消費税では社会保障費を賄えない
From 矢口新
消費税は社会保障費の財源だとされている。
少子高齢化で労働人口が減り続けるとすれば、
企業の利益に課税する法人税や、個人の所得に課税する所得税では、
社会保障費が賄えなくなるとする「口実」だ。
実際のところは、
消費税導入直後の1990年度に総税収がピークをつけたことで、
社会保障費の財源どころか、
すべての国の支出の財源が不足することになり、財政赤字が急拡大した。
また、1997年度の消費税率5%への引上げ直後には
経済規模がピークを付け、
現状の経済規模は当時を下回っている。
加えて、消費増税はディスインフレにも繋がってきた。
つまり、政治家や官僚たちがコロナ禍直前まで主張してきた消費増税は
リスクの塊だと言える。
では、それだけのリスクを冒してでも、
消費増税をすれば、果たして社会保障制度が守られるのだろうか?
下記の参照リンク、
財務省のホームページから見られるのは2020年度の歳出内訳で、
当初予算とコロナ禍による(第2次)補正後予算とが載っている。
当初の歳出総額が102.7兆円だったのに対し、
補正後には160.3兆円と膨れ上がったことが見て取れる。
また、
2020年12月15日に閣議決定された第3次補正では175.7兆円となった。
現在、消費税収は借金を除く日本の最大の財源となっている。
その消費税収の2020年度の見込み額は21.7兆円とされていたが、
総税収の見込み額が8.4兆円下振れしているため、
如何に安定財源だとはいえどコロナ禍による大幅な消費減退で下方修正されそうだ。
一方、今後景気が良くなっても、
安定財源ゆえにそれほど大きな上振れはない。
仮に、消費税収が安定的に20数兆円あるとして、
それで社会保障の財源となるのだろうか?
上図歳出内訳によれば、
(社会保険料の補助として)国費から支払われる社会保障費は、
当初予算では35.9兆円だったが、
コロナ禍による景気悪化で40.5兆円に増えた。
このことは、景気が悪化すると社会保障費が増えることを示唆している。
一方で、消費税が景気悪化要因であることは周知の事実で、
数々のデータからみても明らかだ。
このことは、消費増税すると、
社会保障費が増えることを強く示唆している。
この時、消費税は安定財源なので、
増税で得られる税収は税率により予測がある程度可能だが、
景気悪化による社会保障費の増加幅が税収増の範囲内に収まるとは限らない。
コロナ禍による補正予算に見られるように、
仮に今後も収まらないとすれば、
消費増税を行ったために、
社会保障費が拡大するという当初の目的とは正反対の結果となる。
つまり、消費税は社会保障の財源どころか、
消費税が社会保障費を増やし、
制度を危うくする可能性があるのだ。
実際のところ、
消費税の導入と税率の引き上げが社会保障費の拡大に繋がってきた可能性は否定できない。
私自身は消費税が総税収を減らした上に、
社会保障費を増やしてきたと見なしている。
歳出内訳で分かるように、
社会保障費は歳出総額の4分の1でしかない。
それでも40兆円を超えている。
このことは、日本が頼るべき財源は20数兆円で安定した消費税などではなく、
景気が回復すれば大きく上振れする可能性がある所得税と法人税であることを強く示唆している。
日本最大の財源が「安定財源」の消費税ではお話にならないのだ。
とはいえ、絶望することはない。
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是非、ご一読頂きたい。
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