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今年の日本株は上がるか?

土曜日に「投資の学校」主催の新年会があった。


締めの講師連の一言で、私のようにデータをもとに発言している優秀な講師が、
「今年のボラティリティは低い、日本株は上がる」と言った。


その直後に話した私は(よせばいいのに?)
「日本株の買い手が見えない。ボラティリティは高い」と、
同氏を真っ向から否定する発言をした。

 

私が、ボラティリティが高いと述べた根拠は、
インフレ、景気後退懸念、不良債務懸念、金融正常化、財政規律・増税リスク、地政学的リスク、各国の社会不安の高まりなど、
株価下落の要因が満載なのに対し、市場に滞留している資金は未だに膨大で、
買い材料には反応してくると思われるからだ。


そのまま私は2次会に出ずに帰宅したので、同氏の根拠は知らない。


しかし、私は付け加えるべき点を、付け加えなかったことに気付いた。
同氏や新年会に参加してくれた人たちに付け加える代わりに、
ここに私の根拠を述べておきたい。

 

 

付け加えるべき点は、「下げれば買い手がいるが、この水準よりも上には(日本株の買い手が見えない。)」だ。そして、見方によれば、ボラティリティは高くない。

 

私の見方は基本的に長年変わっていないので、同じことを繰り返すことになるが、下げれば年金が買いだす。また、もっと下げれば日銀は買い支える以外に選択肢がないというものだ。一方で、上げれば日銀は買わないし、年金は売ってくるのだ。そして、そうした年金の動向が支配的な市場ならば、短中期は別として、日本株の中長期的なボラティリティは高くない。

 

その根拠は、日本取引所グループが公表している投資部門別売買動向にある。これは年間の数値なので、短期的な売買の数値はゼロとなってしまい、多くは長期的な売買の数値だけが残る。つまり、朝買って昼過ぎに売る人の売買はゼロ。期初に買って期末に売る人の売買はゼロ。買い戻し前提の空売りはゼロ。結果的に来年にまで持ち越すような売買だけが記録として残るのだ。

 

参照図01:投資部門別売買動向(出所:日本取引所グループ、2005年~22年)

 

ここで、左端の証券自己は無視していい。証券会社は発行市場との関係で自己勘定に残っているだけで、買い手として保有している訳ではないからだ。

 

左から2番目の信託銀と都銀等を比較して貰いたい。日本の信託銀行を合わせた2022年3月末の銀行勘定総資産は136.8兆円で、メガバンク1行にも及ばない。それなのに、株式市場での存在感は100行近い全銀行よりもはるかに大きい。これは信託勘定のためで、具体的にはGPIFに代表される年金勘定のためだ。つまり、ここでの売買は年金のものだと見ていていい。

 

信託銀の2007年までの大幅な売り越しは、02年4月1日以降からの年金代行返上売りが続いてきたことを示唆している。08年から11年までの買い越しはGPIFによる再投資によるものだ。12年と13年の売り越しは、株価上昇で株式保有比率を超えたための調整売りだ。そのため、GPIFは14年10月に運用方針を見直し、株式比率を12%から25%へとほぼ倍増させた結果、18年まで買い越しが続く。ところが株価上昇で19年に25%に届いてしまい、以降は株価が上げれば売り、下げれば買いと25%維持の調整を繰り返している。

 

次の生損保、その次の都銀等は基本的に売り越しを続けている。これは超低金利政策による運用難のためで、昔買った株式の益出し売りで、決算の数値を押し上げていることを示唆している。

 

事業法人は買い越しが続いているが、これは自社株買いが主な要因だ。個人は巨額の売り越しが止まったところ。外国人はここ8年間売り越し基調でいる。日本銀行は巨額の買い越し。他はあまり大きくない。

 

これを株価が急騰し始める直前の2012年からのチャートに、兆円単位の売買だけの売りを上部に、買いを下部に重ねてみた。

 

参照図02:投資部門別売買動向(出所:日本取引所グループ、兆円単位:2012年~22年)

 

これで見ると、直近2年間は投信、年金が売り手で、買い手は事業法人だけだったことが分かる。

 

日銀は異次元緩和のETF購入により、日本企業の最大の株主となった。世界の中央銀行で民間企業の株式を保有しているのは日銀だけだ。日本は?資本主義国となっている。

 

日銀の異次元緩和は続いている。12月20日の会合では10年国債の変動幅の上限を0.25%から0.50%に引き上げたが、黒田総裁はこれを「利上げではない」、「市場機能を改善することで金融緩和効果をより円滑に波及させる趣旨だ」と、金融緩和効果を狙ったものだと説明した。つまり、引き上げが金融緩和だと言うことだ。実際に、日銀のホームページでも長期金利の方針は「ゼロ%程度」のままだ。

 

参照図03:日本銀行ホームページより(2023年1月19日時点)

 

日銀によれば異次元緩和は続いているが、マネタリーベースの月間平均残高は2022年4月の6,830,731億円をピークに減少している。また、コロナ禍中に12兆円に倍増させたETF購入枠も維持したままだが、2年連続で11兆円以上使い残した。つまり、事実上の引き締めは始まっているのだが、金利が上昇されては困るので、緩和は継続中だと得意の「マインドに訴えかけて」いるのだ。

 

日銀は日本国債を発行残高の5割以上保有している。20数年超低金利が続いてきたために、保有平均利回りが10年債換算で0.25%程度だとも言われている。つまり、0.25%で600兆円近く保有しているために、現状では巨額の評価損を抱えている。これが雨宮副総裁によれば、「1%の金利上昇で28.6兆円、2%で52.7兆円、5%で108.1兆円」に膨らむという。つまり、0.50%での「指値オペ」は事実上のナンピン買い、1月18日会合での金融機関への「共通担保資金供給オペ」は、銀行にもナンピン買いの手伝いをお願いするというようなものなのだ。暴挙だと言っていい。

 

また、そうした資産に対する主な負債は1月18日時点では512兆円の当座預金だが、1%の金利上昇で5.1兆円の負債コストが増加する。金利上昇で債務超過になりかねないのは、一部の地銀だけではないのだ。

 

これが示唆しているのは、アベノミクスに付き合ったために、財務が大幅に悪化した日銀には、株価下落の評価損を受け入れる余地がないということだ。だからこそ12兆円の購入枠を維持したままでいる。

 

図02のチャートを参照に、これらを整理すると、2万4000円を下回る水準では年金や日銀の買いが期待できる。ここから上げれば日銀は買わず、2万8000円を超える水準では年金が売ってくる可能性があるということだ。

 

 

例年通りだと、株価を押し上げてくれる期待があるのは事業法人だけしかない。しかし、自社株買いが大きいということは、それより有効な資金の使い道が見つからないということを示唆している。日本の経済規模は1997年度に事実上のピークを付けているので、企業活動もそれなりでしかないのかもしれない。これは、税制改革など抜本的な政策変更がなければ、自社株買いが続く可能性が高いことも示唆している。しかし、それは株式市場が魅力的になったことは意味しない。つまり、現状のままでは、事業法人以外の買い手が期待薄かも知れないのだ。

 

世界はインフレ、景気後退懸念、不良債務懸念、金融正常化、財政規律・増税リスク、地政学的リスク、各国の社会不安の高まりなど、株価下落の要因が満載だ。個人の財布もインフレや住宅ローンの引き上げで、可処分所得が減ってきている。

 

そんな中で、日本株の高値を買う人がいるのなら、私こそ知りたいと思っている。

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