだ始まったばかりで、買えるところまで下落しているとは言えない。マイナス利回りがそもそもなかった米債はともかく、日本の債券が買えるようになるのは先の事だと見ていていい。

資金回収が始まったとはいえ、まだまだ市場には大量の資金が滞留している。売って手にした資金の使い道がなければ、また何かが買われることになる。こうしたことで、今年も確実に言えるのはボラティリティが高くなるだろうということだ。

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