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パレスチナ問題の難しさ

こんばんは、矢口新です。

安部公房の短編小説「闖入者」という作品をご存知だろうか? 

私は海外を含めて何度も引っ越したので、
ほとんどの蔵書は誰かに差し上げるか、捨てるかした。

安部公房は私の最も好きな小説家の1人なのだが、
手元には一冊も残っていない。

「闖入者」は背筋がぞっとするような恐い話だ。

アパートに住む主人公の部屋に、
ある日多人数の家族が突然訪ねてきて、
そのまま住み着いてしまう。

主人公は押入れの中に追いやられる。

その家族は主人公の部屋を乗っ取っただけではない。

家族の主は給与を横取りし、息子は主人公の恋人を奪い、
娘は警察官を色仕掛けで仲間にしてしまう。

そして、主人公は世間から孤立する。

人間の尊厳も含め、何もかもを奪われた主人公は、
最後に押入れの中で自殺する。

そんな話が現実にあるのだろうか? 
似たような話ならあるかもしれない。パレスチナ問題だ。

仮に、あなたが生まれた時から住んでいる家に、
ある日見知らぬ人たちが「ここは私の先祖が暮らしていた土地」だと押しかけてきて、
住み着いてしまったとしたらどうするだろう。

そして、暴力的にあなたの居場所を奪ったとしたら。

そんなことが自分の居場所が奪われる理由となるのなら、
地球上の誰も、安心して住める場所などなくなってしまう。

あまりのことに隣近所の人たちは助けてくれたが、
町の有力者や町内会が調停するといって「闖入者」の肩を持ち、
あなたを押入れに閉じ込めたとしたら、どうだろう。

実のところそれがパレスチナに限らず世界の現実の姿で、
自分たちが今、住んでいるところはそんな形で調停者たちの
「力」によって守られているだけだとも言えるのだ。

そして、それはより大きな「力」が働けば、
奪われてしまうことも示唆している。

イスラエルは、「パレスチナは大昔に自分たちの先祖も住んでいた土地」だという理屈で、それよりも大昔からずっと今まで暮らし続けてきたパレスチナ人たちを、ガザやウエストバンクという名の「押入れ」に閉じ込めている。そして今、事実上自殺を強いている。

そして、それを正当化する工作が、イスラエル建国時と同じように行われている。

参照:「重大な過ちだ」、有力な寄付者たちがハマスの件で大学に圧力。
Warning of ‘Grave’ Errors, Powerful Donors Push Universities on Hamas

参照:イスラエルの企業擁護者たちの声が高まる。
Israel’s Corporate Defenders Grow Louder

参照:どうして、ウクライナ戦争時に即座に発言した米連銀高官らはイスラエルとハマスには触れないのか。
Why Fed officials aren’t addressing the Israel-Hamas war the way they did with Ukraine
https://edition.cnn.com/2023/10/17/economy/israel-hamas-war-federal-reserve/index.html

とはいえ、パレスチナ問題は難しい。今度はハマスが、生まれた時から住んでいるイスラエル人たちに、「ここは私たちが先祖から暮らしていた土地」だから出て行けと言っている。

そして、調停者を名乗る有力者たちが双方に武器を提供することで、平和的な解決を益々難しくしている。

11月半ばには米政府が延期している債務上限問題の期限が来るので、またまた政府閉鎖危機に追い込まれることになる。今回これを挙国一致で解決するには、戦時予算、戦時特例しかないかも知れない。

米財務省のホームページには次のように書かれている。「債務上限は新たな支出の誓約を認めるものではない。単に、両党の議会と大統領が過去に行った既存の法的義務を政府が賄うことを認めているに過ぎない。」

一方で、バイデン政権は10月20日に、総額1059億ドルの緊急予算法案の策定を議会に求めた。うち国内防衛産業に使う予算が500億ドル以上にのぼると説明した。日本の防衛予算1年分に匹敵し、ウクライナやイスラエルに送る武器を大幅に増産する。

バイデン大統領は19日の国民向けテレビ演説で「第2次大戦と同じように国家を愛する米労働者が民主主義の武器庫(Arsenal of Democracy)をつくり、自由という理念に貢献する」と言及した。「民主主義の武器庫」は、ルーズベルト元大統領が1940年に国家安保への脅威についてラジオ演説をしたときに使った言葉。この演説を受けて、米国で武器の大増産が進んだ。

関連:米国製兵器の需要急増で、バイデン政権、販売促進へ。
As Foreign Demand For U.S. Weapons Surges, Biden Adm. Moves To Expedite Sales
https://www.forbes.com/sites/lorenthompson/2023/10/06/as-foreign-demand-for-us-weapons-surges-biden-adm-moves-to-expedite-sales/

財務省のホームページにはこうも明記している。「議会は、債務上限引き上げの要請があれば、常に行動を起こしてきた。1960年以来、議会は78回にわたって債務上限を恒久的に引き上げたり、一時的に延長したり、債務上限の定義を見直したりしてきた。両党の議会指導者たちは、この必要性を認識してきたのだ。」

現状では上記の緊急予算法案は通せない。膠着している債務上限問題を、政権が責任を問われずに挙国一致で拡大するために、バイデン政権は戦時特例、戦時予算を組むことを考えている可能性がある。

調停者たちのような力と資金力が強い者の後ろ盾を得ると、少数の過激な者たちでも実権を握ることができる。多くのイスラエル人とパレスチナ人たちが平和的な共存を求めていても、調停者たちの都合がそれを許さないのかも知れない。

  • コメント ( 1 )

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  1. AM

    パレスチナ地方に住むアラブ人にはれっきとした国があります。
    それはヨルダンです。 まずそれを忘れないでください。
    もうひとつ、「オスロ合意」という協定がありましたね?
    ハマスはその協定が締結された当事者ではなく、単に乱入して
    いるテロリストなのです。 これもお忘れなく。

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