日本株は上がるのか?
こんばんは、矢口新です。
休日明け24日の東京株式市場で、
日経225が一時33年ぶりの高値を再び上回った。
東証プライム全上場企業の16%にあたる約260社が
2023年に入って上場来高値をつけてきている。
海の向こう米国でも、バンク・オブ・アメリカ(BofA)の
ストラテジストらがS&P500は2024年に史上最高値を更新し、
来年末までに5000に達すると予測した。
他の大手のストラテジストたちも
概ね楽観的な予想が増えているという。
BofAのストラテジストらは「FRBが成し遂げたこと」と
「市場がすでに大きな地政学的ショックを吸収している」ことを理由に、
来年の米国株について楽観的であると、ブルームバーグが11月21日に報じた。
私はその国の株価が長期的に右肩上がりになるには、
3つの条件のうち少なくとも1つは満たす必要があると見なしている。
1、人口が増えていること。
2、経済が成長していること。
3、マネーが増えていること。
これらすべてが揃っていた2021年末までの米株は史上最高値を更新してきた。
しかし、2022年から始まったFRBによる引き締めで、
「3、マネーが増えていること」だけが逆転し、大幅に下落した。
日本の場合は、総人口のピークが2008年、
経済規模のピークが事実上1997年だったので、
長期低迷を余儀なくされていた。
ここ10年ほどの上昇は日銀による膨大なマネーの供給と、
購入時ベースで37.1兆円を買ったことが主因だと見ていていい。
では、来年の日本株と米株は、
ここから上げていくのだろうか?
米株の場合、その可能性は十分にある。最大の懸念だったFRBの引き締めが終了しつつあるのが大きな要因だ。今後、利下げが始まれば大きな支援要因となる。これまでのようなマネーの大幅供給こそ考え難いが、MMFなどに滞留している膨大な資金が、金利低下とともに株式市場に流れ込むことが考えられるのだ。
その点で、BofAが指摘する「FRBが成し遂げたこと」、目立った景気後退を伴わずにインフレを概ね沈静化させたことは大きい。
一方で、先日の債務上限期限は事実上の戦時特例財政で乗り切っただけで、根本的な問題は解決していない。また、「市場がすでに大きな地政学的ショックを吸収している」のかどうかは疑問だ。ウクライナは支援を止めれば負けるし、パレスチナ戦争は大惨事以外の終わり方が見えない状態だからだ。このことは、「市場は単に楽観しているだけ」なのを示唆している。
日本株はどうか? ひとえに外国人の動向にかかっている。そこに加えるとすれば、新NISAで個人が日本株を積み上げてくれるのかどうかだ。
現状では、年金、生保、銀行といった日本の機関投資家はすべて売り手だ。年金は下げれば買いに来るが、上げれば売ってくることが明らかだ。日銀は下値を支えるが、上値はもう買わない。日本株の主な買い手は事業法人の自社株買いだけなのだ。
また、新NISAの恩恵を受ける庶民にはそれほどの資産もないところに、インフレや社会保険料の負担増などでますます余裕がなくなってきている。富裕層の数は少ないし、日本株以外の運用先の魅力が大きい。
加えて、世界で唯一マイナス金利政策を継続されてきた日本株には、金利低下という支援要因がなく、長年のデフレ特例、大型のコロナ特例と続けてきた財政にも、今後は戦時特例の余裕すらほとんど期待できない。
それでも、下げれば年金が買い、もっと下げれば日銀が買うことはほぼ確実だ。下値が堅ければ上げやすくなる。そして、外国人が日本株に興味を示している。また、一時的には投機筋が買い進める可能性がある。
もしそうなれば、日本株は最後の売り場を提供するかも知れない。何故なら、日本株は右肩上がりの3要素を満たせないからだ。マネーの供給は既に限界的で、世界と比較した日本の経済規模も、競争力も、生活水準も、このままでは落ち続けるからだ。
日本株が長期的に買えるようになるには、税制改革のような抜本的な構造改革が必要なのではないか。
矢口新
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