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大谷翔平の大型契約と、その実態

こんばんは、矢口新です。

大谷翔平はロサンゼルス・ドジャースに移籍するにあたり
7億ドルの10年契約を結んだ。

野球選手としては史上最高額の契約だった。

とはいえ、契約期間の10年間は年間200万ドルしか受け取らず、
契約が満了する2034年から、年間6800万ドルを10年間にわたって受け取ることになる。

これは大谷翔平側の提案だったようで、
メジャーリーグが定めたルールの範囲内だった。

通常、将来の金銭価値は現在のものよりも低くなる。

これは金利が正常な状態では常にプラスであるためで、
例えば現在の7000万ドルに5%の金利がつくとすれば、
1年後には7350万ドルになるためだ。

つまり、大谷翔平が最初に7000万ドル受け取れば、
資金をMMFなどで運用する金利だけで当初の契約年棒を超えることになる。

仮に大谷翔平が契約期間の10年間、
7億ドルを10分割で均等に受け取ったとすれば、
今受け取る7000万ドルは10年後には、税金を度外視して1万1402万ドルになる。

また、5%の金利が続くと仮定すれば、
1年後に受け取る7000万ドルはその9年後には1万0859万ドルに、
2年後に受け取る7000万ドルはその8年後には1万0342万ドルに、
3年後に受け取る7000万ドルはその7年後には9850万ドルに、
4年後に受け取る7000万ドルはその6年後には9381万ドルに、
5年後に受け取る7000万ドルはその5年後には8934万ドルに、
6年後に受け取る7000万ドルはその4年後には8509万ドルに、
7年後に受け取る7000万ドルはその3年後には8103万ドルに、
8年後に受け取る7000万ドルはその2年後には7718万ドルに、
9年後に受け取る7000万ドルはその1年後には7350万ドルになることを意味している。

つまり、総額は7億ドルではなく8億1046億ドルとなる。

つまり、金利がプラスならば、
現時点でより多く受け取っていた方が、総額が上がるのだ。

一方で、メジャーリーグには贅沢税というものがあり、
チームの年棒総額が一定金額を超えるとペナルティーが課せられることになっている。

その総額は2024年が2億3700万ドル、2025年が2億4100万ドル、2026年が2億4400万ドルなどとなっている。チームの年棒総額がそれを超えると1年目なら超過分の20%、2年連続なら超過分の30%、3年以上連続なら超過分の50%ものペナルティーがかかる。

つまり、大谷翔平だけに高額年棒を支払ってしまうと、他の選手たちの合計年棒が減るか、ペナルティーを支払うかになってしまうのだ。

ここで、贅沢税の対象年俸総額を計算する上で参照されるのは、その年実際に支払った年俸ではなく年平均年俸の総額だ。

こうしたルールでは、10年7億ドルという契約は年平均年俸7000万ドルとなり、2024年のチーム総額2億3700万ドルに1億6700万ドルしか残らない。1人でチーム全体の29.5%も占めてしまう。一方で、大谷翔平が結んだ契約は現在価値が割り引かれ年平均では4600万ドル程度となるようだ。

このことは、大谷翔平の事実上の契約金額は10年で総額4億6000万ドルであることを意味している。1人で全体に占める割合は19.4%に下がり、2024年のチーム総額までには1億9100万ドルが残る。これは他の優秀な選手に使える資金を大きく増やせることを意味し、優勝が最大の望みだとする大谷翔平の利害と一致する。

つまり、大谷翔平の契約金は10年名目7億ドルだが、実質4.6億ドルなのだ。名目が強調されているのは、記録的な数字としてのニュースバリューを考慮してのことだろう。

では、大谷翔平の契約が抱える最大のリスクとは何だろうか? このような20年にもわたる支払い契約の最大のリスクは信用リスクだが、これはドジャースが支払い原資を信託銀行に預託していればクリアーできる。また、メジャーリーグが有望なビジネスであり続ける限り、仮に現状のドジャースの運営会社が破綻しても、次の運営会社が契約の履行を続けることができる。

2つ目のリスクはインフレだ。米国のハンバーガーやラーメンの高価格が話題となっているが、過去の10ドルが今ではその価値を失っているように、今の10ドルが10年後、20年後に今の価値を維持している保証はない。

3つ目は為替リスクだ。仮に大谷翔平が現役引退後に帰国したとすれば、米ドルで受け取る契約残金には為替リスク・リターンが生じる。円高になっていれば円貨が減るが、円安になっていれば受け取りの円貨が増える。

大谷翔平が今後10年間ドジャースから受け取る年棒は200万ドルだ。これは2022年のメジャーリーガー平均年俸422万ドルの半分もない。しかし、2023年の大谷翔平の広告収入は3500万ドル以上だと言われており、ドジャース契約後のグッズの売上はこれまで最高だったリオネル・メッシを抜き、スポーツ選手の最高額を更新したという。つまり、大谷翔平の2024年の年収総額が4000万ドルを超えても全く不思議ではないのだ。また、これらは大谷翔平が現役で活躍し続ける限り、大きく減少するリスクは小さい。

ドジャース入団会見に先だって、大谷翔平に対して日本人が行ったインタビューの様子をテレビのニュースで小耳に挟んだ。興味深く感じたのは結婚や私生活に望むことで、「平穏な生活」だった。

年収に関しては「平穏」が保たれるかどうかは分からないが、少なくとも今後の20年間のリスク・リターンが相当に計算されつくしている。人生設計においても、どこまでも賢明な青年だという印象ではないか。

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